【あんぱん】最終回は“100通り”考えた 脚本家・中園ミホさん「みんなの意見も参考にしながら」

俳優・今田美桜が主人公・のぶを、北村匠海が柳井嵩を演じるNHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の脚本家・中園ミホさんが、同作の取材会に出席し、これまでの130回を振り返って印象に残るシーンや自身の中のある変化などを語った。作品は漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルに戦前から戦後の激動の時代を生き抜く夫婦を描く物語。

脚本家の中園ミホさん【写真:(C)NHK】
脚本家の中園ミホさん【写真:(C)NHK】

脚本家・中園ミホさんが振り返る130回

 俳優・今田美桜が主人公・のぶを、北村匠海が柳井嵩を演じるNHK連続テレビ小説『あんぱん』(月~土曜午前8時)の脚本家・中園ミホさんが、同作の取材会に出席し、これまでの130回を振り返って印象に残るシーンや自身の中のある変化などを語った。作品は漫画家・やなせたかしさんと妻・暢さんをモデルに戦前から戦後の激動の時代を生き抜く夫婦を描く物語。

BMW、ベンツにプジョー…人気女優の“多国籍”な歴代愛車(JAF Mate Onlineへ)

 最終回で描かれた展開には意外な舞台裏があった。

「脚本家は、書き始めたくらいの時期から最後の結末をぼやっと考えているんです。書き進めるにつれて、こういう感じかな、やっぱりこうかな……って。今回も、実は100通りくらいの終わり方を考えていましたが、朝ドラは1年以上にわたって自分の体を使って役と向き合ってきた出演者、そして、本当にたくさんのスタッフと一緒に作る作品なので、みんなの意見も参考にしながら最終回を書きました」

 嵩のモデルのやなせたかしさんとは知り合いで、少女期から文通をしていたという中園さんがモデルと思われる少女も第22週で登場した。ちょっと生意気な少女。中園さんとやなせさんとの実際の会話がベースだったのか。

「さすがにあそこまで失礼ではなかったです(笑)。実在するモデルがいる場合、家族がご覧になったらどう思うかなと気を使わないといけないところもあります。ただ、私はクセの強いキャラクターを書くのが好きですし、一度“クソガキ”みたいな子を書きたいと思っていたんです。自分がモデルだったら構わないだろうと思って、思いきりものすごく生意気な子にしてみました」

 そんな生意気な少女にも嵩の作品が響くことを示す重要なシーンとなった。

「もし10歳当時の私が訪ねて行ったら、うわ、こんなボロいところに住んでいるんだとまず思ってしまうなと。口にするかどうかは別ですけど、思ったことを全部言わせてみたらすごく気持ちがよかったです(笑)。でも、嵩の詩に救われている部分は本当の話なので、そこは外してはいけないと思いました。そんな子にも届くやなせさんの言葉。そこだけはデフォルメせずに書きました」

 一番印象に残っているのはどんなシーンだろう。

「のぶが嵩に『嵩の2倍、嵩のこと好き!』と自分から抱きつくシーンです。あれを見た時、号泣してしまいました。2人の演技もすばらしいし、のぶに本当につらい役を課していたので、やっと子どもの頃の自由で天真爛漫な自分に戻れたんだと、あのシーンで感じました。映像を見たときに、『おめでとう、良かったね』と感じたことがすごく印象に残っています」

 書き終わってやなせさんの印象が変わったということはあるだろうか。

「私の知っているやなせさんはもっと明るくて声も大きい方でした。でも、北村さんがご自分の肉体を通して演じてくださったのを見て、ひょっとしたら、ああいう人なんじゃないのかなと、段々、思えてきたんです。私の知っているやなせさんは、よそ行きの顔であって、子どもの前で明るく楽しそうな顔をなさっていたけど、本当のやなせさんは、北村さんが演じてくださっているようなナイーブな方だったのでは、と今は思っています」

 一方で、あらためて思いを強くしたこともあるという。

「やなせさんとのぶさんの人生を通して、正義は逆転するものだから簡単に信じちゃいけない、ということを書こうと思って書き始めた作品ですが、130回まで書いて、俳優さんたちが魂を込めて演じてくださると、一層、その気持ちが強くなりました。かっこいいものや強いものに自分がなびきそうになったら警戒しようとか、戦争に世の中が傾いていく時、他人事としてではなく、自分の事としてとらえないといけないとか、そういう気持ちはすごく強くなりました」

 暢さんがのぶを見て何と言うと思うか。

「全然、違うじゃないと言うと思います。ドラマの都合で、嵩とのぶを幼なじみにしていますし。でも、やなせさんは幼い時、気が弱くて、男の子ではなく女の子と遊んでいたのは史実なんです。それをのぶにしたのは私の責任なので、そこはどうなっているのよと叱られるかもしれないです(笑)」

 やなせさんが見たら何と思うだろう。

「やなせさんを私以上に知っている戸田恵子さんと作家・梯久美子さんがすごく喜んでいると思うと言ってくださったので救われました。今は、それを信じようと思っています」

トップページに戻る

あなたの“気になる”を教えてください