主演映画ラッシュ 26歳・水上恒司が語る覚悟と等身大の思い「主演でも立場は関係ない」
俳優の水上恒司が、10月6日からスタートするテレビ東京系連続ドラマ『シナントロープ』(月曜午後11時6分)で主演を務める。アニメ『オッドタクシー』の脚本で知られる此元和津也氏が手掛ける完全オリジナルの群像ミステリー。今年は主演映画ラッシュとなった水上が、なぜ同作の主演を決めたのか。

連続ドラマ『シナントロープ』で主演
俳優の水上恒司が、10月6日からスタートするテレビ東京系連続ドラマ『シナントロープ』(月曜午後11時6分)で主演を務める。アニメ『オッドタクシー』の脚本で知られる此元和津也氏が手掛ける完全オリジナルの群像ミステリー。今年は主演映画ラッシュとなった水上が、なぜ同作の主演を決めたのか。(取材・文=平辻哲也)
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映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で特攻隊員役を演じ、日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞した水上。切なくも力強い演技で観客の心をつかみ、若手俳優の中でも頭1つ抜けた存在となった。今年は『九龍ジェネリックロマンス』(8月29日公開)、『火喰鳥を、喰う』(10月3日公開)、『WIND BREAKER/ウィンドブレイカー』(12月5日公開)と3本の主演映画が相次ぐ。
「撮影自体は一昨年から昨年にかけて順番にやっていたもので、公開時期が重なった結果です。すべて違う顔を見せられる作品なので楽しんでほしいです」と冷静に語る。
そんな26歳の水上が次に挑む『シナントロープ』の舞台は街の小さなバーガーショップ。そこに集う若者たちが、友情や恋愛、夢や欲望、裏切りや罪といった現実に直面しながら、選択と葛藤を繰り返していく群像ミステリー。原作・脚本は此元氏、演出はドラマ『忘却のサチコ』など映像美とユーモアの融合に定評がある山岸聖太監督が手掛ける。
物語の中心となるのが、水上演じる大学生・都成剣之介。大学生活につまずき、未来を切り開こうともがきながらも、過去の出来事に縛られ、同時にそれを誇りとして抱える青年だ。「自分の力で切り開こうとする姿勢に共感できる人は多いと思います。けれども能動的に生きることが必ずしも正解ではありません。そのリスクや痛みも含めて描かれていると思います」と役柄への思いを語る。
今回のドラマは、オファーを受けた時点で脚本がすでに全話完成していた。「これまで連続ドラマでは最後まで台本がそろっていないことが多かったです。世の中の反応を見ながら変えていくのも面白いですが、役者としては難しい部分もあります。今回のように最初から脚本があると、撮影前からワクワクしました」と振り返る。映画の現場に近い環境が、水上の役作りに新鮮な刺激をもたらした。
剣之介は「主人公らしくない主人公」として描かれる。「正義感や真っすぐさを持ち味にしてきましたが、弱さや頼りなさを抱えた役も好きです。今回もコメディー要素がありますが、笑いを前面に出すのではなく、シュールな笑いとして成立するように演じています」と新たな挑戦に手応えを語る。

『シナントロープ』には同世代の実力派俳優が集結
主演=座長という立場についても、力む様子はない。「特にありません。主演作が増えてきましたが、立場がどこであれやることは同じです。芝居と向き合い、共演者やスタッフとの化学反応を柔軟に起こすことに徹しています」と冷静に話す。大仰に構えない姿勢こそ、座長としての存在感につながっている。
一方、主人公同様、「自分には何もない」と感じた時期があったことも率直に明かす。「でも0ではないことも心のどこかで分かっていました。家族や祖父母からの愛情のおかげで、そう感じられる心を育ててもらえたと思います。惨めな気持ちになる時期は大事で、どん底を経験することでしか得られないものがあります。今も日によっては心が折れそうになることもありますが、それも糧になると思っています」と真摯に語った。弱さを隠さず表現する言葉には、役者としての成長と人間的な実感がにじむ。
『シナントロープ』には山田杏奈、坂東龍汰、影山優佳、望月歩、鳴海唯、萩原護、高橋侃ら同世代の実力派俳優が集結している。水上は「若者なりの苦しさがそれぞれの役のバックボーンにあり、それが芝居や編集に反映されています。同世代には共感や勇気を、上の世代には若者の現実を知るきっかけになると思います」と作品への期待を語る。26歳を迎えた彼が次のステージへどう進んでいくのか、『シナントロープ』はその試金石となりそうだ。
連続ドラマ『シナントロープ』は10月6日午後11時6分より放送開始。各話放送終了後にはPrime Videoで独占配信される。
□水上恒司(みずかみ・こうし)1999年5月12日生まれ、福岡県出身。2018年『中学聖日記』で俳優デビューし、ドラマアカデミー賞助演男優賞を受賞。19年に『博多弁の女の子はかわいいと思いませんか?』でドラマ初主演。20年には映画『望み』『弥生、三月-君を愛した30年-』『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』に出演し、日本アカデミー賞新人俳優賞などを受賞した。21年『青天を衝け』、22年には阿部サダヲと共演した映画『死刑にいたる病』でW主演。23年『ブギウギ』に出演し、映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』で日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞。24年は『熱のあとに』『八犬伝』『本心』などに出演し、25年は『九龍ジェネリックロマンス』『火喰鳥を、喰う』が公開。12月には主演映画『WIND BREAKER』の公開を控える。
