競馬舞台の日曜劇場、実現まで足掛け5年 “使命”で動いたプロデューサーの情熱…父の死で気付いた「継承」
俳優の妻夫木聡が主演を務めるTBS系連続ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜午後9時)が12日からスタートする。放送を前に、加藤章一プロデューサーがインタビューに応じ、本作が実現するまでの経緯のほか、JRA(日本中央競馬会)はじめ競馬関係者が協力した撮影の舞台裏、見どころについて語った。

12日スタートの『ザ・ロイヤルファミリー』 武豊騎手の演技絶賛「自然でお上手でした」
俳優の妻夫木聡が主演を務めるTBS系連続ドラマ『ザ・ロイヤルファミリー』(日曜午後9時)が12日からスタートする。放送を前に、加藤章一プロデューサーがインタビューに応じ、本作が実現するまでの経緯のほか、JRA(日本中央競馬会)はじめ競馬関係者が協力した撮影の舞台裏、見どころについて語った。
BMW、ベンツにプジョー…人気女優の“多国籍”な歴代愛車(JAF Mate Onlineへ)
日曜劇場枠で放送される本作では、競馬の世界を舞台に、ひたすら夢を追い続けた熱き大人たちが家族や仲間たちとの絆で奇跡を起こしていく、人間と競走馬の20年にわたる壮大なストーリーが描かれる。
妻夫木が演じる主人公は、大手税理士法人に勤める税理士・栗須栄治(くりす・えいじ)。あることをきっかけに挫折を味わい希望を見いだせなくなってしまった中、馬主である山王耕造(さんのう・こうぞう/佐藤浩市)との出会いにより、突然止まってしまった人生が大きく動き出す。
原作は山本周五郎賞を受賞した早見氏の同名小説(新潮社)。加藤氏は本作を通じて「視聴者の方が、山王のように恥ずかしがらずに『俺の夢はこうだ』と人前で語ったり、熱くなれたりできればと思っています」と語り、言葉にも熱がこもる。実は今から6年前、原作が刊行されてすぐの2019年秋頃からドラマ化に向けて動いていた。
加藤氏は刊行されてすぐに原作を読み、競馬の世界を通じたストーリーに感動した。自身はこれまで競馬に触れる機会はほとんどなかったものの、「原作を読んで全く知らない世界について初めて知りました。競馬が題材ということも面白いですし、原作のテーマでもあるように、サラブレットの血が何代にもつながって継承していくことが人間でも同じだなと思いました。その継承の物語は非常にすてきだと思い、すぐに新潮社さんに連絡して早見さんとお会いしました」と当時を振り返った。
19年末には早見氏はじめ関係各所からドラマ化の許諾を取り、JRAからの撮影協力も得ていた。しかし、ほどなくしてコロナ禍に見舞われ、制作が一時中断した。それでもこの間、加藤氏もドラマと重ね合わせる経験を経て、その情熱の火を消すことはなかった。
「父親を数年前に亡くしまして、『何もしてあげられなかった』という思いがあったんです。でも、亡くなる前にこの原作を読んでいたので、親がいないと自分もいないし、何かしら継承しているんだろうなと思えたんです。今回もいろんなホースマンがたくさん出てきては入れ替わっていくように、そして皆さんのお仕事でも後輩が入って来た時に何かを教えたり、後につなげていったりすることが大事ですよね。人と人をつないでいく、つなげていくことが大事なんだと思っています。そういうテーマのある原作をぜひ映像化したいなと思いました」
一昨年、再び本作のために奔走。“使命”にも似た思いを募らせた。ドラマ化に動き始めてから5年、ついに放送までこぎつけた。「足掛け5年かかっていて、ドラマのテーマにある“継承”という意味でも、やめるわけにはいきませんでした。せっかくいい原作があって、これを皆さんに映像化して伝えたいと思っていたので、やっとドラマが実現できてうれしいというよりも、安心しています(笑)」と安どの表情を見せた。

2話にも有名ジョッキー出演「その方もすごく上手でした」
そんな本作では、JRAはじめ馬主、調教師、騎手、生産牧場などさまざまな競馬関係者の協力により撮影が行われている。実際の競馬場でもロケを敢行し、劇中では迫力のあるレースシーンも流れるが、本作の中で描くことが難しい場面の一つだった。
「撮影でやれることとやれないことがありました」とさまざまな制約があったとした上で、「競馬のレースで感動するのは、本当のレースを見るのが一番感動するに決まっています。僕らがやらなきゃいけないのは、ドラマの中で見た時に、レースが物語にとってどういう作用をするのか、ということの方が重要でした」とレースシーンの位置付けを説明。
さらに「馬を集めることも結構大変な作業で、今もずっと続いていて大変ですし、面白いところでもあります」と明かし、撮影のために馬は一度しか走れないため、競馬場ではやり直しのできない“一発勝負”だったという。
「今回のレースシーンでは、実際の映像とともにいろんな画を組み合わせて作っています。2話以降のレースも1話とはまた違う視点が入ってきて、毎回同じようなレース映像ではないです。今も苦労していますけど、視聴者の方にストーリーの中でどのようにうまく感動してもらえて、一緒に応援できるようなものを重視しています」
また、第1話のレースシーンでは現役のレジェンド騎手・武豊も本人役で登場する。武の演技について「すっごく上手でした」と驚きを口にして、「普通はアスリートに限らず本人役でカメオ出演される方は芝居をしようとしてしまうんですが、武さんは非常に自然でお上手でしたね。実は、2話でも有名ジョッキーの方が出られるんですけど、その方もすごく上手でした」と騎手たちの演技力を絶賛した。
もっとも競馬が舞台でありながら、「僕らは競馬を全く見ていない人にどのように楽しんでもらおうかと一番に考えてきたので、競馬が分からないとか、興味がなかった方に見ていただくことによって、こういう世界なんだと分かっていただけると思います」と間口の広い作品だとアピールする。そして、競馬ファンにとってもトレーニングセンターや大手牧場の裏側など貴重なシーンが満載だとして、「新たな視点で楽しんでいただけたらと考えています」と語る。
最後に、「エキサイティングな競馬のシーンや胸が熱くなるような場面だけでなく、家族の温かさや仲間との絆、そういう部分も楽しんで見ていただきたいです。日曜劇場らしくいろんな層に楽しんでいただける見どころがたくさん入っていますから、日曜の夜にぜひ見ていただきたいです」と呼びかけた。
猪俣創平
