まねきケチャ、10周年公演は熱狂と涙の3時間 サプライズづくしの“新章”へのプロローグ

アイドルグループ・まねきケチャは14日、グループ10周年を記念したワンマンライブを東京・Zepp Shinjukuにて開催した。

10周年公演を開催したまねきケチャ【写真:イシハラタイチ】
10周年公演を開催したまねきケチャ【写真:イシハラタイチ】

アニバーサリームードに包まれたZepp Shinjuku

 アイドルグループ・まねきケチャは14日、グループ10周年を記念したワンマンライブを東京・Zepp Shinjukuにて開催した。

 フロアへと続く通路にはグループが重ねてきた公演で撮影された記念写真の数々が。会場内にはステージの背景に加えて、サイドのスクリーンにも10周年を祝うサイネージが。アニバーサリームードが会場全体を包んでいた。

 開演を告げる爆音のオーバーチュアが響き渡ると、和風パレード仕立てのオープニング映像がスクリーンを彩った。

 熱気を高めたフロアに向けて1曲目に5人が選んだのは『SPLASH』だった。2018年に開催された代々木フリーライブの際に初披露され、夏の定番曲となった同曲。5人のパフォーマンスに合わせてフロアに降り注ぐ青いレーザーはまさにスプラッシュ。タオルを振り回してフロアに煽り上げたのち、アウトロではそのタオルを客席へとスローイン。驚きの声に続いて、オーディエンス同士がキャッチを称え合う声援が起こるピースフルな幕開けとなった。

 続く2曲目は王道のアイドルソング『ひょっとしてすきですか?』。フロアから盛大なコールが巻き起こるなか、センターを務める神崎ひなが代名詞的なパフォーマンスである「ばっきゅん」を決めるとフロアはさらにギアを一段踏み込んだ盛り上がりを見せた。

 冒頭2曲を披露し、「あなたに福を招きます」とフロアに告げた神崎。「もう最初から本当にみなさん盛り上がりが最高です。今日はいっぱい声出して楽しんでいきましょう」とフロアに声をかけて5人が突入したのは、グループの定番ライブチューンである『一刀両断』。“君を縛るすべての足かせを ぶった斬れ 斬れ 斬れ 斬れ 斬り壊せ”というストレートなメッセージを、サイリウムを刀に見立てたダンスとともにフロアにぶつける5人。曲の終わりをサイリウムを振り下ろす振りで締めくくると会場はさらに強い一体感に。

 続く『妄想桜』では堀内すずが圧倒的なボーカルで冒頭部を歌い上げると、残る4人も歌とダンス、さらにはラップまでを駆使して応えていく。グループのデビュー曲である『告白のススメ』から急激に存在感を強めたのは三井いろは。無垢な笑顔とファニーな歌声で、堀内とともにパフォーマンスをけん引。せりふパートで「これから先もいろはのことひとり占めしてくれますか」と誘いかけたかと思えば、次曲『うじゃ』でも歌い出しを務めてフロア前方にサークルも発生する盛り上がりを先導した。

新曲『言えたらいいのに』を初披露【写真:イシハラタイチ】
新曲『言えたらいいのに』を初披露【写真:イシハラタイチ】

年をまたいでの全国ツアーが決定

 ライブ序盤を駆け抜けた5人はロングバージョンの自己紹介を披露してオーディエンスとコールアンドレスポンス。その勢いのままに『モンスターとケチャ』『恋霞』『あたしの残り全部あげる』と人気曲を重ねていく。ボルテージ高まるフロアに対して、5人は新曲『言えたらいいのに』を初披露。倍速を行き来するリズム、エモーショナルなメロディー、それらをドライブする生歌で届けるという、まねきケチャが10年間にわたって続けてきた<型>を受け継ぐグッドチューンだ。

「好きという気持ちを伝えたいけれど、それを言葉にすることで何かが壊れてしまいそうで言い出せない。そんな心の葛藤と、勇気を出して想いを届けようとする決意を描いたラブソングです」と曲後のMCで語ったのは凪咲楓。「今日は3時間のライブになるけれど、まねきの曲を詰め込めていない」と語り、セットリストはこのライブのために編曲した特別なメドレーへ。

 ライブ定番曲『カクカクシカジカ』、現体制のデビュー曲『ヲタク体操アイドル謳歌』、アニメのタイアップ曲『Awesome』、デビュー曲のカップリング『愛言葉』、『ゲゲゲの鬼太郎』第6期のEDテーマとなった『鏡の中から』。グループの歴史を辿るような選曲の後、メドレーを締めくくったのは5人が所属するコレットプロモーションの社歌として全グループがパフォーマンスする『僕+君とか』。合計6曲を矢継ぎ早に繰り出したあと、5人はモニターの奥からサインボールを取り出し客席へスローイン。投げ込みに夢中になった早瀬結実が曲終わりのフォーメーションに戻れないというアクシデントも、10周年にあたってオーディエンスへの感謝を大切にする彼女のけなげさゆえだろうか。

 前半戦を終えたMCで5人は新情報の告知へ。三井の生誕祭、神崎の初の写真集といったトピックを伝えた後、今年から来年へと年をまたいで開催の全国ツアーも発表。ファイナルとなる東京・恵比寿LIQUIDROOMに向けて、早瀬の出身地である青森なども経由しながら全国6都市を巡る旅程を明らかにした。

