「僕らはカリスマ性がない」共演芸人のすごみに圧倒も…ハナコが自覚する“武器”とは
お笑いトリオ・ハナコの勢いが止まらない。昨年の27時間テレビでは司会の大役を務め、個人では今年、秋山寛貴が『ABCお笑いグランプリ』の審査員に抜てき。“大河俳優”岡部大は秋田県の観光大使に就任、菊田竜大もパパタレとして新境地を模索するなど、三者三様の活躍ぶりを見せている。活躍目覚ましい実力派コント師は、周囲の芸人たちと比較して自分たちの“武器”をどう認識しているのか。それぞれの思いを聞いた。

27時間テレビではチョコプラ、霜降りらと司会の大役に抜てき
お笑いトリオ・ハナコの勢いが止まらない。昨年の27時間テレビでは司会の大役を務め、個人では今年、秋山寛貴が『ABCお笑いグランプリ』の審査員に抜てき。“大河俳優”岡部大は秋田県の観光大使に就任、菊田竜大もパパタレとして新境地を模索するなど、三者三様の活躍ぶりを見せている。活躍目覚ましい実力派コント師は、周囲の芸人たちと比較して自分たちの“武器”をどう認識しているのか。それぞれの思いを聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
――9回目となる単独公演『リストランテ』について、タイトルに込めた意図は。
秋山「毎回、単独ライブはタイトルから考えるんですけど、全部で7~8本あるネタの順番や構成を考えていくのが、シェフがコース料理を考えるのに似ているなと思って、演出とレストランを紐づけてみようかなと。年々できること、かなえられえることも増えて、自由度が増しているなと感じます」
岡部「毎年大きな変化があるわけではないんですけど、関わるチームが年々充実してきている。最近ではプロジェクションマッピング専門のスタッフさんにも入っていただいていて、オープニングの演出なんかもすごいんです。実際にセットに投影されたものは僕らも会場に入ってからしか確認できないので、毎回すごい感動がある。スタッフ、チームに恵まれているなあと感じます」
秋山「単独ライブで、あれだけプロジェクションマッピングを入れてる芸人はあまりいないんじゃないですか。世の中に数多の単独ライブがあるなかで、ハナコでないと味わえないような満足度の高い体験を提供できたらと思っています」
――昨年の27時間テレビではチョコレートプラネット、霜降り明星らと司会の大役を務めた。
菊田「ちょうど1年前ですよね。入りが午後4時で、(霜降り明星の)せいやが当日午前11時まで寝られなかったらしく、『俺死んでまう……!』って嘆いてましたね(笑)。気持ちは分かる。番組がでかすぎて、気持ちが高ぶって寝られないんです。小学校の遠足前日みたいな感じで」
秋山「年齢や芸歴はチョコプラさんが一回り上で、霜降りの2人はほぼ同世代ですけど、2組とも全然違う種類のすごみを持ってる。霜降り明星は全部の能力が高いけど、中でもバイタリティーがダントツ。番組、ラジオ、YouTubeも2つ3つと撮ってるし、あれだけお客さんに見せるものをどうやって捻出しているのか。収録終わりホヤホヤでタクシーで撮ったり、楽屋で編集してたり……。あれだけの熱量を持った芸人は周りでもなかなか見たことない」
菊田「それこそ27時間終わりでも、打ち上げに来ずに撮ってましたからね。今この瞬間の、ホヤホヤのやつ撮りたいからって」
秋山「チョコプラさんは霜降りとはまた路線の違うクリエーティブ力。流行にも敏感だし、SNSへの嗅覚が異常。冷静に一回り上の世代って考えたらちょっととんでもないですよ(笑)。10代の子たちがTikTokで何にハマってるのかもめちゃくちゃ詳しいし、自分たちもそれで何発も当てていて、球数がすごい。職人芸ですよね」
――共演する多彩な芸人たちの中で、ハナコの武器は。
