「ゲームとガチャ」歴史の分岐点へ? スマホRPGは“脱キャラガチャ”と“プレイ体験重視”の傾向に

いつからか、スマートフォンゲームと“ガチャ”は切り離せないものになってきた。基本プレイ無料とガチャがセットのビジネスモデルが確立され、その収益と比例するように、ハイクオリティーなスマホゲームも増加傾向にある。しかし、そんな「ゲームとガチャの歴史」に、転換点が訪れるかもしれない。

着せ替えにフォーカスした『インフィニティニキ』【画像:(C)Infold Games ALL RIGHTS RESERVED】
着せ替えにフォーカスした『インフィニティニキ』【画像:(C)Infold Games ALL RIGHTS RESERVED】

スマホRPGの課金は“できること”から“見えるもの”へ?

 いつからか、スマートフォンゲームと“ガチャ”は切り離せないものになってきた。基本プレイ無料とガチャがセットのビジネスモデルが確立され、その収益と比例するように、ハイクオリティーなスマホゲームも増加傾向にある。しかし、そんな「ゲームとガチャの歴史」に、転換点が訪れるかもしれない。

 かつてガチャ要素がゲームに持ち込まれたときは、そのランダム性まで含めて楽しむ層もいたものの、かなりの反発があったと記憶している。ただ、時の流れとともに徐々に受け入れられ、特にRPG(ロールプレイングゲーム)ではキャラクター、武器、強化アイテムなどの獲得のため、さまざまなシチュエーションでガチャが用意されるのが当たり前になっている。

 本稿の主題はガチャの是非ではないが、事実として、ガチャは課金がギャンブル性の強い報酬につながることもあり、欧米でもたびたび問題視されてきた。そんな背景もあってか、基本プレイ無料のリッチなRPGでもキャラクター獲得がガチャ依存ではないタイトルが出てきている。

 直近で日本でもリリースされたタイトルでは、着せ替えをメインコンテンツの一つとして、ガチャ要素は衣装獲得となる『インフィニティニキ』(iOS / Android / PC)がリリース初日から4億円を売り上げたとされている。また、すでに中国ではリリースされているオープンワールドRPG『逆水寒(Sword of Justice)』が好調を維持しており、こちらもガチャ(課金)の対象はゲームの本質的なプレイ体験につながるキャラクターや武器ではなく、装飾品、服装や乗り物などのスキン(見た目)だ。

 基本的に、課金によって変えられるのは“できること”ではなく、“見えるもの”。せっかく制作陣によって生み出されたプレイ体験が、「ガチャで引けなかったから」という理由で堪能できないというリスクを、極力排除したシステムと言えるだろう。

中国ではすでに大ヒット中の『逆水寒』【画像:(C)1997-2025 NetEase,Inc.All Rights Reserved】
中国ではすでに大ヒット中の『逆水寒』【画像:(C)1997-2025 NetEase,Inc.All Rights Reserved】

「ゲームとガチャ」に生まれた変革の可能性

 そもそも、こうした課金方式は『VALORANT』や『PUBG: BATTLEGROUNDS』のような基本無料FPSタイトルでは(「Pay to Win=課金で勝つ」を封じるためにも)おなじみの手法だ。競争要素のないRPGにおいてキャラクターや武器のガチャが優先されてきたのは、ひとえにその利益の莫大さによるところが大きいと思われるが、それならばなぜ、ここに来て「キャラ・武器のガチャなし」という形が出てきているのだろうか。

 考えられるのは、先述のように「用意したプレイ体験のすべてを全員に届ける」ことで、プレイヤーの離脱を防ぐという目的が一つ。ユーザー目線でも好きなキャラクターで好きなプレイスタイルを選択しやすく、モチベーションが続きやすいことは間違いないだろう。

 また、従来の方式では新規キャラクター(あるいは既存キャラクターのバージョン違い)を既存キャラクターと差別化して作り続けなければならず、サービス継続期間が長引くほど、ゲーム制作側のコストも増大していくというデメリットもある。冒頭で述べたように、スマホゲームもクオリティーの向上が著しく、それに比例して制作コストの問題も大きくなっている。

 開発・ユーザーの両視点から見て、持続可能性の高い道が模索されていると言える。ただ、先述の新作スマホRPGたちにもガチャ自体は存在しており、その対象が「キャラクター・武器ではない」という状態だが、ある程度の収益がなければ開発にコストもかけられないだけに、当然のことだろう。

 一方で、すでに多くのスマホRPGに導入されているシーズンパス(特定の期間内にさまざまな条件を満たすと大量の報酬がもらえる仕組み)を拡充することにより、ユーザーが満足感を得ながら適度に課金できるシステムがもし生み出されれば、ガチャを完全に廃止し、従来の買い切り型ゲームに近付いていくことも考えられるだろう。あるいは、月額課金型のMMORPGに近い存在になるのかもしれない。

 なお、ストリーマーのタイアップ配信が話題を呼び、10月28日に配信開始予定の『デュエットナイトアビス』もキャラクター・武器のガチャを廃している。やはりスキン関係での収益化を標榜しているが、ガチャなのか固定金額での購入なのかは現時点で不明。仮に固定金額であれば、かなり革新的かつ“攻めた”仕様になるだけに、その動向は注目だ。

 しばらくは潮目が変わらないかと思われた「ゲームとガチャ」の関係性は、ここに来て急激な変革の可能性が生まれている。キャラクター・武器のガチャを廃したタイトルは、世界的な覇権を握るコンテンツになることができるのか。あるいは、旧来のガチャシステムへと回帰していくのか。ここから1〜2年ほどで、その答えが見えてくるだろう。

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