「自分の声が邪魔にならないか」 丸山隆平、SFアニメで声優初挑戦…プレッシャーの中で探った役の多面性

SUPER EIGHTの丸山隆平が、長編アニメーション映画『アズワン/AS ONE』(8月22日公開、静野孔文監督)で声優に初挑戦する。演じるのは、物語の鍵を握る研究者・ルロワ博士。壮大なSF世界の中で、丸山は“声”のみで複雑な人物像に命を吹き込んだ。アニメ愛に満ちた原体験から、今回の挑戦に込めた覚悟、そして作品への深い共感を語ってくれた。

作品への深い共感を語った【写真:くさかべまき】
作品への深い共感を語った【写真:くさかべまき】

『アズワン/AS ONE』に“声出演”

 SUPER EIGHTの丸山隆平が、長編アニメーション映画『アズワン/AS ONE』(8月22日公開、静野孔文監督)で声優に初挑戦する。演じるのは、物語の鍵を握る研究者・ルロワ博士。壮大なSF世界の中で、丸山は“声”のみで複雑な人物像に命を吹き込んだ。アニメ愛に満ちた原体験から、今回の挑戦に込めた覚悟、そして作品への深い共感を語ってくれた。(取材・文=平辻哲也)

 丸山のアニメ愛は筋金入りだ。初めてハマったのは『キン肉マン』。物心つく前からセリフをすべて覚えていたという。少年時代は『ドラゴンボール』や『幽☆遊☆白書』に夢中になり、「『幽白』の飛影のキャラソンをカラオケで歌っていたくらい好きでした」と笑う。

 やがて思春期に入り、作品との向き合い方も変化した。「『エヴァンゲリオン』に衝撃を受けました。ガンダムが“戦争と人間の愚かさ”なら、エヴァは“自分の内面との対話”。同じSFでも、こんなにもアプローチが違うのかと」

 その後も『魔法少女まどか☆マギカ』で「ほむらの足の止め方のカット割りに泣いた」、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では「号泣した」と語るなど、アニメ作品が人生の節々で感情を揺さぶってきた。

「アニメって、実写では届かない感情の奥まで触れてくれる。表現の幅が本当に豊かなんですよね」

『アズワン/AS ONE』は、アーケードゲーム『星と翼のパラドクス』の映画化。「名探偵コナン」の劇場版シリーズを手がけてきた静野孔文が監督、「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズの貞本義行氏がキャラクターデザインを務めた。地球に住む高校生ヨウ(白岩瑠姫)と、宇宙に浮かぶ星・巡星(メグリボシ)でロボット整備士として働く少女ラコ(白石晴香)が、“精神的なリンク”を通じて心を通わせていく物語。 “星血”と呼ばれるエネルギー資源を巡って戦争が起きている星で、二人は再び巻き起こる対立に立ち向かうことになる。

 SF的な舞台でありながら、そこに描かれているのは“人間らしさ”だと丸山は言う。

「現実から離れているようで、実はすごく等身大の話なんですよね。夢に向かうこと、親との対立、誰にも言えない痛み。それが“星血の結晶”や“リアライド”といったSF設定を通じて描かれているのが面白い」

 丸山が演じたルロワ博士は、ラコの父であり、惑星の未来に関わるエネルギー研究の中心人物。表面上は冷静沈着な研究者だが、物語が進むにつれ、言動に揺らぎや裏の意図が見え隠れする。観客に「この人、味方なの? 敵なの?」と思わせる、極めて多層的な役柄だ。

「セリフは多くないけど、出てくるたびに意味がある。声だけで、その“意味深さ”や“多面性”を出すのは本当に難しかったです」と振り返る。「紛れもなくルロワなのに、どこか違和感を覚える。その微妙なニュアンスをどう表現するかが課題でした」

声優の奥深さを実感した【写真:くさかべまき】
声優の奥深さを実感した【写真:くさかべまき】

アニメファンとしての敬意と覚悟

 収録現場では、監督から「口角を少し上げて言ってみて」といった細やかな演出指示も受けた。「たったそれだけで、声の印象が変わる。トーンが少し明るくなるだけで、“裏”があるように聞こえたりするんです」と、声優という表現の奥深さを実感した。

「心してお受けしたい」とオファー時に語った丸山は、アニメファンとしての敬意と覚悟を胸に収録に臨んだ。「僕の世代では、声優って“裏方”という印象も強かった。でも今は、表現者としての存在感がすごい。その世界に飛び込むというのは、うれしさと同時に責任も感じました」

 また、『アズワン/AS ONE』のキャラクターデザインが、自身が敬愛する『エヴァ』の貞本氏であることも大きなモチベーションになった。「ミーハーと思われるかもしれませんけど、シンプルにうれしかったです」と素直な思いを明かす。

 収録を終えて、ようやく「楽しかった」と言えるようになったという。「やってる最中は“楽しむ”余裕なんてなかったです。自分の声がこの世界観にとってプラスになれるかどうか、ずっと考えていましたから」

 そして最後に、これからについてこう語る。

「やったことは戻らない。だから腹をくくって、この世界でもっといろんな表現をしていきたい。声だけでも、自分にしかできない届け方があると思うんです」

 音楽、舞台、バラエティ、そしてアニメ。ジャンルを越えて進化し続ける表現者・丸山隆平の“第一声”は、その重みにふさわしい作品と出会い、そして未来につながっていく。

□丸山隆平(まるやま・りゅうへい)1983年11月26日生まれ、京都府出身。2004年、シングル『浪花いろは節』でCDデビュー。歌手、ベーシスト、俳優として活躍。主な出演作は、『フリーター、家を買う。』(2010)、『ストロベリーナイト』(12)とその映画化(13)、『エイトレンジャー』シリーズ(12・14)、『泣くな、はらちゃん』(13)、『地獄先生ぬ~べ~』(14)、『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(14)、『誘拐法廷~セブンデイズ~』(18)、『よつば銀行 原島浩美がモノ申す!~この女に賭けろ~』(19)、『大江戸グレートジャーニー ~ザ・お伊勢参り~』(20)、『着飾る恋には理由があって』(21)、『金子差入店』(25)など。舞台では、ブロードウェイミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』(22)、『浪人街』(25)などに出演。

ヘアメイク:中嶋竜司(HAPP’S.)
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)

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