秋山「うーん、何でしょうね。やっぱりコントでは負けたくない。さっきの流行という視点でいうと、最近は流行語大賞でも知らない単語ばっかりが入ってるけど、僕らは『流行語大賞、全然分からないね』っていう一歩引いた視点からネタを作るようにしてる。あまり世代に左右されない、普遍的なコントが作りたいなとは思っています」
岡部「『子どもと一緒に見れますよね』『親も一緒に見ながら笑える』とはよく言われます。あまり世代に刺さった作りにしていない分、幅広い層に受け入れてもらっているのかなと。(ターゲット層が)狭いときは『これちょっとニッチ過ぎない?』という話もするし、そういう部分は意識していますね。
あとはやっぱり真面目なところじゃないですか。27時間テレビの秋山のダンスとか、菊田のマラソン企画みたいな、人間味というか、普通っぽさというか……。僕らは霜降りとかチョコプラさんみたいな圧倒的なカリスマ性がない分、真面目に1個ずつ頑張るしかない。そういう部分は、ああいうドキュメンタリー要素が入ると伝わるところもあるんじゃないかな」
秋山「(チョコレートプラネットや霜降り明星とは)タイプが違うのでライバル心みたいなものはないけれど、こっちはこっちの色で勝負しなきゃと、いい刺激になっています。やっていることが違うので、尊敬しているし憧れもあるけど、劣等感はないですね」

賞レース審査員、観光大使、夫婦共演など、個々人での活躍も
――秋山さんは『ABCお笑いグランプリ』で審査員に抜てきされた。
秋山「芸歴10年以下の大会だったんですけど、かが屋とかザ・マミィとか、一緒に頑張ってきた仲間が出場者側にいて、『なんで自分はこのポジションから見てるんだ?』と、ふと冷静になってしまって。やっぱり審査員は難しい。生放送で瞬時にコメントを求められるし、それがもたらす影響も頭をよぎる。皆さんやりたがらない理由がよく分かりました(笑)。
自分の中でこれといった審査基準は設けていなくて、あくまでも自分の経験値から言えることを細々と。何か基準を決めて見ちゃうと、それに当てはまらない面白いものを受け止められないんじゃないかと思って。ただ、俯瞰(ふかん)で審査することで、賞レース用のネタ作りへの考えは深まった気がします。もう1パンチあればとか、この1個のくだりの差だよなあとか。あの場であの緊張感、あの責任感で向き合ったからこそ見えてくるものもあったと思う」
――映画『ブラック・ショーマン』では役者デビュー。先輩俳優の岡部さん、菊田さんの2人からアドバイスは。
秋山「子どもの頃から映画が大好きなので、撮影現場にいるってことに大興奮しちゃって、セットの裏に入ったり、ずっとウロチョロしてました(笑)。あと、進捗がものすごい気になっちゃって。『今日どんな感じですか? 押してないですか?』とめちゃくちゃスタッフさんに確認しちゃって、うざかったかもしれない。肝心の演技は……めちゃくちゃ難しかった。OKが出たんで多分大丈夫だとは思うんですけど、めちゃくちゃ下手だったらどうしよう」
菊田「その感覚、めっちゃ分かるわ。『本当に今のでOKか?』ってなるんですよ。撮影スケジュールの都合もあるし、編集も入るから任せちゃってるけど、不安になるのはすごい分かる。自分は怖くてオンエアは見れませんでした。大河俳優はどうなの?」
岡部「いやー、どうなんだろう。現場によるとも思うんですけど、大河は撮影期間が1年半もあったし、周りもすごい人たちばかりだったから、何とかなるんだろうなっていう安心感はあった。編集さんもいるし、現場で見てる責任者の人がいいっていうならいいんだって。何回も撮り直しみたいなのもほぼなかったし」
