Perfume、25年間が凝縮された活動休止前ラストライブ 東京ドームだからこそ表現できた“3人の今”
3人組テクノポップユニット・Perfumeが9月22日・23日に東京ドームで『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME』を開催した。年内をもって「コールドスリープ」に入ることを発表したPerfumeにとって、活動休止前ラストとなるライブ。3人のみならず、これまでにPerfumeを応援してきたファンたちの未来を照らすような、希望に満ちた空間がそこには広がっていた。本記事では初日となった22日公演の模様をレポートする。

パワーアップしての再会を約束「Perfumeと皆さんの絆はこんなことじゃ揺るがない」
3人組テクノポップユニット・Perfumeが9月22日・23日に東京ドームで『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME』を開催した。年内をもって「コールドスリープ」に入ることを発表したPerfumeにとって、活動休止前ラストとなるライブ。3人のみならず、これまでにPerfumeを応援してきたファンたちの未来を照らすような、希望に満ちた空間がそこには広がっていた。本記事では初日となった22日公演の模様をレポートする。(文=中村彰洋)
あの日あの場所で凍りついた時間がようやく動き出した――。Perfumeを語るうえで避けては通れないのが、2020年2月26日に襲った悲劇だ。4大ドームツアー『Perfume 8th Tour 2020 “P Cubed”』の千秋楽となるはずだった同日の東京ドーム公演は、新型コロナウイルス感染防止のために開場直前に中止を余儀なくされた。あの日からおよそ5年。Perfumeの物語は新たな局面を迎えていたのかもしれない。
無念の中止から半年たったメジャーデビュー記念日となる20年9月21日に開催したオンラインフェス『“P.O.P” Festival(Perfume Online Present Festival)』内では、仮想空間で幻となったドーム公演を再現するかのような演出を披露。21年の『Perfume LIVE 2021 [polygon wave]』では、コロナ禍の収容率制限を逆手にとったアリーナ全面ステージという革新的な演出で観客の想像を超えていった。22年には、全国ツアー『Perfume 9th Tour 2022 “PLASMA”』を開催。
そして、23年末に開催したカウントダウンライブ『Perfume Countdown Live 2023→2024 “COD3 OF P3RFUM3” ZOZ5』からは、「ZOZ5」という文字がライブタイトルに含まれるようになり、明確に2025年に向けて動いていることを示唆し続けていた。そして迎えた25年9月21日に、26年から「コールドスリープ」に入ることを発表。メジャーデビュー「20」周年、結成「25」周年を表すのみならず、アルファベット最後の文字「Z」を用いることで、一つの節目を表現しつつ、いつか動き出す未来への可能性も示していたのかもしれない。
そんなPerfumeの25年という歴史にさまざまな形で関わってきたファンたちがこの日は集った。この2日間が終われば、ライブでキラキラと輝くPerfumeをしばらくの間は観ることができなくなってしまう――。これまでのライブ前の高揚感とは異なる、言葉にはできない複雑な感情が入り混じった空気が会場には漂っていた。定刻5分前になるとファンがメンバーの名前を思い思いに叫び始めた。開演前から大きな手拍子がドームを包み込んでいく。

メインステージには『ネビュラロマンス』の世界観を表現した荘厳なセットが配されている。定刻から数分遅れ、影アナが流れる。いよいよだ。スクリーンにはオープニング映像が流れ、観客は固唾を呑んで見つめる。3人の「もう1度あの日から始めよう」の声が響くと、客席からはどよめきがあがる。まるで、5年前を再現するかのようだった。
