黒崎煌代「ようやく見えてきた」 『ブギウギ』から映画初主演『見はらし世代』へ、23歳の現在地

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年)でヒロインの弟・六郎を演じ、注目を集めた俳優の黒崎煌代(こうだい=23)が映画『見はらし世代』(団塚唯我監督、10月10日公開)で映画初主演を果たした。本作は今年5月の第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出され、世界の舞台を踏んだ黒崎が、作品への思い、撮影秘話、俳優としての原点や今後の目標を率直に明かした。

インタビューに応じた黒崎煌代【写真:ENCOUNT編集部】
インタビューに応じた黒崎煌代【写真:ENCOUNT編集部】

カンヌではハプニングの連続「大変でした」

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』(2023年)でヒロインの弟・六郎を演じ、注目を集めた俳優の黒崎煌代(こうだい=23)が映画『見はらし世代』(団塚唯我監督、10月10日公開)で映画初主演を果たした。本作は今年5月の第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出され、世界の舞台を踏んだ黒崎が、作品への思い、撮影秘話、俳優としての原点や今後の目標を率直に明かした。(取材・文=平辻哲也)

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『ブギウギ』の六郎役でお茶の間に鮮烈な印象を残した黒崎は、23歳の新星。22年に大手芸能事務所・レプロエンタテインメントの30周年記念で開催された役者オーディション「レプロ主役オーディション」に応募し、約5000人の中から選ばれた。映画『さよなら ほやマン』(庄司輝秋監督)では障がいを持つ主人公の弟役でスクリーンデビューし、その後、朝ドラのメインキャストをつかんだ。

「事務所に入って2か月後くらいに『さよなら ほやマン』のオーディションを受けました。撮影は坊主頭で臨んだのですが、その姿のまま次に挑んだのが『ブギウギ』のオーディションでした。なぜ選んでいただけたのかは正直わかりませんが、坊主姿が役のイメージに結びついたのかもしれません。とても幸運だったと思います」と振り返る。

 そのめぐり合わせに導かれるように、初主演映画『見はらし世代』ではカンヌの大舞台に立った。上映後には観客325人からスタンディングオベーションを受けるなど、大きな反響を得た。

「今年1月に撮影して、その数か月後にカンヌが決まったんです。みんな大慌てでした。現地では思わぬハプニングもありました。プロデューサーが倒木でけがをされたり、監督と一緒にロストバゲージしたりと大変でした。ただ、衣装は手荷物に入れていたのでギリギリセーフ。今となっては笑い話です。上映前にフランス語であいさつしたら温かく迎えていただけて、素晴らしい体験になりました」と語る。

 物語は、渋谷で胡蝶蘭の配送運転手として働く青年・蓮が、母の死をきっかけに疎遠になった父や、結婚を控えた姉との関係を見つめ直すというもの。都市の再開発と家族の変化が重なり合う。姉・恵美を演じるのは若手実力派の木竜麻生。父役には遠藤憲一、母役には井川遥が名を連ね、家族の姿を繊細に描き出す。

 主演に抜てきしたのは『さよなら ほやマン』でメイキングを担当した27歳の団塚監督。「監督とは友人関係でしたが、『主演は君だ』と。『僕なの?』と驚きましたけど、もちろん嬉しかったですね」と黒崎は笑顔を見せる。

「蓮は東京という大都市に生きる普通の青年。特別ではないからこそ共感できる。自分の延長線上にいる人物なので、役作りを過度にせず、その場で感じたことを大切にしました」と話し、台本を読んだときには「すごく新しい。監督の過去作も見ていたので、これ以上に何倍も面白くなるんだろうなと思いました」と期待を寄せた。

憧れの俳優を明かした【写真:ENCOUNT編集部】
憧れの俳優を明かした【写真:ENCOUNT編集部】

共演した遠藤憲一は「5秒で緊張が消えるほどオープンな方」

 主人公と自身の関係については「行動すべてが腑に落ちた。疑問なく演じられたのは奇跡的」と語り、「人は色々思っていても言葉にしない。でもリミッターが外れた瞬間に感情があふれる。蓮もそういう人間だと思います」と分析する。

 共演者については「遠藤憲一さんは出会って5秒で緊張が消えるほどオープンな方。木竜さんも以前から見ていた女優さんで、とてもオープンでした。井川遥さんは本当に優しく、ストレスフリーな現場でした」と振り返る。撮影中、渋谷の歩道橋が急に工事で使えなくなるなど、街の変化をリアルに感じたことも印象的だったという。

 兵庫県出身の黒崎は、大学進学を機に上京。映画好きが高じて脚本を書き写すほどだった。「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』がきっかけで英語のセリフを文字に起こしました。やってみると新しい気づきが多かった」と笑う。コロナ禍で時間を持て余していた時に事務所のオーディションを受け、俳優の道へ進んだ。

 珍しい名前「煌代」には両親の思いが込められている。出生当時は「煌」の字が人名に使えず別の字を充てたが、数年後に解禁され家庭裁判所に申請して改名。「両親のこだわりには感謝しています」と話す。

「俳優として生きていきたい」と意欲を示し、憧れの俳優には阿部サダヲや堤真一の名を挙げる。「唯一無二の存在に惹かれます」と目標を明かす。

 映画タイトル『見はらし世代』については「街を見はらす、人を見はらす、まずは見はらしてみようという意味合いだと思う」と自身の解釈を語った。主演としての実感はまだないというが、家族の物語を背負い、世界の舞台を踏んだ若き俳優。その歩みは、まさに“見晴らし”のいい未来へと続いていく。

□黒崎煌代(くろさき・こうだい)2002年4月19日生まれ。兵庫県出身。22年にレプロエンタテインメントの30周年記念で開催された役者オーディション「レプロ主役オーディション」に応募し、全くの演技未経験ながら約5000人の難関を突破。同年、NHK連続テレビ小説『ブギウギ』のオーディションでヒロインの弟役を勝ち取り俳優デビュー。映画『さよなら ほやマン』(庄司輝秋監督)でスクリーンデビューを果たし、日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した。

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