真夏のオールナイト万博、取り残された0歳児と母 海外パビリオンの“神対応”に「感謝しかない」
大阪メトロ中央線の電気系統トラブルにより、13日夜、大阪・関西万博の来場者が帰宅できなくなるアクシデントが起こった。多くの人が会場内で一夜を過ごし、中には赤ちゃんを連れた親子の姿もあった。残されたオムツはあと1枚――。絶体絶命の状況の中、差し伸べられたのは周囲からの温かいサポートの輪だった。

万博で不測の事態…オールナイトを過ごした母子
大阪メトロ中央線の電気系統トラブルにより、13日夜、大阪・関西万博の来場者が帰宅できなくなるアクシデントが起こった。多くの人が会場内で一夜を過ごし、中には赤ちゃんを連れた親子の姿もあった。残されたオムツはあと1枚――。絶体絶命の状況の中、差し伸べられたのは周囲からの温かいサポートの輪だった。
「オムツ残り一枚が心配すぎるけどとりあえずまさかの初万博で初野宿デビューしてしまったbabyちゃん 電車もタクシーもあかんねやったらどーしたらいいん」
3児の母・NOA(@noa_1989)さんが緊急事態をネット上に投稿したのは、時計の針が14日午前0時を回った時だった。
大屋根リングの近くで、ベビーカーの中では生後2か月の赤ちゃんがすやすやと眠っている。
その後も投稿は続いた。
「誰も怒ってへんし平和やけどオムツだけどないかしたい」
投稿を見た人からは、「誰かオムツ分けてほしい!!」「赤ちゃんお子さん連れ、ケアが必要な方はとにかくいち早く救済して欲しい」「なんとか涼しく無事に過ごせますように」「コスモスクエアまで行けたらタクシーもあるので頑張ってください」「東ゲートのクロネコヤマトの近くにベビーセンターあるんですが空いてないですか?」「夢洲駅構内にまだ入れないかも知れませんが、駅構内のトイレのそばに授乳室があり、自販機にオムツが販売されています」「大阪ヘルスケアの中に、アカカベというドラッグストア入ってます! 一部店舗が開いているという情報がありますが、そこは開いてないですかね?」など、親子を心配する声が続々と寄せられた。
赤ちゃんを連れての万博は、やむを得ない事情もあった。
万博には10歳の長男、8歳の長女も同行。さらに、「パパはオーストラリアにいて、来月、私たちも移住予定で移住前に仲良し家族と思い出作りに下の子小さいけど行っちゃおかーって感じで」と、特別な状況も後押した。もうすぐ日本を離れてしまう。NOAさんは、3家族子どもだけで9人という大人数で来場していた。
赤ちゃんには細心の注意を払っていた。
「12時から入れるチケットでしたが、子連れだったし、なんやかんや1時半とかの入場で下の子が小さいのでベビーカー優先で入れるところとEATALYでゆっくり遅めのランチをいただいたり(遅めに食べたので晩御飯なかったですが、みんななんとか我慢してくれました)、大好きなジャマイカとパパの国オーストラリアを見れたらあとは涼しいとこで適当にって感じでした」
暑さを考慮し、着替えもこまめに行った。無理なスケジュールを立てるのではなく、自分たちのペースでゆっくりとパビリオンを回り、雰囲気を楽しんでいた。
そして、帰り支度を始めた矢先、不測の事態に見舞われた。
電車はいつ運行再開するか分からない。子どもたちを不安がらせまいと心がけ、明るく振舞った。
「私が不安な顔したら子どもたちも不安になるので、テンション高めに『まだ帰らんと遊べるでー。みんなとまだ一緒にいれるでー!』て感じで伝えたら喜んでたのでもう楽しもうって感じでした」
一方で、気がかりは赤ちゃんのことだった。蒸し暑さの残る野外。ベビーカーがあるとはいえ、もちろん“泊まり”の用意はしていない。多めに持参していたオムツも底をつこうとしていた。
万博会場はまさしく陸の孤島になった。しかし、ここから次々と救いの手が差し伸べられる。

ドイツ館、アイルランド館の心温まる対応…「感謝しかない」
ドイツ館などのパビリオンがグミなどのお菓子を差し入れ。さらに、アイルランド館の館長に声をかけられ、館内で休むことができた。
「グミや飴を配ってる方がいて優しいなーて感動していたところ、子連ればかり声かけてくれてたのがアイルランドの館長スティーブです。クッションにぬいぐるみに飲み物にビールまで笑 本当に赤ちゃんから私たちまで快適に過ごさせてもらって感謝でしかないです。授乳もみんな寝てる別の部屋を使わせてもらったり、一睡もせずみんなのために動き続けてくれてました」
子連れの親同士も情報を交換し、助け合う空気が生まれた。
「アイルランド館にいた別の赤ちゃん連れの方とお話しさせてもろてたときに、『オムツどうしてますか?』と聞いたら『残り1枚!』と言ってたので『同じですー』と話してたら、その方が帰られる時に声かけてくれて」
オムツ提供の申し出だった。
申し訳なさから一度は断ると、「『もう1歳半だし今から帰るから大丈夫』と……ありがたすぎました」。
電車が止まってから再び動き出すまで約8時間。先が見えない中、深夜の万博会場で触れたのは国籍を越えた人々の温かさだった。
「オムツは正直とても不安でした。近くのセブンイレブンに電話したり警備員の方、万博のスタッフの方に聞いても本当になくて! うちは母乳なので大丈夫でしたが、ミルクの方はどうしてたんかなって」
まだ低月齢の赤ちゃんは、通常、大人のようにぐっすり眠ることがない。NOAさんは数時間置きに夜泣きをして他の人に迷惑をかけまいと、抱っこで過ごした。
「大変なところは確かに大変でしたが、普段の生活がどれだけありがたくて幸せなことかを子どもたちと一緒に話せたり、誰かに優しくしてもらえるんてほんまにありがたいよねって、子どもたちといい話ができたし、なにより万博の思い出が濃すぎて!笑」
こんな思いはもうしたくない。しかし、いい意味で忘れられない最高の万博になった。
一夜明け、赤ちゃんの体調を聞くと、「夜寝れなかったので、日中に寝てたりいつものネンネのタイミングはずれまくりですが、めちゃ元気です」とのこと。
NOAさんは「心配してくれた方々ありがとうございました!」とサポートに感謝した。
