成宮寛貴、12年ぶり舞台出演 演出家・宮本亜門と芸能界デビュー作品以来の25年ぶりタッグ「運命的な巡り合わせ」
俳優の成宮寛貴が、舞台『サド侯爵夫人』で主演を務めることが26日、発表された。演出を務める宮本亜門とは、25年ぶりの再会となる。

三島由紀夫作品『サド侯爵夫人』
俳優の成宮寛貴が、舞台『サド侯爵夫人』で主演を務めることが26日、発表された。演出を務める宮本亜門とは、25年ぶりの再会となる。
本作の原作は、数多くの作品が世界中で愛されている日本文学を代表する作家・三島由紀夫によるもので、人間の心の奥底にひそむ欲望や葛藤を、美しくも残酷な言葉で浮かび上がらせる傑作として有名だ。サド侯爵自身は姿を見せず、その周りを取り巻く女性たちの会話劇で進む物語を、今回はオールメール(全員男性)キャストで描く。
18世紀フランスを舞台に、悪徳の限りを尽くしたサド侯爵を待ち続ける、貞淑な妻・ルネ/サド侯爵夫人役に12年ぶりの舞台出演となる成宮、サン・フォン伯爵夫人役に東出昌大、ルネの妹・アンヌ役に三浦涼介、ルネの友人・シミアーヌ男爵夫人役に大鶴佐助、女中・シャルロット役に首藤康之、そしてルネの母・モントルイユ役を加藤雅也が演じる。
また、本作の演出を手掛けるのは、今までにも舞台『金閣寺』『ライ王のテラス』や、オペラ『金閣寺』『午後の曳航』など、その深い洞察により多くの三島由紀夫作品に次々と息吹を与え、常に高い評価を得ている宮本。そして、主演を務める成宮は、宮本が演出を手掛けた『滅びかけた人類、その愛の本質とは…』で初舞台を踏み芸能界デビューした。本作で25年ぶりの再会となる。
【東京】紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA:2026年1月8日~2月1日
【大阪】森ノ宮ピロティホール:2月5日~8日
【愛知】とよはし芸術劇場:2月13日、14日
【福岡】福岡市民ホール中ホール:2月17日、18日

以下は、出演者らのコメント。
◯成宮寛貴
「再び舞台という“生”の場所に立てることに、静かな高揚を感じています。『サド侯爵夫人』という極限まで研ぎ澄まされた世界の中で、人間の愛と狂気、そして内面にひそむ声をたどっていく時間になると思います。今回、12年ぶりに舞台に挑戦します。三島由紀夫の戯曲に向き合うことは、俳優にとって大きな試練であり喜びでもあります。鋭く精緻(せいち)な言葉に呑み込まれるのではなく、自分の身体と声を通してどう響かせられるか。その覚悟をもっていどみたいと思います。
そして演出を務めてくださるのは、僕が俳優デビューした舞台でもご一緒した宮本亞門さん。あのときから年月を重ね、25年ぶりに再びこのタイミングでタッグを組めることに、運命的な巡り合わせを感じています。俳優という仕事に再び身をゆだねるなかで、今の自分だからこそ触れられる感情や言葉があると信じています。劇場という濃密な空間で、観客の皆さんと同じ時間を生きられることを心から楽しみにしています」
◯東出昌大
「世界の演劇界に燦然(さんぜん)と輝く傑作『サド侯爵夫人』に出演できますことは、私の俳優人生においての誉れ(ほまれ)です。また『豊饒の海』の舞台を共に作り上げた盟友、首藤さん、佐助と再びご一緒出来る喜び。そして、初めてお目見えする宮本亞門さん、加藤さん、成宮さん、三浦さんとの邂逅(かいこう)。全てが楽しみで仕方ありません。十代後半より三島由紀夫作品を愛読して参りました。その後役者になり、舞台『豊饒の海』や映画『三島由紀夫 VS 東大全共闘』などの作品で“三島”に関われる機会に恵まれてきましたが、この令和の世に『サド侯爵夫人』を男性キャストで公演すると聞いた際は、魂の微振動を感知したことを覚えております。絢爛豪華(けんらんごうか)な美文に負けぬ熱演をいたします」
◯三浦涼介