映像は切り替わり、コツコツとヒールを鳴らし、ステージへと歩く3人の足元が映し出される。3人の呼吸音が会場を包む。5年前の東京ドーム公演で披露するはずだったオープニング。あの時と同じ『GAME』で、止まっていた歯車が再び回り始めた。3人がライトセーバーを操る振り付けも久々の披露となった。
衝撃的な幕開けにざわめきが収まらない中での、2曲目は『再生』。間奏では「皆さんこんばんは、Perfumeです!」と勢いよくあいさつした。
今回は9月17日に発売されたコンセプトアルバム『ネビュラロマンス後篇』を引っ提げた2日間。『ネビュラロマンス前篇』のツアーではアルバムの曲順通りに披露していたが、いきなり観客の予想を超えてきた。
1度ステージから姿を消すと、最新アルバム1曲目の『Cipher』が流れる。メインステージのセットが開くと、中から『ネビュラロマンス後篇』の衣装をまとった3人が現れた。続く『再起動世界』では、しなやかながらも力強いダンスを披露。曲終わりにはスクリーンに『ネビュラロマンス後篇』のロゴが映し出され、改めてライブの幕が上がったことを告げた。
今回の前後篇にわたるコンセプトアルバムは、SFの世界を表現した壮大なストーリーを描いたもの。物語は、地球で3人を保護したキキモという女性の手記によって進行していく。ここでスクリーンには『前篇』のツアーで展開されたストーリーのダイジェスト映像が流れる。舞台は宇宙空間、月がロボットアーミーに占拠され、その爆撃の衝撃で、コールドスリープ状態だったアヤカ、ユカ、アヤノの3人が地球に降り立ったというところから物語はスタートしていた。
『前篇』でも登場していた架空のテレビ局の歌番組『Mr.MIC SHOW』の曲振りが行われると、披露したのは、大阪・関西万博のNTTパビリオンでも使われている楽曲『ネビュラロマンス』だ。
この日最初のMCで3人は「ユカです!アヤカです!アヤノです!3人合わせてPerfumeです!」とおなじみのあいさつを“ネビュラ仕様”で行った。
あ~ちゃんは「この日を待ちわびていました」と笑顔。「9月の21日、昨日に大切な発表を私たち3人からさせてもらいました。私たちも25年活動してきました」と話し始めると、大きな拍手が巻き起こる。思わず涙ぐみながらも「私たち3人の人生はPerfumeと共にあります。それはこれからも変わりません」と力強く語ると、かしゆかも思わず涙を指で拭っていた。
続けて、「ちょっとイメチェンして、ちょっとパワーアップして、私たちなりに新しくして、戻ってこようということは決めています」と再始動を約束。「もう少ししたらコールドスリープしちゃうので、ちょっと低体温になっちゃうんですけども」とポップに表現した。
のっちが「もともと私は低体温」と合いの手を入れると、あ~ちゃんは「コールドスリープに非常に適している」とツッコミ。すると汗っかきのかしゆかは「私はちょっとコールドスリープするまでに時間を要するかもしれません」と続け、Perfumeらしい和やかな雰囲気が流れた。
のっちのみがステージに残り、ひとしきりコール&レスポンスを楽しむと、「またこうして3人で立てる日が来るとは、という感じでございます」としみじみ。「みんなで同じ対象(コロナ禍)に立ち向かった5年でもありました。もう懐かしい気持ちもするけどね」と“あの日”からの歩みを振り返った。そしてMCの途中では突然、思い出したかのように「あ、アヤノです!」とあいさつ。「こんな時じゃないとアヤノなんて呼んでもらえないから」と笑顔を見せた。
かしゆかがMCを引き継ぐと、「どうもユカです!」と“ネビュラあいさつ”。「昨日の発表があって、心がザワザワしている人もたくさんいると思いますが、私たちも揺らいでいる気持ちもたくさんあるので、皆さんと同じ思いです。みんな一人じゃないからね」。そして「今日初めて来てくれた人も、5年前ここのドームの前で扉の中に入れなかったみんなも、昔から応援してくれている人も一人残さずみんなで一緒にライブを作りましょう!」と呼びかけた。
