「今乗らないと一生乗れない」 サラリーマンの決心、3100万円愛車に驚愕 バンドマンが髪を黒くして就職…夢を実現

普通の会社員がかなえた夢、それは子どもの頃にあこがれた、「スーパーカーに乗ること」だった。東北地方に住む58歳のルイさんが乗るのは、英国メーカーの超が付くほどの高級車。価格は3100万円というから驚きだ。大企業のオーナーでも資産家でもない。製造業の会社に勤務する、いわゆる「勤め人」だ。“サラリーマン・ドリーム”にはどんな愛車物語があるのか。

サラリーマンオーナーの愛車はマクラーレン600LT スパイダー【写真:ENCOUNT編集部】
サラリーマンオーナーの愛車はマクラーレン600LT スパイダー【写真:ENCOUNT編集部】

【愛車拝見#332】R32型GT-Rは「今も持っています」 原点は『サーキットの狼』

 普通の会社員がかなえた夢、それは子どもの頃にあこがれた、「スーパーカーに乗ること」だった。東北地方に住む58歳のルイさんが乗るのは、英国メーカーの超が付くほどの高級車。価格は3100万円というから驚きだ。大企業のオーナーでも資産家でもない。製造業の会社に勤務する、いわゆる「勤め人」だ。“サラリーマン・ドリーム”にはどんな愛車物語があるのか。

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 マクラーレン600LT スパイダー。鮮烈なブルーの車体が印象的なスーパーカーだ。「誰が乗っても圧倒的に、びっくりするぐらい速い。それが魅力です。カーボン製のモノコック構造で、軽量化が図られて重量は約1.3トン。もともとレーシングカーのブランドですからね」。ほれぼれした表情を浮かべる。

 幼少期にスポーツカーに魅了された。「小学生の頃、『サーキットの狼』という漫画がちょうどはやっていたんです。当時、ランボルギーニやフェラーリ、ポルシェにあこがれて。でも、日本車とあまりにも違うデザインなので、『架空の車なんだ』と思い込んでいました(笑)」。子ども心に「こんな車があるんだ」とワクワクしたスーパーカー。しかし同時に、「大金持ちや大企業の社長など、限られた人しか乗れない車だと思っていたんです」と振り返る。

 社会人になってからもクルマ好きは変わらず、ブルーバードに始まり、スカイラインGT-R(R32型)を購入。「20代の時に新車で。今も持っていますよ」と愛着を語る。

 その後、エボVIIにも乗り、会社で役職が上がるにつれてクラウンに乗り換えたこともあった。50代を迎えてある日、ふと思った。「50代を過ぎると、視力が落ちたり、運動神経が鈍くなったりして、スーパーカーを運転するにしても大変になるかもしれない。今がチャンスだと思ったんです。『今乗らないと、一生乗れない』って」。

 決意したルイさん。人生設計と金銭面の負担を突き合わせながら熟考を重ねた。「頭金はどれぐらいあるのか、ローンをいくらで組めるのか。毎日カーセンサーを見まくりました」。53歳の時に初めてマクラーレンを購入した。スポーツシリーズの540Cだ。1590万円。大奮発だった。

 約4年乗って、さらなる“人生の買い物”をすることになる。現在の600LT スパイダーとの運命的な出会いが訪れた。「この色とオープンカーがどうしても欲しくなったんです。ディーラーは東京にあるのですが、ちょっと東京に用事があって立ち寄った際に、中古でこのモデルが出ていたんです」。せっかくだからと実車を見せてもらったら、体中に電流が走った。「『ローン通りますか?』と聞いたら、『通ります』と言われたので、『じゃあ買います』と。その日に契約しちゃいました」。即決だった。価格は3100万円。540Cを下取りに出し、頭金700万円を用意。スーパーカー乗りとしてさらにアクセルを踏み込んだ。

 真面目にコツコツ仕事にまい進して、現在は役員を務めている。理想が現実に。しかしながら、会社員がスーパーカーは“夢物語”にも聞こえる。「自分も若い頃は『どういう人が乗っているんだろう?』と不思議に思っていました。でも、周りに普通の人でもスーパーカーに乗っている人がいたんです。大工さんとか、20代の会社員でフェラーリやアウディに乗っている人もいて。俺もひょっとしたら乗れるんじゃないか……。ちょっと勘違いしちゃったかもしれません(笑)。でも、気持ちがどれぐらいあるかということだと思います。どの車種を買うか、何年式のものを買うかにもよりますが、お金の計算をしてちゃんと計画すれば、頑張ればスーパーカーは買えます」と実感を込める。

 もちろん、趣味に大金をつぎ込むのは、家族の理解を得ることも大事になる。ルイさん自身、最初にマクラーレン540Cを購入した際は、父親には黙っていた。「ある日、オヤジがクラウンをこすってしまって、申し訳なさそうに報告してきたんです。そのタイミングで、『実は俺も、ちょっと違う車を買ってみたんだ』と伝えたんです。『いくらしたんだ?』と聞かれたので、『中古で1600万くらい』と答えました(笑)」。父親は驚きながらも理解を示してくれたという。

「1点だけ注意することがあります」

 フェラーリやランボルギーニという選択肢もあっただろう。なぜ、マクラーレンを選んだのか。「東北だと、乗っている人が圧倒的に少ないんです。イベントに行っても、ランボルギーニやフェラーリはそこそこいるけど、マクラーレンはほぼ自分1台。派手なカスタムをしなくても目立ちます」。まさに自慢の1台だ。

 マクラーレンを所有することで、人脈も広がった。「やっぱり経営者の方が圧倒的に多いですね。休みの日に何台か集まってツーリングに行ったり、ランチに行ったり」。仕事の深い話まではしないが、見聞きするライフスタイルや物事の考え方から学ぶことも多いという。

 ただ、スーパーカー乗りの苦労も身に染みている。「維持費がまたハンパないんです。整備代や部品代が、国産車とは桁が違います」。それでも、「嫌なことがあっても、ちょっとこれで走ってくると、それだけで吹っ飛ぶんです」。かけがえのない相棒だ。

 アイドルグループ『FRUITS ZIPPER』のファンでもあり、学生時代はヘビーメタル系ロックバンドでギターを担当していたというルイさん。大学3年の冬に髪を切って黒く染めて就職活動をして、新卒で現在の会社に入った。「音楽の才能はなかったんです」と笑いながらも、役員にまで駆け上がった。「運がよかったんですよ」と謙遜するが、夢をあきめずに前向きに生きる姿勢が、華のカーライフに結び付いている。

 追い続けてきた少年時代の夢。「どんなことでもいいから、自分の楽しみを持つことは大事だなと思っています。スーパーカーに関しては、乗ると楽しいんです。本当にそれだけで。生活を無理なく送れるようにお金の計算をしっかりすれば、けっこう誰でも乗ることができると思います。一括はとても無理ですが。ただし、1点だけ注意することがあります。買った後の維持費がかかります。そこは大変です」。さわやかな笑顔で結んだ。

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