三遊亭円楽、寄席で披露興行初日 出番直前、神田伯山との会話で猛省「悪慣れしていた」

落語家の七代目三遊亭円楽(47)が1日、東京・新宿末広亭で円楽襲名披露興行の初日を迎えた。1階は桟敷席も含めて超満員、2階にも客が入るほどの盛況で、幸先のいいスタートを切った。以前、「寄席で披露目ができるのは夢です」と語っていた円楽。トリとして高座に向かう直前、人気講談師の神田伯山(42)との軽妙なやり取りが、瞬時に緊張へと変わったという。その理由は。

三遊亭円楽【写真:ENCOUNT編集部】
三遊亭円楽【写真:ENCOUNT編集部】

わずか4人の披露口上に伯山が毒づく「円楽師匠が嫌われているように見える」

 落語家の七代目三遊亭円楽(47)が1日、東京・新宿末広亭で円楽襲名披露興行の初日を迎えた。1階は桟敷席も含めて超満員、2階にも客が入るほどの盛況で、幸先のいいスタートを切った。以前、「寄席で披露目ができるのは夢です」と語っていた円楽。トリとして高座に向かう直前、人気講談師の神田伯山(42)との軽妙なやり取りが、瞬時に緊張へと変わったという。その理由は。(取材・文=渡邉寧久)

 開演前から、末広亭は祝福ムードたっぷりに包まれた。

 高座に向かう芸人は次々に、円楽を襲名する前の王楽との思い出を、祝福として口にした。中入り前に出演した講談師の神田伯山は「9割方、人殺しのネタしか持っていないので、(披露目に)ふさわしいネタがない」と笑わせつつ、縁起のいい「出世浄瑠璃」で会場を釘付けにした。その緊張感が、中入り休憩をはさんでも薄れないまま、披露口上が始まった。

 これまで、落語芸術協会の新真打ちや襲名披露興行には、口上に7~8人の師匠たちが並んでいたが、この日は司会の桂竹丸(68)、三遊亭好楽(79)、伯山、そして当事者の円楽の4人という小所帯。伯山が「まず何を考えるかというと、なぜ4人なのか、いつも7、8人は並んでいた。円楽師匠が嫌われているように見える」と冗談めかしてぼやくと、隣の竹丸が伯山を突っつきながら制止する仕草。伯山は「(それが)リアリティーが増しちゃう」とかき混ぜ、さらに会場の笑いをさらった。

 口上に並ぶ人数に関しては、理事会で議論されたようで、7、8人が多いからという理由で、今回は試しに4人バージョンで実施されたという。決して、円楽が嫌われているわけではない。円楽の兄弟子で、父である好楽は「末広亭に出してもらえることがうれしい。私が一番好きな寄席です。末には一枚看板(=売れっ子)になれますよう、ひとえにお願いいたします」と、新円楽の今後を願った。

 トリを務めた円楽は、これまで全国のホール等で30ほどの披露興行を行ってきたが、その中で一番しゃべって来た口なれた噺、江戸時代の儒学者・荻生徂徠と豆腐屋の縁を描いたハートウォーミングなネタ「徂徠豆腐」を披露した。

 普段通りにしゃべることはできたと振り返るが、出番直前、異変が生じたことを、終演後に吐露する円楽。緊張させたのは出囃子「元禄花見踊」が、楽屋のお囃子さんによって奏でられ始めた、まさにその瞬間だったという。「元禄花見踊」は五代目円楽、六代目円楽の出囃子だった。七代目として、出囃子も引き継いだ円楽が振り返る。

「高座に上がるまでは、後輩たちがテキパキ働いてくれて、行き届いていて、普段通りだと安心していたのですが、トリの高座に上がる直前、伯山が『真打ち(昇進)のときみたく緊張しないでしょう』と聞いてきて、こっちも『そうだね、経験値もあるからね』って軽く答えていたんです。ところがその会話が終わった途端、出囃子の『元禄(花見踊)』がかかった。急に小屋の(歴史の)重みと円楽という名跡の重みがよみがえって来たんです。披露興行の最初の頃には感じていたんですが、悪慣れしていたんですね。これから末広亭(の高座)に上がるんだ、六代目も上がったんだ、と思ったら、一挙に緊張しましたね」

 そのまま高座に上がった円楽を迎えたの万雷の温かい拍手。「お客さんに救われました」と感謝しつつ、きっちり高座を勤めることができた。

 寄席での披露興行は10日まで末広亭で、その後浅草演芸ホールで行われた後、12月には池袋演芸場が控えている。

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください