夢のスーパーカーを中古300万で買えたのに…待っていたのは“維持費地獄” 限界まで「乗りつぶす」
日本を代表するスーパーカーは、若い頃には手が出せず、年齢を重ねてやっと手にした念願の一台。思い切った買い物も、いざ手に入れるとどんどん出費がかさんで……。還暦を過ぎてなお「走りにこだわる」オーナーに、愛車に詰め込んだ思いを聞いた。

【愛車拝見#331】若い頃から憧れも、当時は「全然手が届く状況じゃなかった」
日本を代表するスーパーカーは、若い頃には手が出せず、年齢を重ねてやっと手にした念願の一台。思い切った買い物も、いざ手に入れるとどんどん出費がかさんで……。還暦を過ぎてなお「走りにこだわる」オーナーに、愛車に詰め込んだ思いを聞いた。
61歳の男性オーナー・hiraさんが愛してやまないのは、ホンダの名車NSX-NA1クーペ。10月上旬、福島・浪江町で開催されたカーイベントでは、磨き上げられた車体が存在感を放った。
若い頃から憧れていたNSX。1991年の発売当時は800万円という価格で、「全然手が届く状況じゃなかった」と振り返る。自動車部品メーカーに勤務し、車と共に歩んできた人生。49歳になった2008年、ようやく夢がかなう時が来た。
「ちょっとゆとりも出てきて、中古で安いのも見つけたんです」。購入価格は297万円。新車を買う感覚で手に入れた掘り出し物だった。
ところが、この1台との付き合いは、想像を超える出費との戦いでもあった。「最初はクラッチが壊れて20万円、エアコンが壊れて30万円。『どうしよう』って言いながら直していたら、どんどん故障が出てきちゃって。こうなっちゃうともう病気みたいなものですよね。しまいに感覚がまひしてくるんですよ」と苦笑いを浮かべる。
1回目はガスケット漏れ、2回目は焼き付きで、エンジンはすでに3基目。「ここまでいったらもうエンジンもいっとくか、って。エンジンだけで300万円、総額1000万円くらいはかかってる」。さらに5速から6速へのミッション変更、カムシャフトの追加加工も実施。購入価格を大きく上回る修理費を投じてきた。
徹底的に走りを追求し、イタリア・ブレンボ社製のブレーキに換装し、3.2リッターの新品エンジンを組み込んだ。「静岡の御殿場に住んでるんですけど、御殿場から箱根ってすぐ背中なんですよ。いつも箱根の峠道をビュンビュン走るので、走りにはこだわった」。年に1回は富士スピードウェイの走行会にも参加しているという。
「買った当時のものは、今ではボディーと内装ぐらいかな」と目を細めるが、逆に外観はほぼノーマルの状態を保っている。「外観をいじくるタイプと、中身をいじくるタイプがいるんです。僕の場合は中身。外観をいじって、例えばリアウイングなんかつけちゃうと、峠道で引っかかったりしちゃうでしょ」。見た目の派手さより、アクセルを踏み込んだ時の加速感、コーナーでの安定性に喜びを見いだしている。
普段使いのオデッセイと2台持ち。駐車スペースの確保にも苦労しながら、今は車庫付きの借家に住んでいる。冬にはオデッセイでスキー、夏は海釣りと、アウトドアも楽しむ人生だが、NSXとの時間は何物にも代えがたい。「乗りつぶすか、年齢が先に乗れなくなるか。限界まで乗りたいと思ってます」。若き日の憧れを手に入れた男性は、相棒と共に人生を走り続ける。