あ~ちゃんとのっちがステージに戻ってくると、あ~ちゃんは済まし顔で「アヤカです」とあいさつ。ファンから「アヤカー!」の声が飛ぶと、「初めて呼ばれたよ。私は生まれてきてからあ~ちゃんなので。アヤカと呼ばれるのは父に怒られる時ぐらいでした。うれしいです」とちゃめっ気たっぷりに応じた。
その後は“あ~ちゃん節”をさく裂させながらのコール&レスポンスで、東京ドームという広い空間を早くも“Perfumeワールド”に変えてみせた。

勢いそのままに続けるのは、デビュー当初からライブのキラーチューンの役割を担ってきた『エレクトロ・ワールド』。間奏では魂のこもったコールが鳴り響いた。
スクリーンには、ネビュラの世界の映像が流れる。BGMは『リニアモーターガール』、さらには『コンピューターシティ』『エレクトロ・ワールド』と鮮烈なメジャーデビューを果たした「近未来三部作」が、ミュージックビデオ(MV)の映像と共に流れた。
会場には『ソーラ・ウィンド』が流れ、メインステージから十字に伸びた花道のセンターステージに3人が姿を現した。さらに『Virtual Fantasy』と『ネビュラロマンス後篇』の世界観を彩っていく。間奏ではキックボードに乗りながら、移動するというかわいらしい姿も披露しつつ、ステージ下へと姿を消していく。
メインステージに再登場した3人。続く楽曲は、影とのシンクロダンスが見応えたっぷりの『FUSION』だ。東京ドームの天井にまで投影された3人のシルエット。まさにドーム仕様の巨大スケールな影とともにパフォーマンスを行った。
またもスクリーンにはネビュラの世界が投影される。キキモの声に乗せて、物語の核心に迫っていく内容が紹介され、徐々に会場の雰囲気が変化していった。アリーナの随所には、黒い衣装をまとったダンサーが登場。Perfumeのライブでメンバー以外が登場するのは、21年と22年に開催されたライブ『[polygon wave]』以来となった。重低音に乗せた四つ打ちがドームに響き渡る。赤いレーザーがダークな世界観を助長する。
3人がメインステージに再登場し、前奏が流れると大歓声が巻き起こる。大切なライブで歌い継がれてきた『Perfumeの掟 2025』だ。スクリーンに「MUSIC BY YASUTAKA NAKATA」の文字が浮かぶとさらなる歓声があがる。
ステージ脇には「12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25」のセット。2010年に開催された東京ドームでの初ライブ『1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11』を彷彿とさせる演出だ。
10人のかしゆか、風船を撃ち抜くあ~ちゃん、シングル14曲の振り付けを連続再現するのっち――。スクリーンには、15年前の3人の姿も映し出されるなど、当時の感動がよみがえってくる。
センターステージで集結した3人。一糸乱れぬ精密なシンクロダンスに満員の大観衆はまさにくぎづけ。PerfumeがPerfumeたるゆえんを示す圧巻のダンスパフォーマンスとなった。
興奮冷めやらぬ中で流れるのは『Flow』。22年のリリース以来、ライブの重要な場面で歌われ続けてきた楽曲をこの日も丁寧にパフォーマンスした。
再び、キキモによってネビュラの物語が語られていく。『Teenage Dreams』が流れると、3方向に伸びた花道の先から箱に腰掛けた3人がリフトアップして現れ、笑顔を振りまきながら、しっとりと歌い上げていった。背後のスクリーンにはまるで『巡ループ』のMVと重なるような映像も流れていた。
アウトロと共に再びキキモの声が流れ、「カキモトはあなたたちの父親だ」と告げる。カキモトは『前篇』から通じて“ラスボス”のように扱われてきた存在。「彼女たちはパスワードに心当たりがあるようだ。これでやっと長い戦いを終わらせることができるのかもしれない」という言葉を残す。
