自動車盗難「被害者が蚊帳の外」 11台盗難ホンダ店長が訴え 執行猶予認めない量刑求める

一向に減らない自動車盗難を撲滅させるべく、国民民主党への働きかけが続いている。9月26日には、「車両盗難を厳罰化にする会」のKUN代表が都内で浜口誠政調会長を訪ね、自動車盗難対策要望書を手渡した。昨年8月に11台の車が盗難されたホンダカーズ野崎(栃木・大田原市)の松本正美店長も同席。被害者の立場から課題を挙げ、対策の強化を訴えた。

国民民主・浜口誠氏(左)に要望書と署名を手渡した「車両盗難を厳罰化にする会」のKUN代表(中央)、ホンダカーズ野崎の松本正美店長【写真:ENCOUNT編集部】
国民民主・浜口誠氏(左)に要望書と署名を手渡した「車両盗難を厳罰化にする会」のKUN代表(中央)、ホンダカーズ野崎の松本正美店長【写真:ENCOUNT編集部】

野放し状態の窃盗犯に怒り 厳罰化を要望

 一向に減らない自動車盗難を撲滅させるべく、国民民主党への働きかけが続いている。9月26日には、「車両盗難を厳罰化にする会」のKUN代表が都内で浜口誠政調会長を訪ね、自動車盗難対策要望書を手渡した。昨年8月に11台の車が盗難されたホンダカーズ野崎(栃木・大田原市)の松本正美店長も同席。被害者の立場から課題を挙げ、対策の強化を訴えた。

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「盗難って本当遠いものだと思ってたんですけど、身近になるとこんなに大変だったのかなと」

 参議院会館の議員事務室で、松本さんは切実な表情で思いを伝えた。

 F1全盛期に無限ホンダF1エンジンを設計していた松本さんは、ホンダの有名ディーラーとして知られる。店長に就任し、27年間、盗難被害とは無縁の経営を行っていたが、昨年8月に悪夢に見舞われた。

 深夜に外国人の犯行グループが店の敷地内に侵入。7センチの厚さがあった金庫を破壊され、キーを奪われると、立て続けに車を持ち出された。価格の高い車の前に置いていたガード車はどかされ、総勢7人の手で盗んでは車をどこかへ置きの“ピストン輸送”を繰り返し、11台を盗難された。

 その後、SNSで盗難被害を拡散したところ、協力者が相次ぎ、目撃情報が殺到。すべての車を取り戻すことができたが、受けた影響は想像以上だった。

「現場検証でも朝7時前に盗まれたんですけど、午後3時過ぎまで拘束されて、その後すぐにYouTube作って拡散できて、次の日4台見つかったとかね、ポンポンポンと行ったんですけれども、今思うと被害者が何の情報も得られない。この間、埼玉県警が来て、『7人捕まりました』で終わっちゃって、『その後の公判とかどうなんですか』というお話しても、『連絡するようには伝えますけど、確約までできない』と言われて。被害者が蚊帳の外みたいになってるのが残念なのと、やっぱり技能実習生の問題が非常にあると思います」

 自ら発見した盗難車を回収して運ぶ際に、警察に“犯人”と間違えられたこともあった。

「最後の1台を引き上げに行った時、帰り高速道路で運んでたら、たぶん誰かが通報して、『盗難車とおぼしきものが輸送されてる』ということで、えらい勢いで覆面パトカー2台が来て。珍しい色の車だったんですね。目の前でナンバー照合して、その後何もなかったんで、またぱっと行きましたけどね。SNSの力で発見できたのは事実だし、そういったSNSの情報があったからうちは本当奇跡的に見つかったと思いますけれども、そうなる前に、厳罰化とか被害者の権利保護、あと予防策の強化をお願いしたいなと思っています」

 個別に持参した要望書には、「被害者支援制度整備」を盛り込んだ。同様の被害に遭った他の販売店では、大半が未発見のまま泣き寝入りしている状況があるとし、「全車発見まで正常営業が困難となり、補償負担・信用失墜による損失は計り知れません」と記した。自動車盗難における窃盗犯の量刑は、「執行猶予を原則認めない」のが望ましいと強調した。

「盗難車と知らなかった」では済まされない

「車両盗難を厳罰化にする会」発起人のKUNさんは4万604人分の署名を提出。違法ヤードへの対応強化などを求めた。

 要望書を持参したのは3回目だ。

「昨年おうかがいした時に一番お願いしたのが、ヤード法なんです。ヤードを抑えれば、ほかの税関とか、ああいうところも全部そんなに力を入れなくて済む。中継基地をつぶせば、買い取りもできないし、売ることもできない」と、違法ヤードの規制を訴えた。

「ヤードを罰せられないと、いつまでたっても盗難は減らないと思う。日本人ばかりだったらいいんですけど、外国人のほうが多いので、言葉の問題もある。銅線などの金属盗難もほとんど外国人。売り先はヤード。共通している部分もある。厳罰化とセットでヤード法を作ってほしい」

 自動車盗難は万引きと同じ窃盗罪が適用。量刑が軽いため、盗難防止の抑止力になっていないと批判されている。ヤードは、盗難車が運び込まれ、解体等に利用される。鉄塀に覆われ、人目のつかない場所にあるため、警察の目が届きにくい。県によっては外国人の経営が半数以上を占めるところもある。

「今までだと、『私、盗難車と知らなかった』と言うとだいたいおとがめなし。ちゃんと罰則を、知らなかったでは済みませんよっていうふうにしないと、ヤードがどんどん増えていって、結局、日本での罰則も適用されないとなると、被害者がやられ損なんですよね」

 労働力不足から外国人を積極的に受け入れている日本の問題点を踏まえつつも、すべてを追跡できずに、歯止めが効かない状況になっていると指摘。

「たとえば不法滞在者を一度クリーンにしてから、また人手不足とかそういう問題に対応すればいいと思う。私も外国人の友人がいるので、すべてを悪いとか締め出そうというのではない。きちんと経営しているところは、もうけてもらえればいい。ただ1回整理しないとまずいんじゃないかって」と危機感を口にした。

課題は幅広い省庁の連携「タッグ組みながら」

 元トヨタ自動車社員の浜口氏は、盗難防止策について、「警察だけではなく幅広い省庁と連携しながら、タッグ組みながらやっていかないと防げない。通関であれば水際対策、これは財務省でしっかりやってもらわないといけないですし、あとは国土交通省や経産省ですね。あと、海外に行った車を発見された後戻すとなると、外務省の力も必要。自動車盗難対策推進法というのも議員立法で出ささせていただいているので、ご要望を踏まえて、ブラッシュアップするところはブラッシュアップさせていただきながら対応していきたいなと思っています」と話した。

 7月の参院選で躍進し、KUNさんは「党勢を拡大したので、法案を出しやすくなっている。そのへんも期待したいです」と注目した。

 浜口氏は「我々も政策は幅広く提言させていただいています。経済政策のみならず、自分の国は自分で守るという、大きな政策の柱も打ち立ててやっていますので、日本がより安心して住みやすい、世界からもリスペクトされる国にしていくというのは、すごく重要な要素だと思います。しっかりこういったご意見も受け止めさせていただいている」と応じた。

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