【ばけばけ】トキが秘密に“気付いていた”描写の狙い ヒロインへの印象変化「人間は一直線ではない」

俳優の高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)。第15回が17日に放送され、トキの出生の秘密が明かされ、また、病床の雨清水傳(堤真一)の“ラスト”も描かれた。制作統括の橋爪國臣氏が取材に応じ、第15回に込めた思いを語った。

トキ(右)を演じる高石あかり【写真:(C)NHK】
トキ(右)を演じる高石あかり【写真:(C)NHK】

第15回では傳のラストが描かれる

 俳優の高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)。第15回が17日に放送され、トキの出生の秘密が明かされ、また、病床の雨清水傳(堤真一)の“ラスト”も描かれた。制作統括の橋爪國臣氏が取材に応じ、第15回に込めた思いを語った。

(※以下、ドラマの内容に関する記述があります)

 第15回ではトキが、自分は松野家の本当の娘ではなく養女で、親せきと思っていた傳とタエ(北川景子)が実の両親であることを知っていたと明かす衝撃の展開が描かれた。これまでトキが気付いた様子は描かれていなかった。このシーンの舞台裏と狙いを聞いた。

「トキは血のつながりは関係なくみんな家族だと考えるキャラクター。それぞれの立場、歴史はありますが、そこに偏見や差別はない考えで生きている人。トキはどこかで出生の秘密を知り、ショックを受けたかと思いますが、でも、誰にでも何かあると受け止められる子。わざわざ言うこともない子。という話を、脚本を作る上でディスカッションをしました。そこで、実はそうだったんだ、みたいな衝撃を受けるより『私、知っていましたけど。だから何?』みたいなのがトキらしさ。このドラマで伝えたいテーマに近いと、脚本家・ふじきみつ彦さんが考えて書いてきました。これを生かすためにどうしようと話して練り上げた形です」

 明るく朗らかで楽しい性格だけでなく、芯の強いトキという見方に変わりそうだ。

「そうかもしれません。このドラマのテーマは、人間は一直線ではないということ。楽しく夢だけ追っている明るい子だけでなく、物語の主人公だって裏には暗い影の部分もあるはず。そういう部分を含めてすべて人間ということを表現していけたらと考えています。そこに人間の哀れみやおかしみ、いろんなことがあるのがドラマだと思って表現しました」

 高石と同シーンについて何か話したことがあるだろうか。

「あのシーンは俳優の感情がすごく乗るシーン。こちらから積極的に話しかけることなく、空気を壊さないよう緊張していました。周りのスタッフもピリピリしていました」

 傳が、死期が近いにもかかわらず、トキと親子だと名乗りをあげることをしなかった。トキに自分とタエの子ではなく司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)の子だと言い、生まれた時から、そして、これからもずっとと告げた。このセリフに込めた作り手の思いを聞いた。

「傳の覚悟です。松野家にトキを養女に出すと決めた時から、出生のことは最後まで墓場まで持っていくと決めた傳の覚悟。それこそがトキへの愛情だと思います。あそこで自分は実の親だと明かすと、傳自身は満たされると思いますが、トキはいろんな十字架を背負って生きていくことになります。家族と元の家族みたいな形で生きていくのを傳が全部抱えることで、トキが本当の家族は松野家だという今までのことを崩さずに生きていけます。娘じゃないと言うことで娘への最大の愛情を与えるシーン。実母のタエにとっては将来、娘として迎えることを断ち切ったシーンでもあり、タエに申し訳ないという気持ちも漂います。人間の感情がすごく揺さぶられる一番愛情がこもったセリフの一つだと思います」

雨清水傳を演じる堤真一【写真:(C)NHK】
雨清水傳を演じる堤真一【写真:(C)NHK】

史実からの大きな変更は三之丞

 第14回ではトキがタエにしじみ汁の作り方を教え、一緒に作るほほ笑ましいシーンもあった。舞台裏を聞いた。

「北川さんが監督といろいろ話していました。北川さん自身も母親。養子に出したとはいえ子どもへの気持ちがどんなものか、表に出せないけど、母親としてこういう気持ちで接すると思うなど、すごくディスカッションした上で撮りました。温かなシーンになったと思います。しじみ汁のシーンでは現場がすごくいいにおいに包まれるんです。本物の(島根・)宍道湖産のしじみを使ってスタジオ裏で作っています」

 これまでの内容を見ると史実に近い展開に思える。逆に大胆に変えた部分はあるのか。

「小泉藤三郎さんという方を参考に三之丞というキャラクターを作っていますが、藤三郎さんは史実では、金のむしんに来たり、先祖の墓を売り飛ばしたり、結構ひどいんです。でも我々は本当にひどいだけだった人なのか、金をむしんするだけのダメ男だったのか、何でひどいことをしなければならなかったのか、と考え、つながっていったのが今の三之丞のキャラクター。彼なりの苦悩や理由が見えるようになったらいいなと思って描いています。参考にした藤三郎さんの史料はほとんど残っていないので私たちなりに考えたキャラクターになっています」

 作品は松江の没落士族の娘で、小泉八雲の妻・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描くオリジナルストーリー。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語をフィクションとして描く。

※高石あかりの「高」の正式表記ははしごだか

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