 ライブ後半は5人の歌の魅力を堪能させるバラード軸の展開に。『難攻不落』ではクライマックスでバブルがフロアへ降り注ぎ、オーディエンスの端末に幻想的な像を記録したことだろう。その後も『引き算』『相思い』と続けてスケール感のある世界観を表現していく。

卒業メンバー3人がサプライズで登場【写真:イシハラタイチ】
卒業メンバー3人がサプライズで登場【写真:イシハラタイチ】

日高里緒の加入が電撃発表

 そしてライブは残す4曲へ。『どうでもいいや』で5人のリードボーカルを取った早瀬、マイナスイオンを含んだかのような優しい倍音もこの日は特別な熱気を含んだ。『愛と狂気とカタルシス』では情熱的な調べに5人の息の合ったダンスが絡み合い、フロアを飲み込むうねりが。そして、満場の期待に向き合い5披露したのは『昨日のあたしに負けたくないの』。この日のステージングはすでに2時間近く。疲労とプレッシャーの果てに、グループの10年を塗り替えようと、声を張り上げるようにして歌を畳みかける5人の熱演。サビが来るたびにフロアに乱立する”推しジャン”は、アスファルトを突き抜けて芽吹く春の緑のような力強さを持っていた。

 本編のラストとなったのは『タイムマシン』。武道館公演をはじめ、グループのさまざまな公演のクライマックスに響いてきた楽曲だ。冒頭で「別に泣くほどのことじゃないけど」と歌い上げた凪咲だったが、曲の終盤、彼女の目には涙が。声をむせびながら歌を続ける凪咲とそれを支える4人の残像を残して10周年のステージは一度幕を閉じた。フロアは凪咲の涙の真意を知ることなく―――。

 本編を終えて、熱いアンコールがうねりをあげる最中、突如ステージに一つの文章が映し出された。

「まねきケチャから大切なお知らせがあります」

 メッセージに続いてスクリーンには新曲『なんでもない今日が愛しくて』のミュージックビデオが映し出される。そこにあったのは5人ではなく、6人の編成によるパフォーマンス。どよめくオーディエンスの前にまねきケチャが再び姿を見せると、5人に加えて日高里緒の姿が。間髪入れずにフロアに響いたのは先ほど聴いたばかりのミュージックビデオの楽曲だ。幻想的なピアノの調べに乗って、切迫感のある細かな譜割のメロディーが積み重なる楽曲。緊張感のある曲調の中で、6人は「なんでもない今日が愛しくて だってだってだって君がいるから」という印象的なリフレインを歌い上げた。

 パフォーマンスを終え、日高自身の口から今回の加入に関する経緯が語られる。

「10月19日から12月まではベンジャス!と兼任をさせていただくことになりました。6年間所属していたグループが現体制終了となり、今後について考えていた時にプロデューサーさんからまねきケチャに加入しないかとお話をいただきました。最初はとってもびっくりして不安だったんですけど、今日皆さんのステージを見て本当にすごく感動して、私も一緒に6人でまたイチから頑張っていきたいなと思っています。私が加入してよかったと思ってもらえるように、まねきケチャを少しでも盛り上げていけるように精一杯がんばります」

 日高のMCを受けて、メンバーそれぞれが思いを口にするなか、凪咲は声を詰まらせながら、自身の加入からメンバー体制が何度も変更となったことや、現体制となったまねきケチャを好きと言ってくれるファンへの感謝を伝えた上で、「初めこの5人になった時も、何の信頼関係もない真っ白な5人でした」と本音を吐露。あまりの真っ直ぐな表現に会場からは笑いも起こるなか、「でもこうやってみんなに愛してもらえる5人になることができました。だからこれからは愛してもらえる6人になれるよう支え合って頑張っていく」と思いを語った。

 各々の心境を語った後、ステージの6人は新曲のリリースを発表。大きな拍手を受けて日高はこの夜のステージを後にした。驚きと期待の入り混じったフロアへ、<5人>に戻ってパフォーマンスしたのは『ありきたりな言葉で』。ここまでの5人とグループのこれからを願うように、この日最も激しいコールが巻き起こる。さらに5人はまねきケチャを象徴する楽曲『きみわずらい』へ。落ちサビで再び目を腫らして歌を歌うのは凪咲。詞の一言一言にすべての体重を乗せるかの熱唱は5人の思いを代弁し、観客の胸を打った。

 ラストでは銀テープ、そこにはメンバーから来場者へのお礼が書かれていたが、そこに何が書かれていたかは公演に訪れた方だけの秘密にすべきだろう。もう一つ、付け加えるとするならばこの日に実施されたダブルアンコール。サプライズで卒業メンバーである松下・中川・宮内が登場。大いなるフロアの盛り上がりは「まねきケチャ」というフォーマットが、10年の時をへても変わらない強固な爆発力を備えることを証明していた。

 まねきケチャが10年の時間で培ってきた楽曲やパフォーマンスのイズム。それを受け継いで2年に満たないわずかな期間でZepp Shinjukuまで辿り着いた神崎、凪咲、三井、堀内、早瀬の5人。そしてそこに加わる最強の新人である日高。まねきケチャの10周年公演で見えたのは同窓会のような温かいセンチメンタリズムではなく、それとは真逆にある現在進行形の鼓動。10年続く枠組みの中、懸命にグループと自分自身に懸ける理想を追い求める若き見習い天使たちの、挑戦者としての立ち姿だった。

次のページへ (2/2) 【写真】まねきケチャ10周年記念ライブの別カット
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