【ばけばけ】制作統括&演出が明かす舞台裏 「普段の朝ドラの数倍のコスト」に見える“こだわり”
俳優・高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)が29日からスタートする。制作統括・橋爪國臣氏と演出・村橋直樹氏が取材に応じ、明治初期を題材に選んだ背景や舞台裏の奮闘ぶりなどを語った。

制作統括と演出が明かす舞台裏…美術と映像技術にすごくこだわり
俳優・高石あかりがヒロイン・松野トキを、トミー・バストウがレフカダ・ヘブンを演じるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』(月~土曜午前8時)が29日からスタートする。制作統括・橋爪國臣氏と演出・村橋直樹氏が取材に応じ、明治初期を題材に選んだ背景や舞台裏の奮闘ぶりなどを語った。
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作品は松江の没落士族の娘で、小泉八雲の妻・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描くオリジナルストーリー。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語をフィクションとして描く。
まず明治初期という時代を選んだ理由から聞いた。
橋爪氏「私は日本には大きな転換点が2つあると思っていて、1つは幕府から明治政府に、もう1つは第二次世界大戦の敗戦。今回、私は、明治時代に今まで信じてきたものが急に変わって混沌としていく様子は現代と似ているという思いがあり、そこにメッセージを仮託できると考えてこの時代を選びました。調べると人々が右往左往する姿はすごく現代と似た動きをしています。今の人に刺さるドラマになると思いました」
村橋氏「ふじきみつ彦さんの台本をこの時代でやることも1つの挑戦だったと思います。結構、しゃべり方が現代的なせりふ回しなど……もちろん時代劇として最低限のことは担保していますが、ふじきさんの良さを消さず、時代劇らしさを残すことは両立しづらい部分でしたので、美術と映像技術にはすごくこだわりました。大阪放送局の制作ではなかなかやれなかったことやりました。映像的に確実に時代劇性を担保することが演出としてもテーマでしたし、ふじきさんの本を殺さないためにも、時代劇の空間ながらも登場人物が現代的にしゃべる姿を違和感のないレベルにすることが挑戦でした」
そこで時代劇性を担保するための奮闘ぶりを聞いてみた。
橋爪氏「ここ5、6年ではこんな大きな時代劇のセットを大阪放送局で作ったのは初めてかもしれません。また、大阪放送局制作の朝ドラとしてはたぶん、初めて大河ドラマで使っているカメラも使っています。VFXも普段の朝ドラの数倍のコストをかけています。きちんと画面の中で時代感、舞台の松江らしさ担保しようとしています。多くの美術、制作スタッフが実際に松江に行って様子を見て肌感覚を持ってセットを作り、撮影に取り組んでいます。時折、挿入される松江の風景もNHKの松江放送局に協力してもらい、ベストなタイミングできれいな夕景などを撮ってもらっています」
村橋氏「松江を1日で20キロぐらい歩きました。途中で古地図を手に入れ、足で歩いて出来上がった映像と物語です」
時代劇を感じる光、照明のこだわりも聞いてみた。
村橋氏「この時代には暗闇があったし、小泉八雲とセツがつながっていた怪談も暗闇への畏怖、見えない物を認めることから生まれてきたと思います。昔の人には自分には手が届かない物があるという感覚があったはず。それを視覚的に表現するため、ちゃんと暗闇を作りましょうということでやっています。つまり、夜のシーンの撮影は基本的にろうそくの灯りをベースに制作しています。現場は真っ暗で俳優も手探りで入ってきて、スタッフも頭をぶつけながら撮影しています」
雨清水タエを演じる北川景子とその夫・傳役の堤真一の起用理由を尋ねた。
橋爪氏「雨清水家は松江の中の名家として描きたいと思っていましたので、説得力のある俳優じゃないと、高貴な人や藩の中で生きていた浮世離れした人を描けないと考えました。キャスティングはそうした雰囲気を出せることを重視し、それができる人として思い浮かんだのは北川景子さんだけでした。タエを温かく見守って包み込んでくれる夫としては堤さんしかいないと考え、お声がけさせていただきました」
村橋氏「大きく変化する時代のうねりの中で揺らぐ人を描きたい思いがある中、2人とも揺らがない軸を持っているように見える方。でも人には見えないけど内で揺らいでいることを表現することにとても長けています。北川さんは大河ドラマ『どうする家康』でお市と茶々を好演していただきましたが、あのたたずまいをもう一度この物語にもお借りしたいと思いました。北川さんが『私がいる時だけ大河ドラマみたいだね』と言っているのが印象的でした」
※高石あかりの「高」の正式表記ははしごだか
