元アイドルが社長&俳優に 二刀流で挑むZ世代の新星・谷藤海咲、『おむすび』タマッチ役から次のステージへ
映画『笑えない世界でも』(監督・岡本充史、公開中)で、声を失った少女・凛を演じた俳優・谷藤海咲(たにふじ・みさき)。NHK連続テレビ小説『おむすび』(2024年)で博多のギャルグループ“ハギャレン”のタマッチ役を演じて注目を集めた彼女は、Z世代の俳優として、自分らしい生き方を模索している。今、俳優として新たな道を歩みながら、共感マーケティング会社「zzz.inc(ねむインク)」の代表取締役という顔も持つ。二刀流挑戦の先に、どんな未来を見ているのか――。

共感マーケティング会社「zzz.inc(ねむインク)」の代表取締役
映画『笑えない世界でも』(監督・岡本充史、公開中)で、声を失った少女・凛を演じた俳優・谷藤海咲(たにふじ・みさき)。NHK連続テレビ小説『おむすび』(2024年)で博多のギャルグループ“ハギャレン”のタマッチ役を演じて注目を集めた彼女は、Z世代の俳優として、自分らしい生き方を模索している。今、俳優として新たな道を歩みながら、共感マーケティング会社「zzz.inc(ねむインク)」の代表取締役という顔も持つ。二刀流挑戦の先に、どんな未来を見ているのか――。(取材・文=平辻哲也)
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谷藤が芸能の世界に入ったのは15歳。アイドルグループ・KissBeeのメンバーとして活動を始めた。10代でステージに立ち、カメラの前に立つ日々。だが、コロナ禍でライブ活動が止まり、初めて立ち止まったという。
「お芝居できないなってずっと感じてて。でもアイドル好きだし、辞めるタイミングが難しかったんです」
社会全体が止まり、誰もが先を見通せなかったあの頃。谷藤もまた、自分のこれからと向き合った。「みんなが苦しい状況の中で、私は何ができるんだろう」と考えたとき、彼女の中に芽生えたのが「zzz.inc(ねむインク)」の構想だった。
2020年、仲間とともに資本金100万円の株式会社「zzz.inc」を立ち上げた。Z世代のリアルな感覚を企業に伝える、共感マーケティングの会社だ。
「Z世代の感覚を企業に伝える。『なんで若い子がこれを買うのか』を言語化して橋渡しするのが私たちの仕事です」
扱うのはコスメ、カラーコンタクトなど、同世代の女性が日常的に使うアイテム。「かわいい」や「使いたい」を感覚で終わらせず、分析し、言葉にして企業に届ける。俳優としての表現力と、マーケターとしての観察眼。どちらも“人を理解すること”から始まっている。
そんな谷藤の原点は、もっと前にある。小さなころからテレビの世界に憧れていた。画面の向こうの人たちの笑顔を見て、「自分もいつか、誰かを元気にできる人になりたい」と思っていたという。
子役としてCMやドラマに出演した経験もあり、本格的に芸能活動を始めたのは中学生の終わり。オーディションを経て「KissBee」に加入した。
「応援してくれる人がいて、その気持ちに応えたいと思ううちに、気づいたら夢中になっていました」
グループとして駆け抜けた8年間。ライブに、撮影に、YouTube配信にと走り続ける日々は、彼女に“人に見られる”という職業意識を植え付けた。一方で、同じ時間の中で、もうひとつの思いが静かに膨らんでいった。
「メンバーの誰かじゃなく、“谷藤海咲”として何かを伝えたい。その気持ちがだんだん強くなっていったんです」

映画『笑えない世界でも』でも異色の動き「自分の責任で」
アイドル卒業後、現在の所属事務所「ヒラタオフィス」に移籍。早速、NHK連続テレビ小説『おむすび』で大きな役を得た。博多のギャルグループ“ハギャレン”のタマッチ役だ。
「現場に半年ぐらい、がっつり入っていました。長い撮影現場に関わること自体が大きな経験で、一発目で朝ドラのような現場に行けたのは、自分の中で肝が座るきっかけになったと思います。どこに行ってもビビらなくなった。メンタルはついたんじゃないかなと思います」
『笑えない世界でも』では、俳優としてだけではなく、インフルエンサーとして宣伝にも深く関わっている。
「どうすれば届くのかを自分で考えて、SNSでの発信やフォロワーへのアプローチを工夫しました。自分が出ている作品だからこそ、届け方も自分の責任でやりたいと思いました」
俳優と発信者、その両方の立場から関わった作品。だからこそ、谷藤にとってこの映画は特別だった。アイドルとして人の前に立ち、俳優として心を演じ、経営者として仲間とビジョンを形にする――その原動力は、“人へのまなざし”だ。
「俳優業と会社経営、どっちも生かせる。役者として知名度が上がれば会社の信頼になるし、逆に“社長なのに俳優”ってちょっと面白いかな」と谷藤。俳優も経営も、根底にあるのは“人に伝える”という行為。彼女はそれを、SNSや芝居、マーケティングという異なる形で具現化している。
俳優としてのキャリアはこれからが本番。自身の感性を武器に新しい領域に挑む。谷藤は、Z世代の“自分らしい生き方”を、いまも更新し続けている。
『笑えない世界でも』は10月17日より東京・池袋HUMAXシネマズで公開中。
□谷藤海咲(たにふじ・みさき)1999年9月22日、東京都出身。15歳でアイドルグループ「KissBee」に加入し、約8年間活動。2024年5月に卒業後、俳優として本格的に活動を始める。NHK連続テレビ小説『おむすび』(24年)では、博多ギャルグループ「ハギャレン」の佐藤珠子(タマッチ)役を演じ話題に。Z世代による共感マーケティング会社「zzz.inc(ねむインク)」の代表取締役も務める。
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