不穏な空気が漂う中で、披露したのは『Human Factory-電造人間-』。2月から配信された楽曲だが、これまでに披露されることはなく、今回のライブが初お披露目となった。いよいよクライマックスへと向かっていく。
キキモによって、それから3年後のストーリーが語られる。戦いに決着はついたが、3人は姿を消してしまったという。「3人は完全に失われてしまったのだろうか。どうしても彼女たちがまだどこかに存在している気がしてならない。ずっと3人の存在を感じているのだ。私は本日よりアヤカ、ユカ、アヤノの捜索を開始する」。その声をバックに3人はメインステージに置かれた石盤へと歩みを進め、パスワードを入力した。するとスクリーンには月が上り、『Moon』のパフォーマンスへとつないだ。
そして、アルバム制作当初は最後の曲となる予定だった『exit』で『ネビュラロマンス』の世界を締めくくる。スクリーンにはこれまでの『ネビュラロマンス』のハイライトともいえる映像の数々が流れていく。間奏では再びキキモが展開を語る。
「今日ついに3人の痕跡を検出した。やはり彼女たちは完全に消失したわけではなかった。時空を超え、並行宇宙に転生していたのだ。また3人一緒に歌って踊っている姿を確認できた。同じ時間、同じ場所に転生し、出会い直すとは。なんて彼女たちらしい奇跡なのだ。私が鍛え上げた娘たちだ。これからだってきっと大丈夫」
ラストは3人が手を取り合い、天を見上げながらステージから姿を消した。スクリーンにはエンドロールが流れ、ラストに『巡ループ』のMVと同じく制服姿の3人の少女が屋上で踊る姿が映り、『前篇』から続いた『ネビュラロマンス』の壮大なストーリーの幕が閉じた。
これまでの楽曲を織り交ぜながらも、『ネビュラロマンス後篇』に収録された楽曲たちは曲順通りに披露するなど、アルバムの世界観を忠実に再現した前半戦だった。今アルバムを象徴する「ループ」というフレーズ。『exit』にも「この世界は何周目?」という歌詞があるが、まさにそれらが表現された『ネビュラロマンス』という物語だった。

ライブも終盤戦。会場には赤い光が満ちる。スクリーンに「ARE YOU READY TO DANCE?」の文字が流れると大歓声とともに、手拍子が鳴り響く。スクリーンには激しく踊る3人のシルエット。熱気が充満する中で「REMIX BY YASUTAKA NAKATA」の文字が浮かぶ。
きらびやかなゴールドの衣装に着替えた3人がセンターステージに舞い戻ってきた。あ~ちゃんの「Are You Ready?」の掛け声とともに、今ライブのために中田ヤスタカ氏の手によってリミックスされたメドレーがスタートする。まずは『ポリリズム』。スクリーンには歴代のライブ映像が流れる。Perfumeの運命を変えた『ポリリズム』だからこその、これまでの歴史が詰まった映像だ。
続くのは、まさかの『Butterfly』。08年のアルバム『GAME』に収録された1曲だが、これまでに転換曲として使われることはあったものの、3人がステージにいる場で披露されたのは珍しく、予期せぬ選曲に客席からはどよめきが巻き起こった。
さらに『edge』と観客のボルテージはぐんぐん上昇。これまでに聞いたことのないような大ボリュームの「Say yeh!」が巻き起こる。アウトロでは『チョコレイト・ディスコ』のBGMを被せ、自然な流れでキラーチューンへとつなぐ。会場中には「ディスコ!」の声がこだまする。東京ドームという広い会場とは思えない一体感。これぞPerfumeが大切に積み上げてきた“みんなで作るライブ”。これまでに蓄積されたファンとの信頼関係が織りなす空間がそこには広がっていた。
リミックスの流れのままにライブでおなじみの「P.T.A.」のコーナーへとつなぐ。定番のコール&レスポンスに続き、全員で踊るダンスは秋仕様。「かぼちゃっ」「すすきっ」「栗拾いっ」とダンスをまねながら踊る客席。あ~ちゃんの自由気ままな掛け声に、ドーム中が翻弄されるのもPerfumeライブならではの光景だ。
