「99歳とは思えない…」高島礼子が受けた衝撃、石井ふく子さんのエネルギー「稽古場でもずっと立ちっぱなし」

俳優の高島礼子が、舞台『かたき同志』(大阪・新歌舞伎座で8月30日から9月21日まで)で藤山直美と初共演する。本作は橋田壽賀子作・石井ふく子演出による傑作喜劇。演出の石井さんは9月1日に99歳を迎え、本公演は白寿記念と銘打たれる。高島は、石井さんの変わらぬ元気な姿に驚きと刺激を受けたそうで、作品への思いや役柄、意気込みを語った。

インタビューに応じた高島礼子【写真:増田美咲】
インタビューに応じた高島礼子【写真:増田美咲】

舞台『かたき同志』に出演

 俳優の高島礼子が、舞台『かたき同志』(大阪・新歌舞伎座で8月30日から9月21日まで)で藤山直美と初共演する。本作は橋田壽賀子作・石井ふく子演出による傑作喜劇。演出の石井さんは9月1日に99歳を迎え、本公演は白寿記念と銘打たれる。高島は、石井さんの変わらぬ元気な姿に驚きと刺激を受けたそうで、作品への思いや役柄、意気込みを語った。(取材・文=平辻哲也)

「こんな役もやられるんだ」――13年前、舞台『かたき同志』を客席から見た高島は、当時お鶴役を務めた三田佳子の姿に衝撃を受けたという。

「三田さんって、私の中では理想の上司とか医者役とか、すごくクールで知的な女性のイメージが強かったんです。それがこの舞台では、お酒好きで、酔っぱらって、子どもに小言を言うお母さんを全力で演じられていた。そのギャップがすごく新鮮で、『ああ、こういう芝居もやられるんだ』って感服しましたし、私もいつか、こういうふうに自分を全部投げ出して演じることができる日が来るのかなと、強く思いました」

 物語の舞台は江戸の下町。庶民的な飲み屋「ひさご亭」の女将・かめ(藤山)と、老舗呉服問屋「越後屋」を切り盛りするお鶴(高島)。川を挟んで暮らす二人は、生まれも気質も正反対だ。ある日、ひさご亭の息子・清太郎(木戸邑弥)と、越後屋の娘・お袖(込山榛香)の恋が明らかになり、もともとの生活の違いもあって大げんかに発展する――。

 高島は「舞台の中で、あんなに真正面からぶつかる母親同士って珍しいと思うんです」と語る。

「お互いの息子や娘を思う気持ちは同じなのに、出会い方も暮らしも全く違うから、当然価値観もぶつかる。橋を挟んで暮らしてきた“あっち側の人”と“こっち側の人”が出会った瞬間、火花が散る。そのやり取りがすごく面白いですし、後半になると、2人が少しずつ歩み寄っていく過程がとても温かいんです」

 稽古は8月1日から東京で始まった。

「楽しい半分、怖い半分ですね。台本はかなりのセリフ量で、踊りや歌の場面もあるんです。舞台って映像と違って、その場で相手の呼吸や反応を感じながら臨機応変に動くことが大事なので、セリフをカチカチに覚えすぎてもダメなんですよね。ある程度準備して臨むけれど、稽古での発見を大事にしたいです。やってみないと分からないことも多くて、不安とワクワクが同居しています」

藤山直美との「化学反応を思いきり楽しみたい」と語った【写真:増田美咲】
藤山直美との「化学反応を思いきり楽しみたい」と語った【写真:増田美咲】

初共演の藤山直美は「とにかく優しくて面白い方」

 演出を手がける石井さんは、9月1日に99歳を迎えるが、今も現場に立ち続ける。高島は2010年の明治座『女たちの忠臣蔵』で初めて出会い、「その頃から全く変わらない」と感嘆する。

「先生は稽古場でずっと立ちっぱなしで、正座から手をつかずにすっと立ち上がられるんです。私なんて着物で立ち上がるのも一苦労なのに(笑)。『立てないからどうにかして』じゃなくて、『頑張ってね』と一言。それが当たり前なんです。真面目な私は、しっかり見ていただきながら指導を受ける方が安心しますね。『自由にやって』と言われる方がむしろ怖いくらいです」

 初共演となる藤山については「にこにこされていて、とにかく優しくて面白い方」という印象だという。

「大阪の番組では皆さん『舞台の鬼だから』っておっしゃるんです(笑)。きっとご自分にすごく厳しい方なんだろうと思います。私は藤山さんの面白さを引き立てられるように、やりすぎず、でもちゃんと受け止められるような芝居を心がけたいですね。お互いに刺激し合って、新しい化学反応が生まれるのが楽しみです」

 お鶴役のポイントについて尋ねると、「生まれたときからお嬢様」という芯の強さを挙げた。

「かめさんに引っ張られすぎないように、お嬢様としての軸は崩さない。でも後半には、かめさんの影響で、長くまとってきた鎧が少しずつ剥がれていく。その変化をお客さまに感じてもらえるように演じたいです」

『かたき同志』は、笑って泣けて、最後は心が温かくなる物語。「多くの方に楽しんでいただける舞台にしたいし、自分も藤山さんとの化学反応を思いきり楽しみたい」と、力を込めて語った。

□高島礼子(たかしま・れいこ)1964年7月25日、神奈川県出身。88年『暴れん坊将軍III』でデビュー。映画『さまよえる脳髄』(93年)で初主演を果たす。『陽炎』シリーズ2、3、4(96年~98年)にて主演を務め、『極道の妻たち 赤い殺意』以降のシリーズ(99年~2005年)でも主演を続投する一方、舞台、ドラマ、CMでも活躍。ドリームワークス製作のアニメ『マダガスカル』シリーズ(05年~12年)の日本語吹替版の声優にも挑戦。01年、映画『長崎ぶらぶら節』(00年)で、第24回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。

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