【スターダム】アクシデントと大躍進、暑い夏を駆け抜けた吏南に聴く今の思い【インタビュー後編】
デビュー7年目にして、初めてスターダムの最強レスラーを決める『5★STAR GP』に出場しベスト4入りを果たした吏南。表彰式では、技能賞、敢闘賞、リーグ戦ベストバウト、トーナメントベストバウトと四冠に輝き、優勝を果たした同じH.A.T.E.のメンバーである渡辺桃とともにMVP的な活躍を見せた。しかし、その直前には吏南自身が大きくしてきた、スターダムの別ブランド『NEW BLOOD』でアクシデントに襲われた。そのアクシデントを克服しての大躍進となったわけだが、吏南の中では色々と思うところもあった。

フューチャー王者時代は、NEW BLOODのことばかりを考えていた
デビュー7年目にして、初めてスターダムの最強レスラーを決める『5★STAR GP』に出場しベスト4入りを果たした吏南。表彰式では、技能賞、敢闘賞、リーグ戦ベストバウト、トーナメントベストバウトと四冠に輝き、優勝を果たした同じH.A.T.E.のメンバーである渡辺桃とともにMVP的な活躍を見せた。しかし、その直前には吏南自身が大きくしてきた、スターダムの別ブランド『NEW BLOOD』でアクシデントに襲われた。そのアクシデントを克服しての大躍進となったわけだが、吏南の中では色々と思うところもあった。(取材・文=橋場了吾)
2022年3月、スターダムが立ち上げた新ブランド『NEW BLOOD』。第1回では“超新星”天咲光由のデビュー戦がマッチメイクされ、以後若手の底上げを目的とした大会となった。吏南はフューチャー・オブ・スターダム王者として、そしてNEW BLOODタッグ王者として多くの大会でメインを任されてきた。
「実は1回目は学校の都合で出てないんだよ。2回目から出始めて、最初は自分が(NEW BLOODを)引っ張っていくという気持ちは全然なくて、まずはフューチャーが欲しかった。そのうちにフューチャーがNEW BLOODのメインを張ることが増えたんだけど、私がフューチャー獲ったとき(2023年5月の品川大会)はセミだったんだ。それが悔しくて、私がチャンピオンとしてフューチャーのベルトを盛り上げていけば変わるかなと。それからはほぼメインで戦って、トップ選手も出なくなって。本当に若手だけの大会になった。試合内容で見せていくフューチャーの戦いになったと思うから、NEW BLOODを引っ張ってきた自信もあるし、フューチャーのレベルも上がったと思う。フューチャーを落としてからも、タッグのベルトを持っていたから私が引っ張っていかなきゃいけないとは思っていて。本当にNEW BLOODのことしか考えてなかった」
7.4板橋大会。吏南は『NEW BLOOD 23』の第1試合で、当時デビュー1か月半のまい島(※まい=にんべんに舞)エマとのシングルが組まれていた。まい島がスワンダイブ式クロスボディを放った際に、吏南は頭を強打し脳震盪を起こしレフェリーストップ負け。思い入れのあるNEW BLOODで新人に勝ち星を献上し、吏南のいうところの『やらかし』をしてしまった。
「やっぱり思い入れのある大会で、それこそ若手を引っ張っていく試合だったし、YouTubeの配信もあったので気合いは入っていたよね。しかも1回NEW BLOODを卒業すると言ったのに、すぐ戻ることになっての第1試合だったから、本当に不甲斐ないし自分が情けなかった。技を受けて、気づいたら救急車の中だったから『やばい、これは盛大にやらかした』と。安静にしなきゃいけないんだけど、気持ち的には試合をしたいし。こんなやりきれない気持ちってあるんだなと思った。(1か月ほど)欠場になったことで、決まっていたアーティスト(・オブ・スターダム)のタイトル戦も飛んでしまって。その中止になった日の配信を見ていたら、小波が自分のムーブをやってくれて嬉しかったのと同時に、本当に私はやらかしてしまったんだと思って泣いたよね……」