「『サド侯爵夫人』ルネの妹。アンヌ役を演じます。三浦涼介です。三島由紀夫生誕から100年。そのような新たな歴史のスタートにこのような出演のお話をいただき、心より感謝します。宮本亞門さんとの出会いはずっと願っていたことであり、今回初めてお会い出来ること……僕自身とてもうれしく思っています。『サド侯爵夫人』は三島さんの作品の中でも過去に数多くたくさんの方々がこの戯曲の夢をかなえてきたことだと思います。読むごとに新たな発見を与えてくれる三島由紀夫作品ですが、三島さんの文学をどうつむいでゆき自分の身体や咽喉(いんこう)を使いアンヌの言葉を伝えていけるかワクワクしています。出演者男性役者での上演。男性が女性を演じることへの美学やエロスも非常に興味深く、この時代だからこそ一歩も二歩も“前のめり”にこの作品の持つ魅力があふれ出てくるんではないでしょうか。そして舞台という魅力も。僕自身、近年舞台に多く立たせていただいていますが、やはり劇場で生でその全てを目撃していただきたいと心から思います。そこには何のフィルターもなく、その場でお客様と共に作品を作り上げる。お客様が着席されて初めて完成する瞬間があります。そう考えると毎日が初日になるわけですが、ドキドキしますよね。そのドキドキを共にその日を心待ちにしていただけますように。せいいっぱいに心を込めて演じて参ります」
◯大鶴佐助
「サド侯爵については、初め性的倒錯者(とうさくしゃ)としての印象が強かったのですが、宗教や道徳などの固定概念の全面的否定や徹底的な自然主義など、本人の絶対的な美学の上での行いだったことを知り、自分の中で見方が少し変わりました。『サド侯爵夫人』は全編女性の会話劇ですが、女性たちの中に常にサド公爵が存在しているからかなのか、三島由紀夫の美学とサド公爵の美学が似ているからなのか、男性が演じると考えても台詞に違和感を感じませんでした。三島由紀夫作品は『豊饒の海』以来ですが、戯曲を演じるのは初めてですので、三島の書いたせりふをどう立ち上げていくか今から楽しみです」
◯首藤康之
「今回、宮本亞門さん演出舞台『サド侯爵夫人』に関わる事ができることをうれしく思います。私のキャリアはフランス人振付家モーリス・ベジャールさんが三島由紀夫さんをモチーフに創作した作品『M』からはじまりました。いまだミステリアスかつ不可解なことが多いこの作家の真実や愛に少しでも近づけることを願いながら、すばらしい共演者の方々とていねいに稽古をしてまいりたいと思っております」
◯加藤雅也
「私が45歳で初めて舞台に挑戦してから、早いもので17年がたちました。これまで携わってきたのは、どちらかといえばエンターテインメント性の強い作品が多かったのですが、心のどこかで『いつかは三島作品やシェイクスピア作品のような芸術性の高い舞台にも挑戦してみたい』と願っておりました。『もしかしたらそのような機会は自分には訪れないのかもしれない……』となかば諦めかけていたところに、今回のお話をいただきました。驚きと喜び、そして『果たして自分ができるのか』という不安がよぎりましたが、思わず『やります!』と即答してしまいました(笑)。台本を手にした瞬間、セリフの多さに『これは大変なことになったぞ(笑)』と覚悟を決めると同時に笑みがこぼれ、まだ稽古もしていないのに早くも“セリフが出てこない夢”を見る始末。夢に見るぐらい不安を抱いている自分に少し可笑しさを感じました。もう後戻りはできません。全力でモントルイユ夫人と向き合い、皆さまに楽しんでいただける舞台をお届けできるよう励んでまいります。全身全霊でモントルイユ夫人を演じきりたいと思っております。あたたかく見守っていただけましたら幸いです」
◯宮本亜門
「念願であった日本演劇界の頂点とも言える、三島由紀夫氏の『サド侯爵夫人』を新たに創り出す喜びに胸が震えています。成宮くんをはじめとする個性あふれる俳優たちとともに、危殆(きたい)と破壊の縁に立ち上がる高揚を、かつてない舞台として結晶させお見せします。来年一月、破壊からこそ生まれる美の興奮を、どうぞご期待ください」