ライブの終わりが迫っていることが告げられる。あ~ちゃんの「出し切るなら今だよー!」の掛け声に全力でオーディエンスは呼応。「DJ~YASUTAKA NAKATA!」とあおると、『NIGHT FLIGHT』が流れた。曲をつなぎながらも、あ~ちゃんが「せ~の!」と合図を送る。ファンも一斉に右手を頭上に掲げ、『MY COLOR』を全員で踊る。まさにリミックス仕様となったこの日の『MY COLOR』。『Baby cruising Love』や『リニアモーターガール』の音やダンスも織り交ぜるなど、この日だけのエモーショナルな演出に仕上がっていた。
会場中がダンスで一つになる中、3人は腰に手を回し合い、スキップするかのようにセンターステージからメインステージへと移動していく。3人の絆が伝わってくる後ろ姿は、最高の光景だ。
この日最後のMC。あ~ちゃんは今回のライブについて「『ネビュラロマンス』が完結することと、私たちに重なる部分があって、感極まる部分もたくさんありました。リハーサルもたくさん泣きながら、でも笑いながらやって、スタッフさんも最後の最後までアイデアを出し尽くしてくれて、今日ここに立つことができました」と涙ながらに感謝。「やっぱりPerfumeにとってライブは生きがい。このために生きてきたんだなというふうに思います」。
かしゆかは「とっても幸せな時間でしたー!」と満面の笑顔を浮かべたうえで、心境を口にした。「今日こうやって決断してライブができる。これは本当にたくさんの巡り合わせ、導きの中で、この答えになったんだなって感じています。昨日発表して、ライブをするまでね、みんながどういう顔しているかなってちょっと不安だったの。でもライブをやって大丈夫だって思いました」。
涙を拭いながら、「私たちPerfumeと皆さんの絆はこんなことじゃ揺るがない。今日このままで時間がたったって変わらないって感じました。Perfumeとしての姿は見えなくても、私たち3人は必ず一緒にいます。見える世界が、見える形が変わっても3人はつながっています。そして今までの音楽を通してみんなの側にいます。どうか忘れないでください」と真っすぐに言葉を紡いだ。
そして、「本当にまた会える日を心待ちにしています。私たちはまたパワーアップして『3人で踊るの最高!』って言って帰ってくるので、元気で健康に、ライブに来れる体力をつけておいてください、約束ですよ。どんなに離れていても一緒にいるから信じて下さい。今日は本当にありがとうございました」と感謝を届けた。
のっちは、長期間におよんだ『ネビュラロマンス』について振り返りながら、終わりが近づいていくにつれて、「すっごい好きなアニメのシーズンが終わっちゃうみたいな、そんな寂しさがありました。中田さんのファンだからね。みんなもファンかな?」とのっちらしく表現。
続けて、「結成25周年、メジャーデビュー20周年、こんな記念の年に新たな挑戦、コンセプトアルバムを作って皆さんにお届けするという経験をできたことをとっても幸せに思います。みんなついてきてくれてありがとうございます」と感謝した。「ドームの『チョコレイト・ディスコ』は格別だなって思ったり」とこの日のステージをかみしめながら、「本当に素晴らしいライブでした。皆さん、ライブを作ることに関してはお上手ね」と“のっち節”で思いを届けた。
さらに、「私たちから大切な大切なメッセージを皆さまに送らせてもらったんですけど、幸せなことに、疲れたとか、一人でいたいとか、そういうことが全くない状態で、その選択肢(コールドスリープ)が出た時に、そっちを選択できる自由さだったり、軽やかさだったりみたいなものがあったんだってことに自分のことながら感動しました。こういう人生もあるんだな、こういう前例のないアーティスト像みたいなものを作っちゃっていいんだって。真面目なところがある3人ですが、パッと未来が拓けたような感覚がありました。そういう選択ができることも幸せだなと思うし、元気だからこそできること、人生の中で新しい夢を見つけられたらなと思ったりしています。みんな本当に理解しようと想像して温かく受け止めてくれて本当にありがとうございます」と感謝の思いを口にした。
