“路線変更”で大ヒットした漫画3選 『遊戯王』は最初カードゲーム作品じゃなかった?

漫画の中には、大ヒットにつながるまで紆余曲折を経た作品も多い。たとえば当初の構想を捨てて、途中で「路線変更」したことによって成功を収めたという事例も存在する。そこで今回は、「路線変更によって大ヒットした漫画3選」を紹介しよう。

「路線変更によって大ヒットした漫画」を紹介(写真はイメージ)【写真:写真AC】
「路線変更によって大ヒットした漫画」を紹介(写真はイメージ)【写真:写真AC】

大ヒットには路線変更が欠かせない?

 漫画の中には、大ヒットにつながるまで紆余曲折を経た作品も多い。たとえば当初の構想を捨てて、途中で「路線変更」したことによって成功を収めたという事例も存在する。そこで今回は、「路線変更によって大ヒットした漫画3選」を紹介しよう。

 まず注目するのは、『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて1972年~2018年まで連載されていた『ドカベン』(作:水島新司)シリーズ。高校野球漫画として名を馳せた『ドカベン』以降も、『プロ野球編』『ドリームトーナメント編』といった続編を発表し続けて46年という長期連載を達成した。

 しかし、当初は野球ではなく「柔道」にフォーカスしており、その証拠に『ドカベン』1巻の表紙には柔道着を着た主人公・ドカベンこと山田太郎や岩鬼正美が描かれている。その後に野球部を舞台にした作品にシフトしていくのだが、そもそも柔道を描いたことには「ある事情」があったそうだ。

 というのも作者である水島氏は同作連載当時、チャンピオンのライバル誌のひとつ・『週刊少年サンデー』(小学館)で『男どアホウ甲子園』という野球漫画を連載していた。そこで作品ジャンルの「被り」を避けるために「柔道漫画」を描いたといわれている。これは人気連載作家だった水島氏ならではの事情だが、結局、『ドカベン』の話も得意分野の野球に切り替えていることから「つなぎとして柔道を描く(柔道編にも野球の伏線があった)」という意図があったのかもしれない。

 途中の路線変更で大きなヒットにつなげた作品といえば『キン肉マン』(作:ゆでたまご)も外せないだろう。今でも『週刊プレイボーイ』(集英社)が運営するニュースサイト「週プレNEWS」で連載している同作は、『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて1979年~87年まで連載された。

 プロレス漫画として有名だが、連載当初はプロレスを中心とした物語ではなく、ジャンルとしては「ヒーローもののパロディーギャグ」。落ちこぼれヒーローのキン肉マンは地球を守ろうとしては失敗するダメ超人で、敵として登場するのは宇宙怪獣だった。

 プロレスラーというよりも「ウルトラマン」のようなヒーローに似た描き方で、今のシリアスな展開とは違うギャグ要素満載の作風である。プロレスの展開が描かれ始めたのは「超人オリンピック編」あたりで、ここから大きな人気を獲得することに。キン肉マン公式サイト内のインタビューで原作担当の嶋田隆司氏は、「『超人オリンピック編』がかなり調子良かった」と振り返っている。

 最後に紹介するのは、トレーディングカードゲーム「遊戯王OCGデュエルモンスターズ」を生んだ『遊☆戯☆王』(作:高橋和希)だ。同作に登場したカードゲームを中心とするバトル漫画が人気を博し、ジャンプにて1996年~2004年まで連載された。

 そもそも主人公の武藤遊戯が「千年パズル」を解いたことで、遊戯の中に「闇遊戯」という別人格が生まれたという設定の同作。連載当初は、闇遊戯が「闇のゲーム」を悪人にしかけては相手を罰するという「勧善懲悪」スタイルだった。ちなみに9、10話には一時的に架空のカードゲーム「マジック&ウィザーズ」が登場し、遊戯とライバルの海馬瀬人が対戦している。

 それ以降は途中で打ち切りの危機に陥り、読者から好評だった「カードバトル」が再登場。この路線変更によって人気に火がつき、さらに『遊☆戯☆王』をもとにしたトレーディングカードも発売されて大きな成功につながったのだ。

 今回取り上げた作品はいずれも大ヒットを記録している有名作品。これを踏まえると、ヒットするためには「路線変更」という選択肢も重要であることがうかがえる。

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