【スターダム】冷酷なサイコパス・小波が過ごしてきた10年間 朱里との複雑な関係、木村花さんへの思い
今年プロレスデビュー10周年をひっそりと迎えた選手がいる。スターダムの小波、その人だ。”女寝技師“とも称される格闘色の強いプロレスをする小波は、同じスタイルの朱里とは切っては切れない縁だが、今や“Ms. Icicle Psycho(冷酷なサイコパス)”とも呼ばれる小波の感情は複雑だ。そこに現れた外敵・Sareeeという存在。そして忘れてはならない、あの選手のこと。今、その強さと巧さがクローズアップされている小波を直撃した。

頼れる存在の朱里を裏切ったのは、自分なりの恩返し
今年プロレスデビュー10周年をひっそりと迎えた選手がいる。スターダムの小波、その人だ。”女寝技師“とも称される格闘色の強いプロレスをする小波は、同じスタイルの朱里とは切っては切れない縁だが、今や“Ms. Icicle Psycho(冷酷なサイコパス)”とも呼ばれる小波の感情は複雑だ。そこに現れた外敵・Sareeeという存在。そして忘れてはならない、あの選手のこと。今、その強さと巧さがクローズアップされている小波を直撃した。(取材・文=橋場了吾)※8.23大田区大会前に収録
小波は体調の関係もあり一時的にプロレスから離れていた時期があるが、今年2月にプロレスデビュー10周年を迎えた。
「そうだね、記念試合にはこだわりはなくて。この10年は波乱万丈ではあったんだけど、プロレスラーとして何か大きいタイトルを取ったとか、大きい試合を成し遂げたとか、そういうのは自分ではなかったと思っているから。(プロレスラーとして)まだまだ成し遂げられた感じじゃないから、10周年ということをアピールはしなかったんだよね。まあでもあっという間だったよ。自分の中では、できることを全力にはやっていたんだけど、なんだろうな……タイミングがすべて合わなかったというか。
自分が上がっていきたいタイミングで、仲間の死も含めて大きい分岐点がいろいろあったんだよね。団体の生え抜きでずっとやっていれば安定したレスラー生活が送れたと思うけど、自分の場合はデビュー当時は団体に所属していなかったから、ずっと試合が保証されていて練習する場所もあってという環境ではなくて。自分がレスラーであるために必死に生きてきたので、チャンスをつかみきれなかったところはあったかなとは思う」
小波はもともとプロレスファンで、地元広島でプロレスの練習をしていた。その後、華名(現・WWEのASUKA)の個人事務所の練習生となる。その下準備として、格闘家・藤井惠主宰ジム「BURST」で格闘技の基礎の練習を積んでいた。
「格闘技の要素をプロレスに取り入れるのは、すごく難しくて。格闘技を見たいお客さんは格闘技を見に行くわけで、特に女子プロレスに求められているものってアイドル的な要素だったり、派手なエンタメに近いものだったりするので。でも、絶対に基礎になっている戦いの部分は、エンタメに寄ったプロレスの中でも見落としてはいけない部分だとずっと思っているんだ。でもそれをすぐに気づけたのは、格闘技経験があったからで。デビューしたときに、朱里とは格闘スタイルについてはたくさん話をしたし、教えてもらった。華名さん、朱里、田中稔さん……格闘スタイルでやっていた選手に教えてもらえたから、今があるのかなとは思うね」
今、小波はスターダムのリングを席巻する悪の集団・H.A.T.E.に所属しているが、その前身であった大江戸隊には朱里を裏切って再加入を果たしている。
「(デビュー当時は)上下関係がすごく厳しくて、一番下の自分が気軽に先輩と話せる環境ではなかった。自分でもそういうものだと思っていたし。ただ朱里だけは向こうからフレンドリーに話しかけてきて、頼れる存在だったことは確かだよ、同期もいなかったし。だから徐々に自分の考えも伝えられるようになって、何もない自分に手を差し伸べてくれた存在ではある。今は思うところあって離れ離れだけど、これは私にとっての朱里への恩返しでもあるんだ」

TCSは“花あってのユニット”だったから解散させた
小波がスターダムに継続参戦するようになったのは2017年から。2018年に正式にスターダムに入団し、2021年いっぱいで体調の都合もあり退団。そして2022年からの2年間は単発で参戦し、2024年4月に再入団を果たした。
「スターダムが一番勢いのある団体だと思っていた。ただ、自分がスターダムに参戦したときは有名な先輩方が抜けていくタイミングだったので、団体として結構大変な時期だったんだよ。自分は生え抜きではないけど、生え抜きと同じくらいの気持ちで、近いキャリアのみんなでスターダムの危機を一緒に乗り越えようと頑張ったんだよね。その中で、仲間が増えてブシロード体制になってスターダムも認知されてきて。そういう時代を一緒に過ごしてきたから、スターダムが一番というプライドを持っているんだよね。だからこそ、(退団して)戻るのはスターダムだと思っていたし、引退するまでスターダム所属でいたいという気持ちは変わっていないよ」
2020年、世の中はコロナ禍。スターダムでも、木村花さんという将来有望な選手を失ってしまった。当時の小波は、花さんがリーダーだったTOKYO CYBER SQUAD(以下TCS)の中心メンバーだった。花さんの逝去後、TCS継続を訴えていたジャングル叫女を裏切る形でTCSを解散させた。
「花の影響は大きかったね……。プロレスの面でも、プライベートの面でも。ユニットのリーダーがいなくなっただけでなくて、親友といえるくらい仲が良かった三人(花さん、小波、叫女)の一人がいなくなったことで全部が崩れていった感じだった。三人だからうまくやれていた部分がギクシャクすることもあったし、平然を装っていても心のダメージはあったよね。その影響は花がいなくなったすぐではなくて、少し経ってから出てきた感じで。コロナ禍で試合がない中でバランスが崩れて、会って話すこともままならない状況だったから、ジャングルとの考え方の相違も出てきたし。ジャングルは、ずっと花がいた時間を続けたいという考えだった。
でも自分はそうではなくて、花は自分自身のことよりもプロレスのこと、仲間のことが好きでそれぞれの人生を歩んでほしいと思っていると。TCSは花あってのユニットだったし、私とジャングルが中心になったとしても、当時はまだプロレスラーとしてのキャラクターができていなかった吏南や琉悪夏(当時のリングネームはルアカ)が迷ってしまうというのもあったし……。だから私は解散した方がいいと思って、でもジャングルは続けたかった。どっちもその人なりの正義だと思うから、いい悪いという問題ではなくて。でも花にはもう聞くことができないから、みんなの人生、自分自身の人生を歩むために解散させる方向に持っていったんだよ」
(30日掲載の後編へ続く)
