ピコ太郎「一発屋だと思いますピ」 世界的ヒット『PPAP』から10年、率直な本音と新たな挑戦
シンガー・ソングライター、ピコ太郎の『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』が来年夏で10周年を迎える。SNSから火がつき、世界で6億回以上再生され、33の国と地域に招かれるまでになった1曲は、本人にとっても想像を超える出来事だった。ピコ太郎が改めてこれまでの歩みを振り返り、記念プロジェクト「Tottemo Release 80.8(トッテモ・リリース・ハチジュッテンハチ)」について語った。

33の国と地域に招かれるまでになったPPAPは「一種の発明」
シンガー・ソングライター、ピコ太郎の『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』が来年夏で10周年を迎える。SNSから火がつき、世界で6億回以上再生され、33の国と地域に招かれるまでになった1曲は、本人にとっても想像を超える出来事だった。ピコ太郎が改めてこれまでの歩みを振り返り、記念プロジェクト「Tottemo Release 80.8(トッテモ・リリース・ハチジュッテンハチ)」について語った。(取材・文=平辻哲也)
ピコ太郎が世界的ヒット『PPAP』を世に放ってから9年が経ち、まもなく10年となる。節目を迎える本人は、「とても長く、とても短かったピ」と振り返る。
「当時はネットのブームなんて1か月続けばいい方でしたピコ。でもPPAPは、いまだにTikTokで数千万回再生されている。45秒の曲を10年間も聴いてもらえるなんて、自分でもおかしいんじゃないかと思うくらいです。本当にありがたいこと。感謝と驚きと疲弊、いろんな気持ちが混ざった10年間でしたピ」
誕生のきっかけは、古坂大魔王が1997年に制作した『テクノ体操』のトラックだった。安価な機材で作られたノイズだらけのサウンドを流しながら、アドリブで歌詞を当てはめていった。
「ペンを持ってたから『I have a pen』って言ってみたピ。作家さんが笑ってくれて、古坂さんは青森出身だったから、特産のリンゴで、『Apple』。缶詰のパイナップルもあったから『Pineapple』。それをつなげてみた。45秒で考えて、45秒の曲になったんですピコ」
当初は映像化されることもなく、5年ほど眠ったままだった。転機をもたらしたのは、古坂のライブを見たテレビ朝日系『上田ちゃんネル』のプロデューサーの息子の一言だ。
「古坂さんのライブを見たお子さんが、『音源が欲しい』って言ってくれたんですピ。子どもが欲しがるくらいなら、出してみようかなって(笑)。あれをちゃんと録ろうって話になりましたピコ」
少人数のスタッフで撮影したシンプルな映像が、やがて世界を揺るがすことになる。BTSやBLACKPINK、TWICEといったアジアのトップアーティストたちも踊り、ジャスティン・ビーバーがSNSで紹介したことで瞬く間に拡散した。世界中のメディアから取材が殺到した。
「でも、最初にジャスティン・ビーバーがリツイートをしてくれたのは、中国系アメリカ人のパクリ動画だったんですピ。当時はあちこちにニセモノが出ていたピコ」
ブームは社会現象となり、ピコ太郎は33の国と地域に招かれ、トランプ大統領とも対面。「嵐のようだった」と本人は振り返る。
「全部招待されて行ったんですピ。ロシアやシリアなど危険な場所にも呼ばれました。行くことはできませんでしたが、シリアではSNSで『君のために1分間、戦闘を止めたよ』と言われたんです。たった1分かもしれませんが、その間にみんなが笑って、歌って、踊ってくれた。本当に忘れられない経験ですピコ」

“一発”を当てること「どれだけ大変か」
国内では「一発屋」と呼ばれることもあった。だが本人はそれを否定しない。
「一発屋って面白い言葉ですピコ。日本では沈んでいく人を笑うために使われますが、アメリカでは、『ワン・ヒット・ワンダー』と尊敬されています。でも“一発”を当てることがどれだけ大変か。僕は一発屋だと思いますピ。でも、1億人に2か月なのか、80億人に2年間なのか。もしそれを“一発”と呼ぶなら、ウサイン・ボルトさんだって一発屋ですピ(笑)」
PPAPは「一種の発明だった」とも語る。
「僕はラブソングも作りますけど、結局は“面白い”という概念で受け止められるピコ。でも、それでいい。人が笑ってくれるなら、それが僕の音楽なんですピ」
10周年を迎えるピコ太郎は、これからの活動に明確な思いを持つ。
目標は「ノーベル平和賞」。これまで積み重ねた経験を経て、今ピコ太郎が強く感じているのは「世界に恩返ししたい」という思いだ。
「あくまでもギャグですけども、このラッキーを社会的な意義を持って返していかないと思っているんですピコ。これだけ世界中に名前を知ってもらって、何もしないわけにはいかない。子どもたちを応援したり、笑顔を届けたり、世界に少しでも恩返しをしていきたいんですピ」
ピコ太郎の語り口は、あの独特なリズムと間を保ちながらも、時に真剣で熱い。PPAPから10年を経て、新たな一発で世界中を笑顔にするに違いない。
□ピコ太郎(ぴこたろう)2016年にYouTubeにアップした『PPAP(ペンパイナッポーアッポーペン)』の動画がジャスティン・ビーバーやCNN、BBCなどの世界メディアに取り上げられ、世界中で大ブレイクを起こす。日本人としては26年ぶりにアメリカビルボードHot100に入り、「ビルボードHot100にチャートインした最も短い曲」としてギネス世界記録にも認定されている。また、17年には、トランプ大統領来日時の晩餐会に出席を果たし、外務省からの任命でSDGs推進大使として活躍した経験を持つ。
