中村勘九郎、弟・七之助は「腹黒い役がぴったり」 77年ぶり上演『墨塗女』で全国巡業へ

歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助が30日、都内で行われた『中村勘九郎 中村七之助 春暁歌舞伎特別公演 2026』の合同取材会に出席した。

取材会に出席した中村勘九郎(右)と中村七之助【写真:ENCOUNT編集部】
取材会に出席した中村勘九郎(右)と中村七之助【写真:ENCOUNT編集部】

地方巡業の楽しみは「サウナ!」「各地のおいしいご飯と散歩」

 歌舞伎俳優の中村勘九郎と中村七之助が30日、都内で行われた『中村勘九郎 中村七之助 春暁歌舞伎特別公演 2026』の合同取材会に出席した。

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 同公演は中村屋一門が2005年から毎年行っている全国巡業。東京の歌舞伎座まで歌舞伎を見に行くことができない地方の人々のために始まった公演で、時期によって「陽春」「春暁」「新緑」「錦秋」などと銘打ち、毎年欠かさず行ってきた。20年は新型コロナウイルスの影響でやむなく中止となったが、22年には全国47都道府県すべての都道府県での開催を達成。24年に20年目を迎えた。22年目となる今回は、26年3月7日の東京・府中の森芸術劇場から3月25日の青森・リンクステーションホール青森まで全国11か所をまわる。

 今回は実在した商人・紅翫(べにかん)が登場する『艶紅曙接拙 紅翫(いろもみじつぎきのふつつか べにかん)』と、昭和23年に大阪で上演されて以来、77年ぶりの上演となる『墨塗女(すみぬりおんな) 常磐津連中』を披露。また巡業ではおなじみとなっている観客からの質問に答えるトークコーナーも設けられている。

『紅翫』は、富士山の山開きで活気あふれる江戸浅草の富士浅間神社が舞台。にぎやかに踊る町人たちが「何か面白いことはないか」と話していると、三味線をかかえた人気者の小間物屋・紅翫がやって来て、多彩な芸を繰り広げる。勘九郎は、「この紅翫さんという人は実際にいた方で、商人なのですが多趣味な方。お面を付けて、お三味線を弾きながら太鼓を叩いて町を練り歩いていたという。ちょっと今では『あ、見ちゃダメだよ』っていうような人なんですけれども(笑)」と説明。「いろいろと物売りが登場します。この物売りも今ではもちろん見かけないです。『虫売り』がいたり『蝶々売り』がいたり、『朝顔売り』とかね。『虫売りと蝶々売りは別なの?』と思ったり。いろいろな物を売ってる人たちが出てくるのも、面白さの1つなんじゃないかな」と魅力を語った。

 77年ぶりの上演となる『墨塗女(すみぬりおんな) 常磐津連中』は、能狂言の『墨塗』を題材とした滑稽話。久々に自分のもとを訪れてくれた大名・万之丞(勘九郎)を迎えた愛妾の花野(七之助)が、帰ろうとする大名を泣いて引き留める。しかし花野は実はしたたかで薄情な女。なかなか涙が出てこないので、茶碗に入れた水を頬につけてごまかそうとする。するとそれを見ていた太郎冠者(中村鶴松)がこっそりと水と墨を入れ替えてしまう。

 勘九郎は同作について、「能狂言の『墨塗』から持って来たものなんですけれども、シンプルで短くて面白いという構成がすごく良く出来ています」と語り、「特に今回は花野という女性がしたたかっていうね。女形の中でもキレイな人で腹黒いキャラクターってなかなかないと思うので、腹黒い七之助さんはぴったりかな」と笑いを誘った。

 花野を演じる七之助は「やりがいはありますよね」と語り、「この『墨塗女』は、実は花野が万之丞のことを好きとか嫌いとか、あんまり深く掘り下げてないところが漠然としていて、ただ単に面白い。深いところを考えないでやったほうがいいのかな。脚本にも何も書かれていないので、この人(万之丞)のことを本当に好きなのか、好きじゃないのかも描かれていません。帰ってほしいのか、帰ってほしくないのかも分からない状況のまま進んでくんですよ。つかみどころがない。やっていることは、『涙は嘘だ』ということを見せている演目」と難しさを明かした。

 花野の本当の心情が分からない中で、「その辺をしっかり自分たちの中でも固めてやってかないと。しっかり3人で話し合いたいなと思います」と方向性を模索。「だから最初見た時は『難しいな』って思いました。でも人間性を全然深く描かれていないところが面白いところだと思います」と魅力も語った。

 巡業では全国各地をまわるが、地方公演での楽しみを聞かれた勘九郎は、「私たちにその質問を聞かれると、もうサウナしか出てこない! この巡業で最近の楽しみは、各地各地のサウナ施設に寄ることです」と笑顔を見せた。また「北九州は平成中村座でもお邪魔している土地ですし、お友達もたくさんいるところなので、違う形でこうやって芝居を持っていけるのも楽しみのひとつです」と喜んだ。七之助も「サウナは楽しみにしております」と強調し、「それから各地各地のおいしいご飯や、昼夜の間でいろいろなところに散歩に出かけたりするのでそれも楽しみです」と語った。

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