サッカー少年から俳優へ…神尾楓珠の現在地 転機は手加減なし自衛隊「本当の訓練生として扱ってくれた」

俳優・神尾楓珠が、10月12日スタートのABCテレビ・テレビ朝日系連続ドラマ『すべての恋が終わるとしても』(日曜午後10時15分)で切ないラブストーリーに挑む。初共演となる葵わかなとのW主演で、2人は高校時代の同級生を演じる。2015年に俳優デビューし今年で10周年。着実にキャリアを積む中、今作では「クールに思われることが多い」というパブリックイメージにこだわらず、素直な芝居で青年の心の機微を見せる。

インタビューに応じた神尾楓珠【写真:舛元清香】
インタビューに応じた神尾楓珠【写真:舛元清香】

ドラマ『すべての恋が終わるとしても』で葵わかなとカップルでW主演

 俳優・神尾楓珠が、10月12日スタートのABCテレビ・テレビ朝日系連続ドラマ『すべての恋が終わるとしても』(日曜午後10時15分)で切ないラブストーリーに挑む。初共演となる葵わかなとのW主演で、2人は高校時代の同級生を演じる。2015年に俳優デビューし今年で10周年。着実にキャリアを積む中、今作では「クールに思われることが多い」というパブリックイメージにこだわらず、素直な芝居で青年の心の機微を見せる。(取材・文=大宮高史)

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 原作は冬野夜空氏による同名の140字の超短編小説シリーズ。本作では原作全3巻の中から8つのエピソードをモチーフに、4組のカップルを軸にドラマ化した。都立高校に通う羽沢由宇(葵)はある日、神尾演じる美術が好きな同級生・大崎真央に出会い、卒業式の日に交際を始める。2人は“運命の恋”と思うが、大学進学と遠距離恋愛を経て、予期せぬ変化が2人の人生に起こっていく――という展開だ。実は、真央にはある内情があり、神尾がどう表現するか注目される。

「後々、真央が抱えているものが判明しますが、それをどこまで見せればいいのか、が難しかったです。今和紀監督と相談しながら、このシーンではこれくらい見せよう、というのを丁寧に作っていきました」

 監督との対話を通じて、校舎の壁に絵を描く奔放さと繊細な性格という、真央の両面を掘り下げていった。

「真央は周りからは強い人に見えても、恐怖心も不安も持っています。その部分をちゃんと意識して演じました。現場はピリピリした雰囲気はなく、わかなさんとは同学年だったので、他愛もない話ができました。重い芝居もしないといけない身としては、ありがたかったですね」

 そう明かすと、さわやか笑顔を見せた。2015年に16歳で俳優デビュー。19年に20歳の時にMBS・TBS系『左ききのエレン』で連続ドラマ初主演を果たした。その後もネクストブレイク俳優として存在感を放つ中、大きな転機になったのが、今年4月期のテレビ朝日系『PJ ~航空救難団~』での経験だった。航空自衛隊航空救難団の訓練生・沢井仁を演じるにあたり、実際に航空自衛隊の訓練生が受ける訓練を積んだ。その道のプロと同じ試練を乗り越えた体験は、彼に俳優としての新たな視点を与えたという。

「自衛隊の方も、スタッフの皆さんも僕たちを役者ではなく、本当の訓練生として扱ってくれました。訓練はしんどかったですが、手加減してくれなかったからこそ、ちゃんと役に没入できたんだと思います。この年齢であの経験ができたのは、すごく大きいことでした」

“素顔の神尾楓珠”を明かした【写真:舛元清香】
“素顔の神尾楓珠”を明かした【写真:舛元清香】

「クールそうとか、ふざけなさそうって思われてる」

 第一線で走り続けているうちに、自身の変化も感じるように。

「昔に比べると、仕事の現場で素の自分を出せるようになってきました。以前は『神尾楓珠って、こう思われているから、こういなきゃ』みたいに見えないものに縛られていた部分があったんです。クールに見られることが多かったからって、自分で勝手にそうしていただけだったんですが(笑)」

 長いまつげの奥からのぞく眼差しは、ミステリアスな雰囲気を漂わせる。それゆえの世間のイメージに、無意識のうちに応えようとしていた。

「クールそうとか、ふざけなさそうって思われてるから、ちょっと格好つけないとな、とか思ったりしました。でも最近は、そんな無理をすることが本当になくなりましたね。自然体で共演者の方やスタッフさんとしゃべれるようになったのは、すごく大きな変化です。その方がコミュニケーションを取りやすいですし、結構ありのままの自分を受け入れてくれる人が多かったのも、うれしかったですね」

 そして“素顔の神尾楓珠”に欠かせないものも明かした。

「俳優になるまでずっとサッカーをやっていました。学校の教室でカードゲームが流行っていても、そっちのけでボールを蹴っていましたね。今はプレイする側から見る側になりましたが、サッカー熱は相変わらずです(笑)。一つのことに夢中になると周りが見えなくなるタイプなので、そんなところはまだ少年っぽいなと思います」

 サッカー少年から俳優へ。全く異なる世界に見えるが、通じるものがあるという。

「作品作りもチームプレーです。監督がいて、スタッフさんがいて、共演者がいて、みんなで一つのものを作るところは、サッカーと通ずる部分があって面白いです。もう一つ、俳優の仕事に熱中できる理由としては、『飽きない』からなんです。ずっと同じ日々の繰り返しではなくて、例えばドラマだったら3か月ぐらいで一つの区切りがあって、また新しい役が始まります。区切りもあって、いろんな役をやらせていただけるから、ずっと新鮮な気持ちで過ごせています」

 そんな神尾に、今後の目標を尋ねてみた。すると少し考えてから、きっぱりと答えた。

「昔から目標って、あんまり立てないんです。もちろんいただいた役には全力で向き合いますが、何年後にこうなっていたい、というのはほとんど考えたことがなくて。それよりも、目の前のお芝居をしっかり務めて、向き合っていく中で成長していけたらなと思っています」

 不確かな先よりも、今この一瞬に力を注ぐ――。この秋、神尾が繊細な青年の人生を視聴者の心に刻む。

□神尾楓珠(かみお・ふうじゅ)1999年1月21日生まれ。東京都出身。2015年に日本テレビ系『24時間テレビ』のスペシャルドラマ『母さん、俺は大丈夫』で俳優デビュー。19年、MBS・TBS系『左ききのエレン』で連続ドラマ初主演。その後もドラマや映画などで活躍。主な出演作は、ドラマでは、フジテレビ系『いちばんすきな花』(23年)、TBS系『くるり~誰が私と恋をした?~』(24年)、テレビ大分『はぐれ鴉』(25年)など多数。映画では、17年『兄に愛されすぎて困ってます』や主演作『20歳のソウル』(22年)のほか、25年は、『大きな玉ねぎの下で』(W主演)、『パリピ孔明 THE MOVIE』『カラダ探し THE LAST NIGHT』など次々に話題作に出演。10月期のABCテレビ・テレビ朝日系連続ドラマ『すべての恋が終わるとしても』(日曜午後10時15分)は、TVerで見逃し配信も。

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