そして、「Perfumeは3人だけど、受け止めてくれている姿を見て、みんなでPerfumeを作ってきたんだよねって感動しました。本当にありがとうございます。小さい時から見てもらっているので、人生ともに、と思っていますので、私たちもパワーアップしてムキムキになって皆さんの前に現れる、会いに行くつもりなので、皆さんそれまで元気でいましょうね。今日は本当にありがとうございました」と、途中で言葉に詰まりながらも、のっちらしく笑顔で気丈に振る舞った。
あ~ちゃんは「ドーム5年ぶりに帰ってきたらどんな気持ちになるんだろうってここに向かうまで本当にドキドキしていました。この日を目指して、ずーっとこの何年か突っ走ってきました。私たちなりに今までやったことのないこと、チャレンジすること、ずーっとやってきました」とこの日への思いを吐露。5年前との心境の変化について明かしながら、「その5年の中で私たち少しは成長できていたのかもしれません」と実感を口にした。
そして、「『今日は絶対開演するぞー!』。そういうみんなからの気合い、ひしひしと伝わってきて、たくさん私たちも勇気と背中を押してもらいました。今日までたくさんみんなが自信をくれました。本当にありがとう」と涙ながらに感謝を伝えた。
さらに、かしゆかと9歳の頃に出会ったエピソードを回顧。あ~ちゃんらしく当時を振り返りながらも、かしゆかへの思いを口にした。
「本当に努力家で、先週できなかったことが翌週にはしっかりできるようになって、レッスン場に来ていて。いつも心配性な部分があるんだけど、それを努力という部分で補っていました。めちゃくちゃかっこよかったです。私は同い年で背丈も一緒だったので、対になることが多かったけど、ゆかちゃんのいろんなテーマにガンガン染まって、たくさんの表現を手に入れていく姿を横で見ていました。『ゆかちゃん、すごいな』って。『私も負けてられんな』って。その当時から刺激と『よし、頑張ろう』という心をくれる人です。似ているところもたくさんあるけど、違うところももちろんあって、だけどその違いを互いに『いいね~』って認め合える、そういう特別な存在です」
また、のっちとの出会いのエピソードも披露。当時のスター性について触れながらも、「声も好きだった。今も好きだよ?」と絶賛。「のっちってステージに立つとバチーンって別人みたいになっちゃう。普段もかわいいんよ」と続けた。「本当にステージの光り輝く彩乃ちゃんっていうのは本当に憧れでした。こんなふうに自分も自分だけのモードを見つけたいなって」と当時の思いを口にした。さらに2人とは違った視点からの意見を与えてくれるとし、「すごく角度の違う提案、アイデアが私たちを本当に救ってくれます。のっちは私には持っていない角度とアイデア、そういうのをずっと持ってくれています」と感謝した。
そして、「誰よりもPerfumeのファンっていうところもずっと変わらないでいてくれて。小学校から一緒におる2人(あ~ちゃん&かしゆか)のグループに入ってくれたことで、ようやくPerfumeってなったのに、『自分は入れてもらった』って感覚をずーっとずーっと持ち続けて、私たちのことをサポートと尊重してくれる。のっちさん、本当に尊敬しています」とメッセージを送った。
「そんな2人が隣にいてくれて25年やってこれました。こんなすっげー人が隣にいるんだもん。永遠にやっていきたいよね。ずっとずーっと一緒にいたいです。今回、発表させていただいたこと、それはずっとずーっと一緒にいられるために3人が新しい挑戦をするという宣言でした。必ず皆さんと、この私たちの生きがい、この時間をまた持てるように、新しい私たちをゲットして、またみんなの前に戻ってきたいと思いますので、カムバックするその日まで、みんな元気でいてね」とファンへの思いを言葉にした。
