『プレバト!!』2連覇の46歳俳優、父なき幼少期を告白…松田悟志「うそをつき続け」 理解者の玉三郎から受けた“果たし状”
俳優の松田悟志(46)が、今月4日から東京・新橋演舞場で上演中の舞台『星列車で行こう』に出演している。同作は、夜空を駆ける“幻の列車”を舞台に人生の岐路に立つ人々が出会い、自分と向き合いながら希望を見出していく姿を描いたオリジナルストーリー。主演をIMP.のリーダー・影山拓也が務め、脚本は小説家の真山仁氏、演出・補綴(ほひつ)は歌舞伎俳優の坂東玉三郎が手がける。初演は2024年に京都・南座と名古屋・御園座で上演。ENCOUNTは、2年連続で出演する松田に同作への思いや玉三郎との関係性、自身の歩みなどを聞いた。

上演中の舞台『星列車で行こう』に出演
俳優の松田悟志(46)が、今月4日から東京・新橋演舞場で上演中の舞台『星列車で行こう』に出演している。同作は、夜空を駆ける“幻の列車”を舞台に人生の岐路に立つ人々が出会い、自分と向き合いながら希望を見出していく姿を描いたオリジナルストーリー。主演をIMP.のリーダー・影山拓也が務め、脚本は小説家の真山仁氏、演出・補綴(ほひつ)は歌舞伎俳優の坂東玉三郎が手がける。初演は2024年に京都・南座と名古屋・御園座で上演。ENCOUNTは、2年連続で出演する松田に同作への思いや玉三郎との関係性、自身の歩みなどを聞いた。(取材・文=コティマム)
BMW、ベンツにプジョー…人気女優の“多国籍”な歴代愛車(JAF Mate Onlineへ)
松田は京都芸術短期大在学中の20歳の時に、ジュノン・スーパーボーイ・コンテストに出場した。その後、三池崇史監督によるWOWOWドラマ『天然少女萬NEXT 横浜百夜篇』で俳優デビュー。テレビ朝日系『仮面ライダー龍騎』で演じた秋山蓮/仮面ライダーナイト役で注目を集めた。美術短大出身だけあって絵画が得意で、MBS・TBS系『プレバト!!』の企画「水彩画」コンクールでは2連覇を達成。また、自叙伝小説『仮面ライダーのなり方 ~嘘つきで泣き虫だった僕がナイトになるまで~』を執筆するなど、多彩な活動をしている。
そんな松田が演じるのは、お金を稼ぐために闇バイトに手を出し逃げてきた次郎。幻の星列車の中で、何不自由ない生活を送りながらも悩みを抱える青年の太郎(影山)と、歌舞伎俳優を目指す五郎(松村龍之介)に出会う。3人は互いの思いを聞きながら自分自身と向き合っていく。松田は次郎という役柄について、自身の人生と重なる部分があると語った。
――次郎はお金持ちに憧れながらも闇バイトに手を出してしまい、乱暴な部分もある役柄です。『星列車で行こう』では太郎、次郎、五郎が夢を見つけるために列車に乗り、自分と向き合っていきます。松田さんの人生の中で、自分の心と向き合った瞬間はありましたか。
「そういう意味では、いろんなことがありました。僕には父親がいないのですが、小学生時代は、“父親がいない”ということを友達に隠していたんです。だから、小学校は“うそをつき続けた人生”で、本当に苦しい6年間でした。その時に僕が吐いた細かいうそはどうしようもないもので、自分の中では本当に恥ずべき過去です。そういう人生を歩んできた自分が今、俳優をやっています」
――そのうそは、「父親がいないこと」で仲間外れにされる恐怖があったからですか。
「いじめられることへの恐怖心はなかったのですが、『人と違うこと』に対する恐怖心がありました。当時は、父親がいない家庭が学年にもう1人くらいしかいなかったので。東京に出てきてからも、『父性本能が欠けているんだね』と何気なしに言われたことがあって、『自分は父性という本能が欠けているのかもしれない』と、とんでもない恐怖心が生まれて何年間も悩みました。『父親を尊敬しています』と胸を張って言っている人に腹を立てたこともありますし、けんかもよくしたし。自分には大きな欠陥があると思っていたので、それを知られたくなかった。玉三郎さんは、僕がどういう人間かを分かってくださっていて、僕の話を次郎に盛り込んでくださっているんだと思います」
――玉三郎さんとは、『星列車で行こう』以前から共演されています。
