ゴスペラーズ・黒沢薫と乃木坂46・中西アルノがMCを務めるCS放送TBSチャンネル1音楽番組『Spicy Sessions』（毎月放送）の初のライブイベントが24日夜、神奈川・KT Zepp Yokohamaで開催された。番組開始から約2年、黒沢はこの日も含めてトップシンガーと歌唱で渡り合う中西に感心しきり。終了後には中西が、「歌の勉強は乃木坂46に入ってからです」と明かした。（取材・文＝柳田通斉）

『Spicy Sessions』は、ゲストの音楽的ルーツを深掘りするトークをしながら、ゆかりのある楽曲を生バンドとセッションする番組。黒沢を含め、名だたるシンガーと中西の歌唱が魅力のポイントになっている。歌番組が少なくなってきた中、ネット上でも「質が高い」の評価が高まり、今年6月には、「第15回衛星放送協会オリジナル番組アワード」のバラエティージャンルで最優秀賞を受賞。「Spicy Sessions -THE LIVE-」と題した今回の初ライブイベントにつながった。

　会場は約1100人の観客で満杯になった。中西のファンだけでなく、老若男女が集い、黒沢は「実は武道館で公演ができるくらいの応募がありました」と明かした。

　この日は、番組初回ゲストの平原綾香の他、スターダスト☆レビュー・根本要、Penthouse・浪岡真太郎、大島真帆、Little Glee Monster・かれん＆miyouとセッション。中西は、1曲目の『獣ゆく細道』（椎名林檎と宮本浩次）から黒沢とともに美声を響かせた。その後、『やさしいキスをして』（DREAMS COME TRUE）では大島と渡り合い、黒沢に「セッションというか、対等な歌手になってきたね」と言わしめた。

　そして、『ハナミズキ』（一青窈）を黒沢、根本と、『ふれあうだけで』（三浦大知）をかれんと歌唱。『思い出が止まらなくなる』（乃木坂46）ではソロ歌唱を披露した。黒沢には「喉がパッカーンって開いてたね」「力強い歌い方になって、世界観が出てきました。オリジナリティーもありました」などと称賛され、中西は照れながらも実感を込めた。

「楽曲の歌詞に説得力を持たせて歌いたいと思い、より言葉の力が強くなりました」

　終盤では、平原と『Georgia On My Mind』（玉置浩二）と歌い上げ、アンコールでは『APT.』（ロゼ＆ブルーノ・マーズ）を観客と一体になって楽しく歌い、踊った。

　中西に関しては「バンドの皆さんとお客さんに『板挟み』にあって」といった“珍発言”や言い間違えもあったが、そんなポンコツぶりも魅力の一つ。黒沢は最後に「彼女をMCにして良かった」と言い、その理由を終演後の取材対応で明かした。

「正直、（番組）1回目から考えると、『ここまでできるようになったのか』と思っています。普通に（ゲストと）渡り合っているんで……。僕が（MCにと）声を掛けた時から、歌がうまいし、情熱があるから『伸びるだろう』とは思ってはいましたが、こんなにハーモニーもできるとは思ってはいませんでした」

　対面するのは収録時だけだが、回を追うごとに中西の成長を感じてきたという。

「収録で集中し、感じたことを吸い込んで自分のものにして次に出す。それを繰り返しているので、感謝もしていまし、こちらも刺激になります」

　文字通り、成長の一途をたどる中西だが、「歌は乃木坂46に入る前から学んでいましたか」の問いには、こう返した。

「全然です。お風呂で歌っているくらいでした（笑）」

　その上で、「この番組に来ると、まだまだだと感じます。でも、皆さんの遠い背中を追いかけることが幸せです。摂取することや学ぶことが増えてきましたから」と表現した。

　収録のない期間は、歌唱練習を重ね、出会ったゲストのライブ映像を見たり、アルバムを聴くなどしているという。それを繰り返す中で、度胸もついてきたと明かした。

「最初の頃は、フェイク、ハモりも怖くて恐る恐るでしたが、今では自信を持って飛び込んでいけるようになりました。それはこの2年間で培われたことだと思います」

　現役アイドルのシンガーとしての成長も感じられる要素も踏まえ、平原は「こういった番組は長く続けてほしいです。来年も（ライブイベントを）やってください」と言った。それは黒沢と中西も同じ思いで、黒沢は「応募は武道館ができるくらい来たけど、まずは今日の倍ぐらいの会場で」。その横で、中西は「夢は大きく東京ドームで」と言い、ほほ笑んだ。

　なお、この日のイベントの模様は、11月29日と12月27日の両日、ともに午後11時30分からの同番組で放送される。