櫻井海音が語る人生観「いつかは結婚して家庭を」 理想の父親像「子の選択肢を増やせるように」
2024年に実写版『【推しの子】』の主人公・アクア役などで話題を呼んだ俳優・櫻井海音が、今度は現代を反映した生々しい作品の中で奔走する。10月16日スタートのMBSドラマ特区『死ぬまでバズってろ!!』(木曜深夜0時59分、テレビ神奈川で木曜午後11時30分ほか)で女性インフルエンサーに振り回される警察官役に挑む。このほどインタビューに応じ、活気あふれる現場のエピソードや堅実さが垣間見える人生観を語った。

炎上を描くドラマ『死ぬまでバズってろ!!』に出演
2024年に実写版『【推しの子】』の主人公・アクア役などで話題を呼んだ俳優・櫻井海音が、今度は現代を反映した生々しい作品の中で奔走する。10月16日スタートのMBSドラマ特区『死ぬまでバズってろ!!』(木曜深夜0時59分、テレビ神奈川で木曜午後11時30分ほか)で女性インフルエンサーに振り回される警察官役に挑む。このほどインタビューに応じ、活気あふれる現場のエピソードや堅実さが垣間見える人生観を語った。(取材・文=大宮高史)
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『死ぬまでバズってろ!!』は、文春オンラインで連載された同名ウェブコミックが原作のインターネット・サスペンス。乃木坂46出身の与田祐希が、配信者“タパ子”ことフリーター・浅野加菜子役で主演。櫻井は、タパ子の無名時代からの視聴者でタパ子=加菜子と知りつつ彼女に惹かれていく警察官の渡辺優斗を演じる。
物語は、たまたま撮影した、ひき逃げ事故の動画がSNSでバズったことで加菜子が無名の配信者から告発系インフルエンサーへと激変するところから始まる。承認欲求に取り憑かれた加菜子が他人の悪行を暴き、暴走ぶりが引き起こす顛末までを生々しくドラマ化。まさに今の時代を反映した内容に、櫻井も印象深かった様子だ。
「SNSのリアルを、エンタメらしくポップに、分かりやすく描いているというのが、(脚本の)第一印象でした。原作にも忠実な映像になったと思います。渡辺は真面目な常識人だからこそ、自分と全く違うタパ子に惹かれていく。その関係性を丁寧に演じました」
作品では与田演じるタパ子こと加菜子のキャラクターが強烈に描かれており、櫻井はいわば太陽に対する月のような役作りに徹した。
「やっぱりこの作品は、タパ子ありきです。彼女はいろんな人を巻き込んで騒動を起こしていきますが、彼女自身もトラウマと向き合って少しずつ成長していきます。渡辺はその過程も愛せると思っているんだろうなって。彼女のエネルギーを受け止めて、どうすればその個性がもっと伝わるかを考えながら現場にいました」
一見受け身にも見える、この役についてのスタンスは、彼自身のルーティーンにも通じるようだ。
「事前に自分のプランを固めていくことはほとんどありません。それよりも、現場で監督さんたちが何を求めているのか、共演者の方がどういうお芝居をしてくるのか、その場で生まれるものを汲み取って表現するのが一番いいと思っていますし、僕の性に合っています。もしかしたら観察眼が敏感なのかもしれないですね」
そう自己分析し、ほほ笑んだ。そんな櫻井の芸能界入りは、19年にバンド『インナージャーニー』でKaito名義でドラマーを務めたことがきっかけだった。
「音楽を始める前はサッカーをやっていて、体を動かして何かを表現することは昔から好きでした。スポーツも音楽もお芝居も、根っこは同じだと思います」

「どうやったら叩かれないかな」『【推しの子】』アクアへのプレッシャーとプライド
翌20年にNHK連続テレビ小説『エール』にドラマー役で俳優デビュー。以来、着実に経験を重ねる中で、俳優としてのプライドも芽生えてきた。とりわけ、漫画原作の実写版『【推しの子】』に臨んだ重責が自身を奮い立たせた。24年に配信開始となったウェブドラマ『【推しの子】』と同年公開の映画『【推しの子】-The Final Act-』で主人公・星野アクア役を熱演。両作で原作のほぼ全編を実写化し、アイドル・星野アイの息子で母と同じく芸能界に進むアクア役について、「僕以外にやらせたくない」という程の思いをもって没頭した。
「僕も原作が好きでしたし、原作ファンの愛がすごく強い作品だったので、正直、プレッシャーは大きかったです。『どうやったら叩かれないかな』とか怯えながらやっていた部分もあります(笑)。でも、だからこそ原作に対して最大限のリスペクトを払うことを徹底しました。アクアをやりきれたことで。ようやく自分に誇りを持てるようになりました」
その自信を胸に、櫻井の役への向き合い方は進化する。彼が言う「現場の空気に合わせる」とは、単に監督や共演者を見るだけではない。
「常に、自分が何を求められているかを察知していたいです。例えば、撮影部の方はいま、どういう絵を撮りたいんだろうなとか、照明部さんはどこに光を当てたいんだろう、など。この仕事は決して一人ではできないので、その場にいる全員の思いを把握しながら、自分もパーツの一つを担っている、という感覚が必要だなと思います」
一方で、これからの人生観について聞いてみると、「よく聞かれるんですが、あんまり目標とかやってみたい役柄って、考えたことがないんです」と照れながらもきっぱりと答えた。
「プライベートでも、人並みに幸せを得られる人生が理想です。もちろん、お芝居は真面目に続けていきたいですが、いつかは結婚して家庭を築きたいという思いがあります。そこに対して、いつまでにどのくらい稼いでおきたいとか。もし子どもに恵まれたら、親としてちゃんとその子のやりたいことや夢を応援してあげたいですし、その子の選択肢を増やしてあげられるくらいにはなっておきたいというのが、根本にあります」
インタビュー中、真摯に語る姿勢に真面目な人柄がのぞいた。「24時間真面目でいるのは無理ですし、ふざける時もあります(笑)。オンとオフは切り替えつつ、作品の現場ではやっぱり“真面目モード”です。今まで話してきた『自分に何が求められているんだろう?』を考える癖も、そのおかげかもしれないですね」とはにかんだ。
公私ともに真摯に、着実に――。それが櫻井の演技に真実味をもたらしている。
□櫻井海音(さくらい・かいと)2001年4月13日、東京都出身。19年に結成のバンド『インナージャーニー』でKaito名義でドラマーを務め、23年まで活動する。一方、20年にNHK連続テレビ小説『エール』で俳優デビュー。23年にはWOWOWドラマ『アオハライド Season1』で連続ドラマ初主演を飾った。24年はAmazon Prime Videoドラマ『【推しの子】』、映画『【推しの子】-The Final Act-』で星野アクアを継続して演じた。25年も俳優としてまい進し、TBS系ドラマ『御上先生』、映画『お嬢と番犬くん』、同『カラダ探し THE LAST NIGHT』などに出演。
