15歳でグラビアデビュー、俳優業の背景に“恩人”との出会い 雛形あきこが明かす転換点

1990年代にグラビアやバラエティーで一世を風靡(ふうび)した雛形あきこは、俳優としても30年を超すキャリアを誇る。10月17日に開幕の舞台『新 画狂人北斎』(演出・宮本亞門、22日までの東京公演後に25日から全国11都市で上演)では葛飾北斎の娘・お栄役で出演している。これまで数々の作品に出演し、着実に実績を積んでいるが、俳優の道へ進んだ背景には、オーディションで自身を見出してくれた“恩人”の存在が大きかったという。

芸能生活の思い出を語った雛形あきこ【写真:冨田味我】
芸能生活の思い出を語った雛形あきこ【写真:冨田味我】

劇団所属を経てドラマデビュー

 1990年代にグラビアやバラエティーで一世を風靡(ふうび)した雛形あきこは、俳優としても30年を超すキャリアを誇る。10月17日に開幕の舞台『新 画狂人北斎』(演出・宮本亞門、22日までの東京公演後に25日から全国11都市で上演)では葛飾北斎の娘・お栄役で出演している。これまで数々の作品に出演し、着実に実績を積んでいるが、俳優の道へ進んだ背景には、オーディションで自身を見出してくれた“恩人”の存在が大きかったという。(取材・文=大宮高史)

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 雛形といえば1990年代、15歳の若さでグラビアデビュー。当時、野田義治社長率いるイエローキャブに所属し、たちまち人気グラビアアイドルとなった。だが実は、その前に俳優の道を開いてくれた、ある出会いがあった。

「野田社長に見出してもらったこともありがたいことなんですが、その前に『おべんきょう』(TBS系で1992年2月~4月放送)という昼のドラマで、五木田亮一監督に選んでもらえたことが大きいです。初めて連続ドラマのレギュラーに抜てきしていただけました。恩人のような方で、この経験がなかったら、今の私はこの世界にいなかったと断言できます」

――『おべんきょう』はTBSの昼間帯「愛の劇場」枠の作品でした。

「当時、私は劇団に所属していました。きっかけは友達がその劇団に入りたくて、私も一緒に入ったのが始まりでした。所属してから1週間も経たないうちに受けたのが『おべんきょう』のオーディションだったんです。何のキャリアもなかった私を、『イメージそのままだった』と五木田さんが選んでくれて、坂口良子さんの娘という大きな役をいただけました。35話もあったので3か月間毎日現場に通って、ナレーションも経験しました。お芝居って楽しいと思えた原体験でした」

――そこから野田社長のスカウトによりグラビアデビューと、俳優とは別のジャンルにも進み、幅広い活動となりました。

「そうですね、でも好きなお芝居を続けられたのもグラビアのおかげだと思っています。ドラマがきっかけで『momoco』というグラビア雑誌に出られて、それを見た野田さんが声をかけてくれました。『グラビアで売れたら、好きなことをやらせてあげる』と約束してくれて、その通りにドラマのお芝居を続けることができました。グラビアがなかったら俳優も続けられなかっただろうし、世の中に私のことを知ってもらえた大きなきっかけになったので、ありがたかったですね」

「皆さんの活力につながるようなお芝居を届けていきたい」【写真:冨田味我】
「皆さんの活力につながるようなお芝居を届けていきたい」【写真:冨田味我】

産休で仕事がストップ「何をしたらいいんだろう?」

――雛形さんは、音楽活動や、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)などバラエティーでも活躍しました。当時の思い出は。

「『めちゃイケ』は、人を笑わせることって難しいんだな、と実感しながら出ていましたね。それに作っているスタッフさんたちがとてもストイックに仕事をしていらしたんです。真剣な舞台裏を知ったからこそ、テレビの中では笑っていても毎回私も必死でした」

――今では長いキャリアを誇りますが、芸能活動の中で例えば人生観が変わったような出来事はありましたか。

「人生観とはちょっと違いますが……。最初の結婚で、娘が生まれる時に半年間産休をいただきました。それまで休みなく、ずっとお仕事をしていたのが、初めて完全に仕事から離れた期間でした。娘といる時間は幸せなんですが、ある時ふと、『私、何をしたらいいんだろう?』って、心にぽっかり穴が空いた、喪失感のような気持ちがよぎりました」

――それは、初めて芸能の現場から離れた故の不安でしょうか。

「そうですね。それまでレギュラーだった番組には代わりの方が出ていて、自分の居場所がなくなってしまったんじゃないかって、すごく不安になりました。でも、その時間があったからこそ、『私って本当にこの仕事が好きなんだな』と分かりました。だから復帰してからは、より深く、一つひとつの役や仕事に向き合うようになりましたね」

――では、デビュー当時から今まで、一貫して大切にされていることはありますか。

「お芝居が楽しいという気持ちは、何歳になっても変わらないですね。それと同時に、(芝居は)本当に難しいという気持ちも、年々強くなっています。今回の舞台も、本当に大変だなと思いながら毎日稽古していました。新しい作品に出る度に『(演技は)まだ分からないことだらけだな』と感じています」

――最後に今回の舞台『新 画狂人北斎』で見せたい雛形さんの姿を教えてください。

「どの作品でも、何かメッセージを伝えるというよりは、その世界に生きた人間として、舞台の上で存在できるようにベストを尽くしたいです。今回の舞台は、好きなことをして生きるのが困難だった江戸時代のお話で、その中でも芸術に情熱を燃やしてきた人たちのエネルギーを描いています。北斎の娘、お栄の絵に対する熱い思いを伝えて、皆さんの活力につながるようなお芝居を届けていきたいと思っています」

□雛形あきこ(ひながた・あきこ) 1978年1月27日生まれ、東京都出身。劇団東俳に所属し92年にTBS系ドラマ『おべんきょう』で俳優デビュー。その後も映画やドラマなどに多数出演。一方で、92年同年からグラビアも始め、94年にフジテレビビジュアルクイーンに選ばれる。95年にはファーストシングル『笑顔の予感』で歌手ビュー。2025年は、7月公開の映画『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』、10月期放送のカンテレ・フジテレビ系連続ドラマ『終幕のロンド -もう二度と、会えないあなたに』などに出演している。プライベートでは2013年に天野浩成と再婚。一児の母。

【今後の公演情報】
「新 画狂人北斎」
石川公演:10月28日(火)~10月29日(水)北國新聞赤羽ホール
大阪公演:10月31日(金)~11月3日(月・祝)サンケイホールブリーゼ
北海道公演:11月11日(火)札幌市教育文化会館大ホール
11月13日(木)北ガス市民ホール(北見市民会館)
11月15日(土)幕別町百年記念ホール 大ホール
11月17日(月)だて歴史の杜 カルチャーセンター 大ホール
大分公演:11月24日(月・祝)中津文化会館 大ホール
熊本公演:11月25日(火)市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館) 大ホール
京都公演:11月27日(木)~11月28日(金)京都劇場
山口公演:11月29日(土)~11月30日(日)下関市民会館 大ホール

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