アニメ『アズワン』で声優初挑戦 丸山隆平「父親役が新鮮」…監督に言われた“練習の跡”とは

長編アニメーション映画『アズワン/AS ONE』(8月22日公開、静野孔文監督)で声優に初挑戦したSUPER EIGHTの丸山隆平。演じたのは、ヒロイン・ラコ(白石晴香)の父であり、惑星・巡星(メグリボシ)の未来に関わる研究者・ルロワ博士。言葉と声だけで“父”を演じるという難役に挑んだ丸山は、その裏にある深い感情と、普遍的な親子の距離を真摯(しんし)に見つめていた。

収録に向けてさまざまなアニメを見返した【写真:くさかべまき】
収録に向けてさまざまなアニメを見返した【写真:くさかべまき】

『チェンソーマン』や『ダンダダン』なども参考

 長編アニメーション映画『アズワン/AS ONE』(8月22日公開、静野孔文監督)で声優に初挑戦したSUPER EIGHTの丸山隆平。演じたのは、ヒロイン・ラコ(白石晴香)の父であり、惑星・巡星(メグリボシ)の未来に関わる研究者・ルロワ博士。言葉と声だけで“父”を演じるという難役に挑んだ丸山は、その裏にある深い感情と、普遍的な親子の距離を真摯(しんし)に見つめていた。(取材・文=平辻哲也)

「全部を言葉にすることが愛じゃないと思うんです」

 自分自身は親になった経験はないと前置きしたうえで、「血を分けていても、子どもって“別の生命体”なんですよ」と語る。ラコのような子どもが何を選択するのかを“見守ること”の大切さを、今回の役柄を通じて強く感じたという。

 ルロワは研究者でありながら、1人の父として葛藤を抱えた存在だ。惑星を救うという使命と、娘にしかできないことを託す苦悩の間で揺れている。「自分がやれればいい。でも、あの子にしかできないことなんだ」と、複雑な思いをにじませた。

 収録に向けて、さまざまなアニメを見返した。

「その作品によって求められる“声”って違うじゃないですか。たとえばジブリ作品は実写に近いナチュラルな声が多いけど、もっとキャラクターに特化した“作り込んだ声”の作品もある」

「今回はどっち寄りなのかな?って考えて、どちらにも対応できるように準備しました」と話し、『チェンソーマン』や『ダンダダン』など最近のアニメも参考にした。

 収録では、最初は作り込んだ声を試してみたが、途中からは「このままで行ってみようか」ということになった。

「実は今、ルロワがどんな声だったかもう正確には覚えてなくて……。その時自然と出てきたものが“あの声”だったんです。監督からも『相当練習してましたね』って言ってもらえて、自分が練り込んだものが伝わったんだなって思えてうれしかったです」

 アニメーション未完成の状態での収録だったことから、「表情を想像させる声」を求められる難しさも実感した。「それが“声優という仕事のすごさ”だなって、めちゃくちゃ実感しました」

 ルロワというキャラクター像については、「まず“父親”という時点でとても新鮮でした」と話す。「指揮官でもないし、研究者でオタク気質というか、ベースアンプを作ってるおっちゃんみたいな。星血の結晶についてはスラスラ話せるけど、それ以外は口数少ない、みたいな」と表現した。自身の記憶の中の人物やアニメキャラを混ぜて役作りしたという。

声の作り方について意識したこととは【写真:くさかべまき】
声の作り方について意識したこととは【写真:くさかべまき】

他キャストの声を聴いて刺激

 収録現場については、「とても丁寧で優しい現場でした」と感謝を述べる。「初めてって1回しかないじゃないですか。だからこそ、こんな素敵な現場でよかったなと思います」

 収録は1人ずつ行われたため、共演者との直接的な掛け合いはなかったが、他キャストの声を聴いて刺激を受けた。

「声優さんってすごいですよね。最近はルックスも良くて、バンドやったりアイドル的だったりして。“この声ってあの人か!”ってなる瞬間が多かった。『ゴールデンカムイ』とか『アナ雪』もそう」

 声の作り方については、「意識しないようにしました。作りに行くと“ハリボテ感”が出ちゃう。だから“内面から出すこと”を大事にしたかった」と語る。「どうせ技術がないなら、体当たりでぶつかるしかない。そういう気持ちで挑みました」

 SFながらも主人公たちの心情には、現代的なリアリティーを持っていると話す。「国家や権力の話をそのまま描いたら“どこの国のことやん”ってなるけど、ラコとヨウの関係性を通して、もっと普遍的なことを描いてると思います」

 丸山は実写映画『金子差入店』(2025年5月公開)でも父親役を務め、ぶっきらぼうながらも家族を想いながら主人公を演じた。声のみで“父”を描いた『アズワン/AS ONE』、身体全体で“父”を表現した『金子差入店』。異なるアプローチながら、両作に共通して流れるのは「親子の間にある距離と理解の物語」だ。

 2人の“父”を演じたこの時間は、丸山隆平にとって、自身の表現の幅と深さを見つめ直す時間でもあったのかもしれない。

□丸山隆平(まるやま・りゅうへい)1983年11月26日生まれ、京都府出身。2004年、シングル『浪花いろは節』でCDデビュー。歌手、ベーシスト、俳優として活躍。主な出演作は、『フリーター、家を買う。』(2010)、『ストロベリーナイト』(12)とその映画化(13)、『エイトレンジャー』シリーズ(12・14)、『泣くな、はらちゃん』(13)、『地獄先生ぬ~べ~』(14)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)、『誘拐法廷~セブンデイズ~』(18)、『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』(19)、『大江戸グレートジャーニー ~ザ・お伊勢参り~』(20)、『着飾る恋には理由があって』(21)、『金子差入店』(25)など。舞台では、ブロードウェイミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(22)、『浪人街』(25)などに出演。

ヘアメイク:中嶋竜司(HAPP’S.)
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)

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