「私の時代が始まる」。渡辺桃は、スターダムの真夏の最強レスラーを決めるリーグ戦「5★STAR GP 2025」で念願の初優勝を果たした。同大会に9度出場は32人の出場選手中最多、ようやくたどり着いた頂点だった。しかし渡辺はかつて“時代”を作ったことがある。2018年5月からの1年間で、ワンダー・オブ・スターダム王者として13回防衛という当時の最多防衛記録を樹立した。それから6年、最強の証を手に入れた“ブラックピーチ”は何を思うのか。（取材・文＝橋場了吾）

　2度目となる渡辺桃とのインタビュー、前回はちょうど1年前。当時岩谷麻優が保持していたIWGP女子王座に挑戦する直前だった。惜しくも王座奪取はならなかったものの、H.A.T.E.に加入してから黒のコスチュームにしていた渡辺が、白のコスチュームを身に着けたことも話題になった試合だ。

「“白”って気合いが入るし、身が引き締まるというか、ベビーに戻ることはまったく考えてなかったよ。ただ、白と金の組み合わせがカッコいいと思ってね（笑）。まあ、勝負服的な感じだよ、いつも黒だから真逆の白で。気持ち的にはまったく白くなかった(笑)。白（のコスチューム）はデビュー直後以来だったかな。岩谷が辞めるのは会見で知って「スターダムでやることがなくなって辞める」って言っていたんだけど、岩谷には勝ち逃げされて、いやいやこっちはまだやりたいし、やり残していることはあるんだよと。引退したわけではないし、あと“家出”って言っているから、帰ってくる可能性もあるんじゃないの？と勝手に思っているよ」

　今年のスターダムの夏は、渡辺桃の夏となった。真夏の最強選手を決める『5★STAR GP』において、史上最多となる32人の参加選手がいる中、見事優勝を果たした
。
「出場選手が発表になったときに『9回目』って出て、ああ自分が最多なんだなと思っちゃって。スターダムのほぼ全選手が出る中で、私が一番上に立つしかないなという思いはあったよね。朱里や舞華には過去の5★STARで負けているんだけど、彼女たちが欠場していたのも、一番上に立たないといけないという気持ちになった理由でもある。なんか“待望論”っていう言葉の響きが嫌なんだよね。（待望論自体は）嬉しいんだよ、でもずっと優勝できない人、タイトルを獲れない人というイメージがあるからさ、ちょっとムカついてはいたよね」

　今回の5★STARで渡辺桃のプロレス史に初登場したレスラーがいる。今でこそ拒絶反応が減ってきたものの、渡辺との初対決時には大ブーイングを浴びたSareeeだ。Sareeeは記者会見で渡辺桃と同ブロックになったことを受けて「まともに戦えるのは桃しかいない」と発言していた。

「他団体で色々なベルトを獲っているので気にはなっていたよ、強いしヤバいんだろうなって(笑)。まあ、ああいう風に言われて本音としては嬉しかったし、同じ気持ちだったのかなと。（7.24後楽園の6人タッグでの初対決は）Sareeeが嫌われているのか、私が応援されているのかどっちなんだろうと思ったけど、Sareeeが嫌われすぎていたよね。（当たって見て）打撃は痛いし強いけれども、いけなくはないと思ったね。エルボーも意外と耐えられるし、私の蹴りで対抗できるなと」

　渡辺はSareeeに公式戦では苦渋を舐めたものの、決勝トーナメントでは雪辱を果たした。
「（8.16横浜の公式戦は）全部出し切る前に終わっちゃったね。自分のペースに持っていくことができなかったかな。だから2回目（の8.20後楽園の決勝トーナメント）は絶対に倒さないといけないと思っていた。なんかSareeeはスターダムの話題性に乗っかりに来ているのは感じていて、実際今のスターダムは話題にもなっているしオイシイのかもしれないけどね」

　その渡辺に対し「ライバルになりたい」と発言した選手が現れた。“絶対不屈彼女”安納サオリである。

（14日掲載の後編へ続く）