クラプトンが注目で大バズりの33歳ギタリスト・ソエジマトシキ、不思議な縁に驚き「人生、本当に何があるか分からない」

憧れのスターからサプライズで絶賛され、人生が変わった。音楽制作やYouTube配信、オンラインのギタースクールなど、幅広く活動する33歳のギタリスト・ソエジマトシキ。世界的ミュージシャンで“ギターの神様”とも呼ばれるエリック・クラプトンから、“注目の日本人ギタリスト”に挙げられ、一躍話題の人になった。クラプトンが、ソエジマのギター演奏を気に入っており、今年4月にテレビ番組で紹介されたのだ。まさかの展開が続き、面会まで実現した。極上のひとときで、多くの学びがあり、クラプトンから意外な“質問”が。「やっぱり夢がある。そう実感しました」。ミラクルストーリーの秘話を聞いた。

エリック・クラプトンへの思いを語るソエジマトシキ(山野楽器 銀座本店で撮影)【写真:ENCOUNT編集部】
エリック・クラプトンへの思いを語るソエジマトシキ(山野楽器 銀座本店で撮影)【写真:ENCOUNT編集部】

ギタリスト・ソエジマトシキ サザンも大好き

 憧れのスターからサプライズで絶賛され、人生が変わった。音楽制作やYouTube配信、オンラインのギタースクールなど、幅広く活動する33歳のギタリスト・ソエジマトシキ。世界的ミュージシャンで“ギターの神様”とも呼ばれるエリック・クラプトンから、“注目の日本人ギタリスト”に挙げられ、一躍話題の人になった。クラプトンが、ソエジマのギター演奏を気に入っており、今年4月にテレビ番組で紹介されたのだ。まさかの展開が続き、面会まで実現した。極上のひとときで、多くの学びがあり、クラプトンから意外な“質問”が。「やっぱり夢がある。そう実感しました」。ミラクルストーリーの秘話を聞いた。(取材・文=吉原知也)

 何もかも突然だった。ツアーのため滞在していた中国・上海で、日本のテレビ番組から連絡が入った。急きょ受けたオンライン取材で、自分が“レジェンドのお気に入り”であることを知り、仰天した。実は、TBS系『情報7daysニュースキャスター』のインタビューで、クラプトンが“注目している日本人ギタリスト”を聞かれた際に、ソエジマの演奏をYouTubeで見ていることを明かしたのだ。放送後、大きな反響を呼んだ。

 ギターを始めたのは、中2の時。オンラインゲームに夢中になっていたが、父親の趣味であるギターを手に取ったのがきっかけだ。「父と母が車の中で聴いていた音楽は、今振り返ると大きいです。父がよく流していたサザンオールスターズは今も大好きです。洋楽だと、ローリング・ストーンズやドゥービー・ブラザーズ。自分から好きになったのはB’zです」。

 もちろん、クラプトンも。父から「これを聴きな」と渡されたCDが原点。ブルースを愛するクラプトンが、伝説的なブルース歌手のロバート・ジョンソンにささげた『セッションズ・フォー・ロバート・J』という作品だ。「DVDが付いていて、クラプトンさんが音楽仲間とちょっとしたスタジオでセッションするんです。その姿がかっこよく見えて、『あんな感じのセッションがしてみたい』と思いました」。ギターにのめり込み、佐賀から上京して立教大を卒業後に、本業にすることを決意。演奏技術を磨きながら地道な活動を続けてきた。

 YouTubeは2018年から始め、妻でミュージシャンのNahoや気心の知れた仲間とライブ演奏をする動画を積極的に配信。ライブ・カバー動画の再生回数は合計3000万回以上を数える。高い演奏力だけでなく、仲間たちとの距離感や信頼関係が伝わる映像は、海外でも高評価を得ている。少年時代に見たクラプトンのセッション映像は、言わば音楽の原風景だ。「今は『こんな感じのドキュメンタリーを撮影したい』という気持ちを持っています」。自分なりに解釈したスタイルによるYouTube音楽発信が、幸運なことにクラプトンの目に留まった。「考え得る中で最高の形でバズることができました」。不思議な縁を感じさせる。

 奇跡は連続した。クラプトンの音楽活動を長年支えているベーシストのネイザン・イーストの日本マネジャーともともと知り合いで、そのマネジャーが「何とか時間を作れないか」と調整に奔走してくれたことで、“神様との対面”が実現したのだ。日本武道館での来日公演中だったクラプトン。公演前にあいさつすることができた。

 ネイザンが先に来て、優しく話しかけてくれた。緊張が少しほぐれたところで、クラプトンが登場。「少しお話をした中でも、対等に話してくださりました。うれしかったです。人生、本当に何があるか分かりません」とひたすら感動した。Nahoさんとクラプトンの3人で撮影した記念写真は、一生の宝物だ。

「『今日も新しい音楽を探そう』。クラプトンさんから影響を受けました」

 大御所で80歳を迎えたクラプトンが、YouTubeでいろいろなミュージシャンを見て、今も新しい才能、音楽の楽しさを探している――。音楽ファンにいい意味の驚きを与えたことも確かだ。ソエジマ自身も驚嘆したことがあるという。「クラプトンさんから『このアーティストを知ってる?』という話をたくさんいただきました。僕自身はあまり知らなかったのですが、ネイザンさんが反応して『ほら、こういうベースのリフから始まる曲だよ』と歌うんです。会話の雰囲気としては、20代前半で、まだ何も持ってないけど夢を追うミュージシャンの卵たちが『この音楽がやばいよ』と話し合っている。それに近い感覚です」。

 目の当たりにした、純粋な音楽好きの姿。「ミュージシャンは、夢と現実の狭間で生きていて、例えば同業のミュージシャン同士だと、ギャラのこととか、そういった現実的な話をすることも多くなっていくものです。クラプトンさんたちは多分、純度が高いミュージシャンなのかなと思いました。そこから僕も意識的にいろいろな音楽を聴くようになりました。『今日も新しい音楽を探そう』って。クラプトンさんからものすごくいい影響を受けました。やっぱり上には夢しかないんだなって。僕も、夢がある世界線に行きたいなと思っています」。大きな活力を得た。

 あのクラプトンに認められた。そうなると、周囲の期待は高まってしまう。クラプトンがライフワークで取り組んでいる、慈善コンサートの『クロスロード・ギター・フェスティバル』。ソエジマに声がかかり、ステージ共演――。ファンの間で大きな夢が膨らむ。

「皆さんに期待していただいていると思うのですが、自分がやれることは、目の前の行動に落とし込むことだけです。毎年アルバムを出すことは目標にしたいです。これからもいろいろなセッションをしていきたいと考えています。ちなみに、この間アップしたライブ動画にネイザンさんが“いいね”を押してくれたので、ネイザンさんとはつながっています」。今後も、東南アジアなど海外ツアーが続々決まっており、これまで通り愚直に音楽活動にまい進していくつもりだ。

 今、改めて思うクラプトン。「完全に憧れです、だけど、次いつ会えるのかが分からな過ぎて、遠くなってしまったような。『今でも遠い存在の憧れのギタリスト』ですね」。その“いつか”は決して遠くないだろう。

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