【あんぱん】続いた高視聴率、制作統括が語る意外な好調の背景「親子で見てくださる方が本当に多かった」
NHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の制作統括・倉崎憲氏がENCOUNTの単独取材に応じ、倉崎氏が感じた主人公・のぶを演じた今田美桜と夫・嵩を演じた北村匠海の魅力を語った。また、平均世帯視聴率も高視聴率を記録し続け、(ビデオリサーチの調べでは期間平均世帯視聴率16.1%、個人10.0%)多くの人に親しまれてきた背景・要因も語った。

高視聴率の背景に普遍的な刺さるセリフ、キャストの力、スタッフの熱量
NHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の制作統括・倉崎憲氏がENCOUNTの単独取材に応じ、倉崎氏が感じた主人公・のぶを演じた今田美桜と夫・嵩を演じた北村匠海の魅力を語った。また、平均世帯視聴率も高視聴率を記録し続け、(ビデオリサーチの調べでは期間平均世帯視聴率16.1%、個人10.0%)多くの人に親しまれてきた背景・要因も語った。
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まずは高視聴率を記録し、多くの視聴者に支持された要因をどう分析しているのか。尋ねる前に「脚本家・中園ミホさんのセリフはどの世代にもどんなバックグラウンドを持つ人にも普遍的。視聴者に刺さってくれたのではないか」と評価の声があったが…。
「そして何よりもキャストの皆さんの力だと思います。放送100年でもあり、戦後80年に放送される『あんぱん』のテーマに共感してくださり、多くの豪華な方に集まっていただきました。それぞれのキャラクターを出演者のみなさんが熱量もって最大限の力を発揮してくださり、スタッフの熱量も相まって世の中に届く力になったと思います」
他にも意外な背景が…。
「あとは『アンパンマン』の力ですね。今作は例年よりリアル空間のイベントを多く行っていますが、直接、来場者から作品の感想を聞かせていただくと、ネットだけでは分からないことが判明しました。親子で見てくださる方が本当に多かったんです。小学生が朝7時30分開始のNHKBSで観たり、録画して学校から帰ってから親と一緒に見ていると。『アンパンマン』誕生までの話に家族で興味を持っていただいている。あるいは登場人物ののぶがドキンちゃん、蘭子がロールパンナちゃんとか裏設定も含めて楽しんでくださっている声をたくさんいただきました」
今田と北村の魅力を制作統括の立場からどう感じているのかも尋ねた。
「今田さんについてはクランクアップの時にヒロインオーディションのことを思い出しました。最終オーディションの時、とあるシーンを演じてもらうため台本を渡しましたが、素晴らしいのは読解力があるところ。全26週で戦前、戦中、戦後を描いていく中で、時代、その週、そのシーンごとにのぶの心情を本当に的確にとらえて演じてくれました。それはとても難しいことなんです。1年間の撮影、半年間放送する作品においてはとても大事なスキル。なによりも、日本の朝を明るくしてくれたと思います」
北村はどうだろう。
「北村さんのクランクイン前日のことを思い出しました。昨年9月7日が全体のクランクインでしたが、北村さんは、自分は出番はないけど子役の嵩の芝居を見に来ていて、もうその時から嵩になりきっていました。イン前から10代から最終的に演じる70代までのプランニングを当初からしていました。モデルのやなせたかしさんはきっとこんな10代だっただろうと思わせる様子。コンプレックスまみれの若い時代を、歩き方一つとっても表現していました。その時、北村さんと話したのは、朝ドラは長いので、どのタイミングで嵩が変化していき、皆さんが認知している晩年のやなせさんに近づけていくかという話。だから10代はこんな感じがいいかなと話したのを記憶しています。トータルを見据えられ、逆算して役作りをできる方だと思いました」
トータルを見据え逆算して役作りするには相当な研究も必要なはず。
「やなせさんの書籍、過去のインタビュー番組や取材先での秘蔵資料とか、今田さんも北村さんもやなせスタジオにも実際に行き、やなせ夫妻に少しでも触れる努力をしていました。お2人とも努力の人だともすごく感じます」
妻夫木聡、阿部サダヲ、大森元貴ら大勢の豪華キャストがそろい、脚本家・中園ミホさんは倉崎氏のキャスティング力を絶賛していた。秘策でもあったのか。
「放送100年という歴史の重みに賛同してくださる方もいますし、戦後80年ということで朝ドラを通じて二度と戦争が起きない世の中になるよう願いを込める思いに賛同してくれた方もいます。あとは主軸の今田さん、北村さん2人ならと出演してくださった方も。私がキャスティングする時に心掛けていた一つは感謝の気持ち。今回、ご出演された方には昔、お世話になった方も多く、阿部さんは私が新人時代に携わった12年の大河ドラマ『平清盛』に出演されていて、ど新人の私にさえ優しくしてくださいました。阿部さんは誰に対してもフラットに接してくださいます。いつか自分がプロデューサーになったら阿部さんとご一緒したいと願っていたので、今回の企画が固まる前から阿部さんの事務所の方にはご一緒したいとお伝えしていました」
妻夫木の場合はどんな背景があったのか。
「私がNHKで演出デビューしたのは入局3年目の13年に放送されたラジオドラマ『世界から猫が消えたなら』です。主演に妻夫木さんにご出演していただき、その時に妻夫木さんと約束したんです。いつか映像でご一緒しましょうと。僕が23年にロサンゼルスに数カ月留学した際、ちょうど妻夫木さんがある映画の仕事でロスに来ていてチャンスだと思って会いに行き、ご出演をお願いしました」
過去のご縁を大切に感謝の気持ちを伝えるだけではない。
「重要なのは本当にほれている俳優に出演していただきたいという思いを素直に伝えること。ほれた相手に自分の思いをシンプルに正面から伝えることを大切にしています。結果、第一希望の方々に出ていただきました。当然ですが、その役がはまるかどうかが大前提。たとえば大森元貴さんもいずみたくさんをモデルにした役で、作曲に相当な理解があり、世の全世代の心に響く音楽を生み出している人の方が、説得力があると思いました。それ以外の皆さんも、その役にちゃんとはまるかを大事にお声がけさせていただきました」
話す言葉には熱い想いとパワーがみなぎっている。倉崎氏の並大抵ではない熱意もキャストの心を動かした大きな要因に違いないと感じる。
