父・三浦友和とは仕事の話はしない 40歳目前の三浦貴大が語る“続けることの意味”

主演映画『やがて海になる』(沖正人監督、10月24日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)で武田航平とダブル主演したのは、俳優の三浦貴大。劇中では、父の死を自分のせいだと思い込み、故郷の島から出られない中年ニートを演じたが、自身も“迷いと再出発”を繰り返してきた。不惑を前にした現在地を語った。

インタビューに応じた三浦貴大【写真:増田美咲】
インタビューに応じた三浦貴大【写真:増田美咲】

主演映画『やがて海になる』が公開

 主演映画『やがて海になる』(沖正人監督、10月24日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開)で武田航平とダブル主演したのは、俳優の三浦貴大。劇中では、父の死を自分のせいだと思い込み、故郷の島から出られない中年ニートを演じたが、自身も“迷いと再出発”を繰り返してきた。不惑を前にした現在地を語った。(取材・文=平辻哲也)

トップアイドル時代にバイクでアメリカ横断、ベンツ、ロードスター…多彩な愛車遍歴(JAF Mate Onlineへ)

 2010年、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』で俳優デビューした三浦は、いきなり日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞するなど華々しいスタートを切った。だが本人は当時を「何も分からなかった」と振り返る。

「デビュー作が“ご当地映画”というのもあって、地元の方々がすごく温かくて。右も左も分からないまま、現場で助けてもらいながらやっていました。自分では全然手応えがなかったんですけど、周りの方が支えてくれたから最後までやれた感じでした」

 その後もドラマや映画に次々と出演したが、20代後半から30代前半にかけては「一番苦しかった時期だった」と明かす。

「作品のことばかり考えていて、日常生活のすべてが芝居に引っ張られていた。映画を見ても楽しめない。“このシーンどう撮ったんだろう”“自分ならこう演じるかも”って分析ばかりしてしまって。俳優としての理想と現実の間で、すごく疲れていたんだと思います」

 そんななか、支えとなったのは順天堂大時代のライフセービング経験だという。

「ライフセービングって、1日サボると人の命に関わると思いながらやるんです。だから、きついことに耐えるのは慣れてる(笑)。この仕事では誰も死なない。そう思うと、どんなにしんどくてもやっていけるんですよ」

 今年はほかに、主演映画『行きがけの空』も公開。社会現象にもなった『国宝』では、歌舞伎の興行を手掛ける会社「三友」の社員、竹野を演じた。竹野は、世襲制が根強い歌舞伎の世界に対して、どこか冷ややかな視線を持つ人物として描かれ、主人公・喜久雄(吉沢亮)の人生を冷静に見守る。豪華絢爛な歌舞伎の世界とは対照的に、彼の自然体な演技が作品に現実感をもたらした。

「『国宝』は反響がすごかったです。普段あまり連絡してこない昔の友達からも『見たよ!』ってたくさんメッセージがきました。映画館で見たっていう人も多くて、本当にうれしかった。ああ、ちゃんと届いてるんだなって」

 三浦自身は有名な両親を持つが、高校時代は芸能には一切興味を持たなかった。

「通っていた高校はいろんな二世も多かったので、親のことを特別意識されるようなこともなかった。水球、ライフセービング、バンド、生徒会長もやってました。とにかくいろんなことをやってみたくて。親が有名人だから『さすがだね』『遺伝だね』って言われるのが嫌で、それを気にされないように必死だった気がします」

 父・三浦友和とは「仕事の話は一切しないんです。『最近あの映画面白かったね』くらい。役者同士というより、普通の親子関係ですね」。

 芸歴15年を超えた今も、俳優業を好きになれなかった時期を率直に語る。

「30代は前半が本当にしんどかった。『30代は面白いよ』って言われてたのに全然面白くなくて(笑)。でもコロナで一度すべての仕事が止まったとき、“もっと適当でいいんだ”って思えた。そこから仕事がどんどん楽しくなったんです」

 11月10日には40歳の節目を迎える。「不惑」と言われる年齢だ。

「不惑。惑わず、ですが、その言い方はやめてほしいかな(笑)。今のやり方を始めて5年くらい。あと5年は続けてみて、10年経ったときにどうなっているかを楽しみにしてます。年齢より、“始めてから何年経ったか”を大事にしたい。頑張りすぎずに、やるときはちゃんとやる――それが今の自分です」と三浦。今度も自然体で歩みを続けていく。

□三浦貴大(みうら・たかひろ)1985年11月10日生まれ。東京都出身。2010年、映画『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』でデビュー。同作で第34回日本アカデミー賞新人俳優賞、第35回報知映画賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に『流浪の月』(22年)、『キングダム2遥かなる大地へ』(22年)、『Winny』(23年)、『キングダム 運命の炎』(23年)、『愛にイナズマ』(23年)、『キングダム 大将軍の帰還』(24年)、『雪の花‐ともに在りて‐』(25年)、『国宝』(25年)、『行きがけの空』(25年)など。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください