「ダメなんですか?」 日本の能楽師がドイツ空港の手荷物検査で緊急事態…引っかかった所持品にネット騒然
日本の伝統芸能を継承する文化人が、海外の空港でまさかのハプニングに……。能の舞台で使うために重要な道具を持っていたところ、手荷物検査で止められてしまったという。SNSで報告すると、「なんで!? ダメなんですか?」と驚きが広がった。京都を拠点に活動する能楽師の山田伊純(いすみ)さんに詳細を聞いた。

「係員に一つずつ取り出されて裏表を念入りに確認されました」
日本の伝統芸能を継承する文化人が、海外の空港でまさかのハプニングに……。能の舞台で使うために重要な道具を持っていたところ、手荷物検査で止められてしまったという。SNSで報告すると、「なんで!? ダメなんですか?」と驚きが広がった。京都を拠点に活動する能楽師の山田伊純(いすみ)さんに詳細を聞いた。
「ドイツ出国で止められた」
山田さんは自身のXアカウント(@yamadaisumi)で、ドイツの空港での想定外の事態についてつづった。
能楽師として国内外の舞台に出演するだけでなく、能の体験ワークショップや教育普及活動にも力を注ぐ山田さん。「伝統を継承しつつ、現代の観客や海外の方々にも能の魅力を伝えることを目指して活動しています。他ジャンルとのコラボレーションや演出、企画もしております」。10月22日には若手による能楽師の会「ゆとりのかい」(渋谷セルリアンタワー能楽堂)に出演を予定するなど、能楽の魅力発信にも余念がない。
そんな山田さんは9月にドイツを訪問。文化関連の行事で招聘(しょうへい)され、現地の学生が参加する能楽ワークショップなどを行った。しかし、帰国時に思わぬ展開になってしまった。
「今回の出来事は、ドイツの国際空港での出国時、手荷物検査の場面で起きました。かばんに入れていた能面がX線検査に引っかかったのか、係員に一つずつ取り出されて裏表を念入りに確認されました。私は『I’m a Noh performer.(私は能の役者です)』『Traditional art(伝統芸能です)』などと説明し、用途を理解してもらったことで、無事に通過することができました」。どういうわけなのか、能面がセキュリティーチェックで引っかかってしまったのだ。冷静に英語で伝え、事なきを得たという。
持っていたのは2つの能面。Xにインパクトのある写真を掲載した。現地ワークショップでも大活躍だったといい、「左の『小面(こおもて)』は、能楽を代表する面の一つです。『小』には“かわいらしい”という意味があり、若い女性の役に用いられます。右の『中将(ちゅうじょう)』は、在原業平の姿を写したと伝わり、眉をしかめた苦悩の表情が特徴です。平家滅亡の憂いや悲しみを表現することが多く、業平本人や武将の役で用いられます。今回焦点の当たった能面については、美術品としてや歴史的な価値もさることながら、能楽師にとっては最重要のマストアイテムとして、とても大切なものです」。文化的な価値を含めて丁寧に教えてくれた。
有名能楽師が見舞われた海外でのプチ騒動。ネット上では「何故ダメだったのですか!?」「美しすぎて文化財の流出? と思われたのかしら」「何故だ……」「デスマスクと思われたのかな?」「これは確かに止める」「むしろどうやって入国できたんですかね…www」など驚がくする人が続出。

「この出来事をきっかけに、能に触れてみようと思う方が一人でも増えればうれしく思います」
また、ユーモアあふれる反応として、「止められた時に出た言葉『oh能…』」「←出国前の顔 止められた時の顔→」「いっそ、装着して出国すればよかったのでは…」といった“大喜利コメント”も多く寄せられている。
大反響を受け、山田さんは「ユーモラスなコメントが数多く寄せられました。能や能面が普段なじみのない方にも広く関心を持っていただけたことをうれしく思っています。能面は怪しい物体ではなく、能楽師の大切なお道具であり、日本文化を語る上でも大切なものです。この出来事をきっかけに、能に触れてみようと思う方が一人でも増えればうれしく思います」とメッセージを寄せた。