そして9.6横浜大会で、吏南の希望もありまい島との再戦が組まれた。まい島も期待に応え大善戦、吏南はフィニッシャーであるPink▼Devil(▼=ハートマーク)で勝利し、珍しく握手でまい島を称えた。さらにバックステージでは「この言葉を言うのはお前にだけ」という注釈をつけて、まい島に「NEW BLOODのトップを獲れ」とエールを贈った。
「申し訳なさはあったよ。デビューしたての選手が、自分がこうなったせいで技を出せずに苦しんでいたんだから。でもこのことがあったから、横浜でシングルで戦えて、エマがここまでできるんだという試合ができたのは良かった。今いる新人たちとはシングルで戦っているけど、エマに一番“希望”を感じていたんだ。だから本当に、NEW BLOODのトップに立ってほしいよ」
一方、まい島は吏南のコメントを聴いて、こんなことを考えていた。
「(吏南は)私の技全てを受け止めてくださったし、追い詰めるまではなかなかいけなくてすごく悔しかったんですけど、今トップ戦線に立っている吏南さんと戦えてすごくありがたく感じましたし、自分の糧にしていきたいと思いました。自分の中であの技(スワンダイブ式クロスボディ)をするのも2か月ぶりだったんで、正直すごく怖いなという思いもあったんですけど、対面には吏南さんがいて、2か月前のことはもう払拭して自分らしく飛べたかなと思います。バックステージの吏南さんのコメントは、本当に驚きましたしそれ以上に嬉しかったです。NEW BLOODのタイトルを獲って、防衛して実力をつけて、タイトルを落としたとしてもNEW BLOODの頂点に立っていたといわれるくらい頑張っていこうと思いました」

この3人が組んで、アーティストのベルトを獲れたことが本当に嬉しかった
時間は前後するが、『5★STAR GP 2025』でベスト4に進出した吏南だが、今回が念願の初出場だった。決勝トーナメントの準決勝でAZMと対戦した吏南は、未遂に終わったものの木村花さんの最上級フィニッシャーだったタイガー・リリー(ミサイルキックからパッケージドライバーにつなぐ連続技)を繰り出した。
「このトーナメントに賭けていたし、花さんは(2019年に)5★STARで優勝しているので、本当に大事な試合で出そうと思っていたんだけど、決まらなかった。タイガー・リリーは前にも出したことがあるんだけど、その時も決まらなかったから、本当にあの技が決まる大一番はまだってことなのかなと思ったよ」
そして花さんがリーダーを務めたユニット・TOKYO CYBER SQUADに所属していた小波、フキゲンです★とともに、吏南は9.10後楽園大会でアーティスト・オブ・スターダム王者となった。
「小波もフキゲンも、同じユニットにいることが長いから連携も合うなと思ったし、次に何をしたいのかもわかるというか。この3人が組んでいるイメージはないかもしれないけど、自分では勝手にいいメンツだと思ったよ。やっぱりこの3人で獲れたことが、本当に嬉しかった。バラバラになったこともあったけど、今H.A.T.E.に集まって、ベルトを獲るところまで行くって本当に感慨深いし、個人的には花さんが持っていたピンクのベルトを巻けたのはね……1年前は考えられなかったな」
シングルで大躍進、アーティストのベルトも巻いた吏南が今後目指すものとは……。
「(アーティストの試合後のマイクは)あれはガチ。向後桃みたいなやつがすぐに挑戦できるから、スターダムが舐められる。Sareeeにもね。ただ、羽南がSTARSのことでもがいていたのは知っていたから、こみ上げて来て泣いたけれども話は聞いてやろうと。そこで野次が飛んできて『うるせえ』って言っちゃったんだけど。小波がふざけて『姉妹っていいなあ』って言っていたけど、血はつながっているからさ。今、H.A.T.E.で5★STAR GPの優勝やベルトを独占しつつあるけど、白(ワンダー・オブ・スターダム)がないのはちょっとね。だから個人としては白を狙いたいし、(現王者のスターライト・)キッドから獲りたいとおもっているよ」
