『北斗の拳』武論尊氏が開校した漫画塾、次世代への思い 青山剛昌、あだち充、庵野秀明…豪華すぎる講師陣
『北斗の拳』や『サンクチュアリ』など大ヒット漫画の原作者として知られる武論尊先生。1972年に初めて書いた漫画原作が「週刊少年ジャンプ」で読切化されるなど、超新星としてデビューした先生は、今年でキャリア53年を迎えた。そして、2018年からは地元である長野県佐久市で「武論尊100時間漫画塾」を開催するなど、後進育成にも力を入れている。同塾は今年で7期目。歴代の塾生の中には、見事プロデビューを果たした作家もいるそうだ。

「武論尊100時間漫画塾」を地元で開催
『北斗の拳』や『サンクチュアリ』など大ヒット漫画の原作者として知られる武論尊先生。1972年に初めて書いた漫画原作が「週刊少年ジャンプ」で読切化されるなど、超新星としてデビューした先生は、今年でキャリア53年を迎えた。そして、2018年からは地元である長野県佐久市で「武論尊100時間漫画塾」を開催するなど、後進育成にも力を入れている。同塾は今年で7期目。歴代の塾生の中には、見事プロデビューを果たした作家もいるそうだ。(取材・文=関口大起)
「武論尊100時間漫画塾」を開催するきっかけは、先生が70歳を迎えた時に地元で開催された同窓会。友人たちから「なんか田舎でやってくれよ」と持ちかけられた。
「まあ、酔っ払いの与太話だったんですけどね。『俺にできることなんて、漫画を教えることくらいだよ』なんて言ったら、トントン拍子で話が進んじゃって(笑)。すぐに市が協力してくれるってことになったから、それならやろうかと」
佐久市からすれば、日本を代表する漫画原作者からの願ってもない話だ。スムーズに話が進んだのもうなずける。
準備期間は実に1年。18年の第1期目には、30人ほどの塾生が集まった。なんと、そのうち複数人がプロデビューを果たすなど、大きな成果を出しているそうだ。しかも、ほぼ初心者や趣味で描いていただけの生徒が、塾での学びを通して羽ばたいていったという。
現在では、20人以上の卒業生がプロ漫画家として活躍中だ。塾生たちの活躍は佐久市のホームページ上にまとめられている。
超有名作家やクリエイター陣が登壇
「武論尊100時間漫画塾」は、例年30人前後の塾生を受け入れ、年に20回程度開催される。内容は、漫画論の講義と課題提出だ。
まず驚くべきは、その講師の豪華さだろう。武論尊先生を筆頭に、『名探偵コナン』の青山剛昌先生、『タッチ』のあだち充先生、『BLUE GIANT』の石塚真一先生……と例を挙げればキリがない。また作家陣だけではなく、各出版社から漫画編集者も参加する。
さらに、昨年の第6期には、アニメ・映画監督の庵野秀明氏も登場した。
「集英社、小学館、講談社……といろいろな出版社の編集者たちが協力してくれています。作家からしたら、“予選免除”って感じ。普通は、編集者に原稿を見てもらうってだけで大変なんだから」
40年以上にわたって漫画界を走ってきた武論尊先生。「武論尊100時間漫画塾」で教える立場にもなった今、新世代の漫画家たちをどのように見ているのだろうか。
「絵が圧倒的にうまくなってるね。画力があるのは前提で、そこからどう個性を出してデビューするかっていうのが今の課題だと思う」
そこで気になるのが、先生だったらどうするか、だ。
「何かのまねじゃなくて、自分にしか描けないものを書くんだよ。最初の読者になる編集者に、“こんなのはじめて”って思わせる。俺が『ドーベルマン刑事』を書いたときもそうだったはず。主人公が平気で人を殺していくから、そこにびっくりしてもらえたと思うんだ」
武論尊先生は、「君たちがまずやるのは編集者の目に留まることだよ」と繰り返し塾生に伝えているという。
数々の名作を生み出し、現在は後進育成にも力を入れている武論尊先生。「オレの墓標に名はいらぬ!!」はケンシロウの名ぜりふだが、先生の場合、刻むべきことが多すぎる。しかも、まだまだ増えていきそうだ。