観客からの鳴り止まない拍手を全身でかみしめるように浴びる3人。あ~ちゃんは「本当に私の隣を選んでくれてありがとう。大好きだよ」と号泣しながら、2人への愛を口に。「今日を選んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。それではまた会えるその日まで」と締め、3人そろって「Perfumeでした! ありがとうございました」とあいさつ。深い深いお辞儀であふれんばかりの感謝を伝え、ステージを降りた。

スクリーンには『願い』をBGMに、懐かしの映像の数々が流れる。終盤には、3人がステージに上がる前に行ってきた円陣の歴史が映し出された。そして、2010年の東京ドームライブ前に行われた「頑張るぞ、おー!」で映像は終了した。
センターステージには、2010年当時を再現したかのような白い衣装に身を包んだ3人が登場。『ネビュラロマンス後篇』の最後の曲として収録された『巡ループ』を披露した。3人が円を作るように手を取り合うラストはまさにMVそのもの。この日のライブはまるで『巡ループ』のMVを形にしたかのような演出の数々となった。
正真正銘のラストは2010年に東京ドーム公演でオープニング曲として披露した『GISHIKI』だ。当時は3方向に伸びた花道の先端から登場した3人が「1 2 3……」のカウントに合わせて歩みを進め、センターステージで3人が集結するというものだった。しかし、この日は「25 24 23 22 21……」とカウントダウン。センターステージにそろっていた3人が別々の花道を1人ずつ歩いていく。頭上にベールを掲げ、徐々に下ろしていく演出も当時とは対照的だ。
そして、カウントダウンが「1」を迎えると、3人は会釈をしながら、そのままステージ下へと姿を消した。花道の先には、球体とレーザーで浮かび上がった巨大な光、Perfumeを象徴する“Aポーズ”だけが残った。
初めての東京ドームで姿を現した場所に、3人が戻っていくという演出。まるで3人がそれぞれの未来への歩みを進めていくかのようだった。
最後にスクリーンに写ったのは「SEE YOU AT THE NEXT STAGE」の文字。再会の日が必ず訪れることをファンと誓い、未来への可能性の余韻をたっぷりと残しながら、この日のライブの幕は閉じた。
まさに25年の集大成ともいえる演出が詰まっていた。東京ドームでのライブというものがどれだけPerfumeにとって大きなものだったのか――。その想いが確かに伝わってくるライブとなった。
活動休止を発表したメッセージに記されていた「輝いている私たちを歴史に残す」というフレーズ。まさに今日この瞬間に輝いていた3人の姿は、この日集まった人たちの人生という名の歴史の1ページに残るものだった。
ライブが始まるまでは、不安な気持ちを抱いていた人も多かったかもしれない。しかし、この日3人が真っすぐに紡いだ言葉は、そんな不安を一瞬で吹き飛ばすものだった。「Perfumeは必ず戻ってくる」。会場にいた誰しもがそう確信することができたであろう。
“新しいPerfume”がどういったカタチになるのか。つねに予想を軽々と超えてくるPerfumeが、どのようなカムバックを見せてくれるのか。その時を心待ちにしたい。

○『Perfume ZO/Z5 Anniversary “ネビュラロマンス” Episode TOKYO DOME』2025年9月22日セットリスト
1.GAME
2.再生
3.Cipher
4.再起動世界
5.ネビュラロマンス
6.エレクトロ・ワールド
7.ソーラ・ウィンド
8.Virtual Fantasy
9.FUSION
10.Perfumeの掟2025
11.Flow
12.Teenage Dreams
13.Human Factory-電造人間-
14.Moon
15.exit
16.Perfume ZO/Z5 Reeeeemix
-1.ポリリズム
-2.Butterfly
-3.edge
-4.チョコレイト・ディスコ
「P.T.A.」のコーナー
-5.NIGHT FLIGHT
-6.MY COLOR
17.巡ループ
18.GISHIKI
