モー娘。卒業から10年、こだわりすぎない鞘師里保、“自由に楽しむ”27歳の今「いろんな表現に挑戦したい」
歌手で俳優の鞘師里保が7月23日、新作EP『Too much!』をリリースした。2015年にモーニング娘。を卒業後、米国でのダンス留学や俳優活動も経験し、着実にステップアップ。卓越したダンスは武器で、6月には念願だったメジャーデビューを果たした。今年卒業から10年を迎え、表現者として新たな一歩を踏み出した27歳の今に迫った。

チャレンジの先に生まれる魔法を味わいながら完成させたNew EP『Too much!』
歌手で俳優の鞘師里保が7月23日、新作EP『Too much!』をリリースした。2015年にモーニング娘。を卒業後、米国でのダンス留学や俳優活動も経験し、着実にステップアップ。卓越したダンスは武器で、6月には念願だったメジャーデビューを果たした。今年卒業から10年を迎え、表現者として新たな一歩を踏み出した27歳の今に迫った。(取材・文=福嶋剛)
――最初にEP『Too much!』に収録されている楽曲についてお聞きします。先行シングルとなった1曲目の『Super Red』は、Number_iやBE:FIRSTの楽曲を手掛けるトラックメーカーのMONJOEさんによるプロデュース作品で今っぽさと鞘師さんのルーツでもある90年代から00年代のR&Bがクロスしたようなサウンドです。
「R&Bは、もともと母が好きな音楽で私がお腹の中にいる時から胎教で洋楽のR&Bとかを聴かされていました(笑)。心がつく前からブリトニー・スピアーズやビヨンセなどを聴いて育ったので、私にとっては、体に沁みついている音楽で、おっしゃる通りまさにルーツになります。今でも実家に帰ると母は大音量でR&Bを流しているので、もうちょっとボリュームを下げてって言います(笑)」
――3曲目『転生chu☆』はファンキーなディスコナンバーでこちらも実際にステージ上でのパフォーマンスを早く見たいと思いました。
「うれしいです。この曲は、一般的なAメロ、Bメロ、サビみたいな感じではなく、とてもユニークな構成で、作詞をしてくださったChocoholic(チョコホリック)さんの想像力豊かでユニークなワードチョイスがすごく面白くて。曲の間奏でダンスブレイクがあるのですが、レコーディング中に『何か言葉を入れてみよう』という話になり、『英語っぽい発音で“転生中”って言葉を入れてみたらどう?』というアイデアが浮かんできたんです。その場のノリで録音したら、すごく良い結果が生まれてスタジオのみんなのテンションがめちゃくちゃ上がりました。そういったみんなで作り上げる現場の空気感もやっていてすごく楽しかったです」
――今回はボーカルの感情表現もとても豊かでこれまでとは違う印象を受けました。特に4曲目の『ゆらり』のささやくようなミックスボイスは、今までにない一面を感じました。
「ありがとうございます。結構、今まではパワー系というか、声を張り上げて歌うことが多かったのですが、今回は6曲とも地声を使って今までとは違う歌い方に挑戦しました。『ゆらり』は、歌詞を書いていただいたシンガー・ソングライターの進藤雨日さんに、具体的な歌い方のアドバイスをしていただき、これまでにない歌唱法を身につけられたと思います。また(EP収録曲の)『27yo』は、最初にいただいた仮歌の声を聴きながら、私も同じような歌い方を真似てみようと思って挑戦したら、これも今までなかった新しい歌の表現が見つかったので、今回は、レコーディング中に新しい自分をどんどん発見できました」
――『27yo』は、作詞も担当されましたね。
「タイトルの『27yo』のyoは、“years old”の略で、前作でも一緒に歌詞を書かせていただいたyaccoさんとの共作になるのですが、yaccoさんから、今の27歳の私をつづった曲があってもいいのではないか? とアドバイスをいただいて作った曲になります」
――では、改めて27歳になった今の心境を聞かせてください。
「最近は、今まで大切だと思ってきたものを思い切って手放すようにしています。それをやっても自分は意外と変わらないということが分かったからなのですが、昔の私って結構、頑固でした。周りからは柔軟だと思われていたところもあるかもしれないけれど、私の中では『ここは絶対に譲れません』みたいなものが、たくさんあって守りに入り過ぎてしまい、つまらない結果になってしまったこともよくありました。だから、できるだけ新しいものや面白いものを探求し続けるのが、今の私にとっては良いことだなと思っています」
――New EP『Too much!』は、そんな新しいものへの探求心を形にした作品ともいえますね。
「そうですね。今はプロデューサーさんをはじめ、チームスタッフさんからの提案で面白そうだと感じたらどんどん飛び込んでみたいと思っていて。そのチャレンジの先に生まれる魔法みたいなのを味わいながら1つの作品が出来上がるのがすごく面白いんです。だから今は『鞘師里保とは?』とか『鞘師里保らしさ』みたいなものにこだわり過ぎず、私自身、自由に楽しんだ結果『今の私らしさ』が生まれたらそれが一番だと思っています」

私の中で音楽と芝居はつながっている
――話は変わりますが、鞘師さんは俳優としても活動されていますね。昨年11月には映画『十一人の賊軍』で主要キャストを演じましたが、音楽と芝居、この2つを表現する上で共通していることはありますか。
「お芝居は違う人の人生を表現するものだと捉えてはいますが、やはり自分の体で演じているので、どうしてもどこかに自分が投影されるところがあると思います。音楽は自分自身を表現するものですが、曲によってアプロ―チを変えたり、歌詞の主人公の気持ちになって歌ったりする時はお芝居に通じるものもあって、それぞれ別のようで、それほど遠くない距離でつながっていると感じています」
――お話を聞いていると今はとても充実した時間を過ごしている印象を感じました。
「そうですね。これまで自分の中では1つずつスキルを積み重ねながら前に進んできたという意識があって、そこはこれからも変わらないと思います。一方で新しい出会いを通して今まで出会ったことのない面白さや感動、発見をたくさんしたいと思っていて、大好きな音楽、ダンス、お芝居はもちろん、ほかにもチャンスをいただけたら、いろんな表現に挑戦してみたいです」
――出会いは大事ですね。
「間違いなくそうだと思います。世の中には、私の知らない世界を知っている尊敬できる人たちがたくさんいて、そんな方たちとの出会いを通して、昨日とは違う新しい自分に出会えたと思っています」
――最後に今後の目標を聞かせてください。
「具体的には音楽フェスにどんどん出て行きたいです。今度は、私のパフォーマンスを見たことのない方と出会いたいですし、鞘師里保を見ていただく機会をもっと増やしたいと思っています。やっぱり時間には限りがあるので、これからも1分1秒を無駄にしないで自分の可能性を広げながら、次の未来を作っていきたいと思います」
□鞘師里保(さやし・りほ)1998年5月28日、広島県東広島市出身。幼少期よりアクターズスクール広島にてダンスを始める。2011年に当時12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビュー。15年12月末に同グループを卒業し、その後ダンス留学のため渡米。20年に芸能活動を再開し、21年8月に自主レーベル「Savo-r(セイバー)」を設立、ソロアーティストとしての音楽活動を開始した。これまでに3枚のEPと1枚のALをリリース、全国ツアーを4度開催。ビルボード公演も3年連続で行っている。25年6月に『Super Red』(avex trax)でメジャーデビューした。俳優としても活動し、24年にはテレビ東京系1月期の『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々』で地上波連続ドラマ初主演を飾った。同年に『十一人の賊軍』で映画初出演を果たした。11月からはミュージカル「デスノート THE MUSICAL」への出演も決まっている。