秋山「本当の芝居をしてみて、普段自分が作るコントはいかに芝居をしてこなかったかと痛感しましたね。素に近すぎるというか、語尾とか語感も含めて、自分で自分を演じているだけ。コントと芝居とでは役作りの深さがまったく違う。芝居は生い立ちから作らなくちゃいけないから。『コントがうまいからお芝居もお上手でしょう』と言われることもあって、自分でもそのつもりでいたんですけど、芝居なんかやったことなかったなと。それは大きな気づきになりました」
――岡部さんは昨年、佐々木希さんを差し置いて秋田県の観光大使に就任した。
岡部「佐々木希さんは『あきた美の国大使』で、自分が観光大使、高橋優さんが『あきた音楽大使』ですね。一応、自分がど真ん中、プレーンな大使としてやらせてもらってます(笑)。ただ正直、高校卒業と同時に上京したから、学生時代のコミュニティーの中での秋田しか知らないんですよ。だからこそ、最近は秋田について勉強したり、敏感にアンテナを立てて情報収集に励んでいます。地元に帰った時にも、ダラダラ過ごすのではなく秋田の魅力を再発見しようと。……観光大使になってから、まだ何回かしか帰れてないですけど。
でも、秋田と言えばきりたんぽ、なまはげのイメージばかりで、自分たちには当たり前のことでも県外の人には意外と知られていないこともたくさんある。そういうローカルな魅力を発信していきたいですね」
――最近はクマのニュースも話題だ。
岡部「秋田県民からすると、びっくりするぐらい身近な問題。去年スーパーに立てこもったクマのニュースも、秋田駅を新宿駅とすると、中野とか笹塚で出たようなもんで、本当に住宅街のど真ん中。秋田県はどんどん撃つ方向で駆除を進めていて、やっぱり事情を知らない全国の人からは『かわいそう』という声もあるんですけど、本当にそういう切実な問題なんだということは自分も発信していきたいと思っています」
――菊田さんは夫婦での共演など、新しい仕事も増えてきている。
菊田「家ロケとかの仕事はちょこちょこいただけるようになってますね。ママタレはいろんな方が活躍されてますけど、パパタレだとやっぱりユージさんと杉浦太陽さんが強くて、お笑い芸人でパパキャラってあまりいない。最初はハナコ菊田がパパタレやったら面白いかなと思って、家族YouTubeとかも始めてみたんですけど、途中から『パパタレやってる芸人って面白いか?』って不安になってきて。夫婦仕事はありがたいんですけど、パパタレっていうのが難しい」
岡部「どうやってなればいいのか、こうすればいいっていうロールモデルがいないもんね。杉浦太陽さんも、辻希美さんっていうママあってのパパだし」
菊田「(品川庄司の)庄司さんとかも、パパのイメージってそんなに強くない。藤本美貴さんはそれこそママタレですけど、藤本さんあってのパパで、一人でパパキャラを確立するのって難しいのかも。パパタレ感が強すぎても、いかにもという感じでサムいし。そのあたりの可能性は今後も模索していきたいですね」
――あらためて、今後の目標は。
秋山「もっとコントを見てくれる人を増やしたい。プロジェクションマッピングもそうですけど、お笑いライブってまだまだ敷居が高いところがある。良くも悪くも普通な僕らだからこそ、お笑いに詳しくない、お笑いライブを見たことないという人たちの入り口にもなれると思う。ぜひ一度、見に来ていただければと思います」
□秋山寛貴(あきやま・ひろき)1991年9月20日、岡山県出身。お笑いトリオ・ハナコのネタ作り担当。趣味は絵画、キャラクターなどのデザイン、縮尺模型、食品サンプル観賞。
□岡部大(おかべ・だい)1989年5月30日、秋田県出身。お笑いトリオ・ハナコのネタ作り担当。NHK連続テレビ小説『エール』、NHK大河ドラマ『どうする家康』など、役者としても活躍。
□菊田竜大(きくた・たつひろ)1987年6月12日、千葉県出身。お笑いトリオ・ハナコの何もしない担当。趣味はスニーカー収集。