「13年前に舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』や『日本橋』でご一緒してから、食事に何度も行かせていただきました。その時に僕は包み隠さず、幼少期や学生時代の話をしました。『僕には胸を張って言えるような10代の記憶はないです』と。だから、逆に次郎という“寂しさがとげになってしまっている役”は、『あなたならできるだろう』という玉三郎さんからのある種の“果たし状”なんです。初演時も、『大丈夫。あなたはできる。これができない人間だとは思っていません』と、ものすごいプレッシャーがありました」
――松田さんの過去を知っているからこその期待ですね。
「初演の南座の初日が明けるまでは、(プレッシャーで)地獄のような日々で、稽古を楽しいと思ったことは1回もなかったですね。『そんな出来でこの舞台に立てると思っているの』と厳しくご指導いただきました。玉三郎さんは、プライベートはすごく優しくて素敵な方で、いろんなことを気にかけてくださいます。でも、ひとたび演技や芸のことになると、もう本当に文字通り“鬼”なので。共演のみんなで“鬼舞辻無惨”(『鬼滅の刃』に登場する鬼の首魁)に挑んでいるような感じです(笑)。舞台が始まってからも、『これでいいんだと思った瞬間に、松田は終わりだから』と何度も言われました」
――俳優を続けることで、過去の自分や恐怖心は解消できたのでしょうか。
「解消されなかったから、40歳の節目に自叙伝小説を書いたんです。僕は体格も大きいし、『仮面ライダー』もやっていたから、『子どもの時から正義感にあふれて強い人だったんでしょう』と言っていただくことが多かった。でも、『全くそんなことないのに』と思っていたんですよ。だから、40歳を機に、『自分はこういう人間なんです』と開示したんです」
――小説によって気持ちは整理できましたか。
「何よりも僕の考え方が大きく変わりました。昔は傷を隠して、『順風満帆でうまくいっている人間』に見せる方がいいと思っていました。でもある時期から、みんなと変わらないどころかマイナスなところにいたようなやつが、『一生懸命俳優になって、努力をして今の位置にいるんだ』という本当の姿をお見せした方が、誰かの力になれるんじゃないかと。もっと正直に生きようと思って」

小説も執筆…「楽屋に入ったら俳優業に集中」
――小説だけでなく、絵画もTBS系『プレバト!!』で優勝するなど活躍されています。俳優業と並行してどのようにして取り組まれているのですか。
「絵は好きで描いていましたが、今は求められるものがプロレベル、セミプロレベルになっています。そうなると片手間では絶対に描けないので、時間もしっかりとって集中しています。絵を描く時は絵以外のことは一切考えないです。小説は移動中に書くことが多くて、今日もここに来るまでの途中に書いていました。楽屋に入ったら俳優業に集中するので、楽屋で絵や小説に取り組むことはしません」
――いろいろな顔を持っていますね。
「僕はよく、“戸建ての家のカタログハウス”を例に説明しています。リビングにある一番大きい窓が俳優で、その次に大きな部屋の窓が小説や絵や歌だったりする。いくつかの窓があるけど、家の中は一緒なんですよね。“どこから顔を出すか”という感覚でやっています」
――最後に『星列車で行こう』を楽しみにしている方々へメッセージを。
「この『星列車で行こう』は、夢なんてないと思っている若者が、最終的に夢を見つけて列車を降りていく話。誰かの背中を強く押す作品です。1人でも多くの方に見ていただきたいです」
□松田悟志(まつだ・さとし) 1978年12月16日、大阪府生まれ。99年、ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト出場を機に、京都芸術短期大在学中に三池崇史監督のWOWOWドラマ『天然少女萬NEXT 横浜百夜篇』で俳優デビュー。2002年、テレビ朝日系『仮面ライダー龍騎』で演じた秋山蓮/仮面ライダーナイト役で注目を集める。主な出演作に、日本テレビ系『ごくせん』、テレビ東京系『ケータイ捜査官7』、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、NHK連続テレビ小説『てっぱん』など。MBS・TBS系『プレバト!!』の企画「水彩画」コンクールでは、2連覇を達成。NHK講座『大人の塗り絵』では講師を務めている。
