日韓“二刀流”大谷亮平が語る積み重ねの歩み 外国語での演技「完璧じゃなくていい」

天才浮世絵師・葛飾北斎の娘として生きた女性絵師・葛飾応為(おうい)の知られざる日々を描いた映画『おーい、応為』(10月17日公開、大森立嗣監督)。主人公・応為(長澤まさみ)が淡い恋心を抱く初五郎を演じたのが、大谷亮平だ。セッションのように演技を積み重ねていく現場は初挑戦だった、と語る。

インタビューに応じた大谷亮平【写真:矢口亨】
インタビューに応じた大谷亮平【写真:矢口亨】

映画『おーい、応為』で主人公・応為が恋心を抱く初五郎役

 天才浮世絵師・葛飾北斎の娘として生きた女性絵師・葛飾応為(おうい)の知られざる日々を描いた映画『おーい、応為』(10月17日公開、大森立嗣監督)。主人公・応為(長澤まさみ)が淡い恋心を抱く初五郎を演じたのが、大谷亮平だ。セッションのように演技を積み重ねていく現場は初挑戦だった、と語る。(取材・文=平辻哲也)

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『おーい、応為』は飯島虚心の『葛飾北斎伝』(岩波文庫刊)と杉浦日向子の『百日紅』(筑摩書房刊)を原作に、江戸時代に数少ない女性絵師として活躍した応為の生き様を描く。長澤が時代劇に本格初挑戦し、永瀬正敏が北斎を演じた。大谷の役は、北斎の門下の実在の人物「魚屋北渓(ととや・ほっけい)」の名前で活躍した初五郎だ。出戻りの応為から好意を寄せられる。

「つかみどころがない役でした。明確な性格づけはされていませんでしたし、自分が誇張して光らせる必要はないと思いました。大森監督からも『役に対するイメージを一度捨てて、色を落としてほしい』と言われたんです。結果、全部が正解で全部が不正解、ゼロになるような感覚で臨みました」と振り返る。

 重要な人物でもあるが、出番は多くない。役者としては「印象を残したい」という衝動が働きがちだが、真逆のアプローチを選んだ。

「見る人が『この人のどこがいいの?』と思うかもしれない。でもそれでいい」。そこには、演技における新たな挑戦だった。現場はセッションのようだったという。大森監督の要求は「生の感情を出す」ことだった。

「『言いたくなければ、セリフを言わなくていい』とまで言われました。大事なセリフも意味を決めず、その場で感じたまま言えばいい、と。リスクはありましたが、こんな現場は初めてで面白い経験でした。一つの挑戦でもありました」

韓国作品にも出演する日韓の“二刀流”【写真:矢口亨】
韓国作品にも出演する日韓の“二刀流”【写真:矢口亨】

異国での演技は「当たり前」の積み重ね

 大谷は日本でモデルとして活動したのち、2003年に単身韓国に渡り、CM出演をきっかけに俳優としてのキャリアをスタートさせた。言葉も通じない異国で演技を続けることは大きな壁だったが、本人にとっては「挑戦」という特別な意識よりも「当たり前」の積み重ねだったという。

「周りから見れば挑戦に見えるかもしれませんが、『挑戦しよう』と特別に意識することは少なく、結果的にそうなったという感じです」と語る。

 韓国時代には言葉が十分に通じないまま現場に立つ日々が続いたが、その分、「完璧を求めたことはなかった」と振り返る。むしろ「外国語で演技するなら完璧じゃなくていい」と思えたからこそ、ストレスを感じずに取り組むことができたという。その後は逆輸入の形で日本のエンタメ界で活躍する一方、韓国作品にも出演。そんな日韓の“二刀流”は、自然な成り行きで培われた。

 完成した映画については「親子の生き様の話だと思いました。反発し合いながらも似た者同士という滑稽さもあった。見た人がどう感じるかは自由で、こちらから『どう思いましたか?』と聞きたくなる映画です。不思議な作品でした」と語る。

 北斎は90歳まで筆をとり続けたと伝わるが、大谷自身も「今の気持ちが続いてくれれば」と俳優としての未来を語る。「俳優は70歳でも現役でいられる仕事。年齢による変化も楽しめる仕事だと思います。60歳になった時には今と違う楽しみ方ができるはず。その時も楽しんでやっていたいです」。

 大谷自身も「挑戦」を特別視せず、日々の積み重ねとして受け止めてきた。つかみどころのない初五郎を「色を落として」演じた経験は、新たな挑戦の一つとなった。

□大谷亮平(おおたに・りょうへい)1980年10月1日生まれ、大阪府出身。身長180センチ、O型。モデルとして活動を始めた後、2003年に韓国のCM出演を機に韓国で俳優デビュー。シチュエーション・コメディー『ソウルメイト』を皮切りに、映画『神弓-KAMIYUMI-』『バトル・オーシャン 海上決戦』など数々の話題作に出演。14年にはドラマ『朝鮮ガンマン』で「ソウルドラマアワード」グローバル俳優賞を受賞するなど、韓国で確固たる地位を築いた。16年からは日本での活動を本格化し、テレビドラマや映画に幅広く出演。特技はバレーボールと乗馬、日本語と韓国語を自在に操る国際派俳優として注目を集めている。

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