『鬼滅の刃』上映中にスマホの光→座席特定して通報、外国人の子どもが…「厳罰にして」盗撮に怒り殺到

映画館で『鬼滅の刃』の最新作を鑑賞している最中に、不審なスマホの光が見えた。法律で禁止されている映画の盗撮かもしれない――。スクリーンにスマホのカメラを向けている様子を見て確信に変わると、ここから勇気ある行動に出た。“盗撮犯”が座っている位置を特定し、迷いながらも上映中に席を立ってスタッフに通報したのだ。スマホで撮っていたのは、外国人の子どもで親子連れだったという。アニメ・コスプレ好きとして「権利元の不利益になる行為を許すわけにはいきません」。毅然(きぜん)とした態度を取った通報者に詳細を聞いた。

映画館での盗撮行為が社会問題になっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】
映画館での盗撮行為が社会問題になっている(写真はイメージ)【写真:写真AC】

ためらいながらも席を立ってスタッフに通報 「今回は写真のみなので、映画館への出入りを禁じる措置」

 映画館で『鬼滅の刃』の最新作を鑑賞している最中に、不審なスマホの光が見えた。法律で禁止されている映画の盗撮かもしれない――。スクリーンにスマホのカメラを向けている様子を見て確信に変わると、ここから勇気ある行動に出た。“盗撮犯”が座っている位置を特定し、迷いながらも上映中に席を立ってスタッフに通報したのだ。スマホで撮っていたのは、外国人の子どもで親子連れだったという。アニメ・コスプレ好きとして「権利元の不利益になる行為を許すわけにはいきません」。毅然(きぜん)とした態度を取った通報者に詳細を聞いた。

「上映中に盗撮犯がいて、だいぶ遠かったけど画面が明るくなった時に座席数えて特定して、途中で抜け出してスタッフさんに通報」

 Xで報告したのは、ためさん。アニメやコスプレが趣味で、コスプレイヤーを撮影したり、自分でアニメのイラストを描くことが好き。「アニメの聖地巡礼やライブイベントなども時折楽しんでいます」という愛好家だ。

 7月18日から公開になっている『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』。盗撮行為を目の当たりにしたのは、この大ヒット作品の上映中の出来事だ。

「自分は後ろから3番目とかなり後方でしたが、上映中に明らかに前の方でスマホの光が見えました。初めは携帯をいじっているのかと思いましたが、スマホがスクリーンを写しているのがぼんやりと見えました」

 盗撮を確信したが、撮影者がスマホをいつ出すかが気になって、映画に集中できない状態が続いた。「席を立ってスタッフに伝えようと思いましたが、真ん中の位置なので隣の方に迷惑ですし、躊躇(ちゅうちょ)しました」。かなり迷ったという。

 その後もスマホをスクリーンに向ける行為を複数回現認。照明が落ちた映画館の中で、必死に撮影者の座席位置を数え、把握に努めた。「犯人の席が通路に近かったことが幸いし、『通路から左に何番目、後ろに何番目の席』という確信が徐々に持てるようになってきました。その頃には決心がついていたので、隣の方には申し訳なかったのですが、席を立って外へ出て、座席表を確認した上でスタッフに盗撮をしている人がいると伝えました。席を間違ってしまったら元も子もないので、『○列○番付近だと思うが、確証はないので終了後に周りの人に聞けば、同じ人を指さすと思うので、それで確認してほしいです』と伝えました」。

 上映終了後は規制退場となり、特定した座席の女性がスタッフに連れて行かれる様子が見えた。「外に出ると、スタッフが女性2名と携帯の翻訳機で中国語で会話をしていました。1人は10代前後の子どもで、もう1人は40~50代の大人の女性でした。その場で『自分が通報した者です』と伝えました。言葉が分からないからと逃げられる可能性を考慮したため、『英語であれば通訳をやりますが、どうしますか?』と聞きましたが、スタッフの方は『翻訳機でコミュニケーションは取れているので大丈夫』とのことでした。そのスタッフの方は物腰穏やかな方で、自分に対しても、犯人に対しても落ち着いて対応していた印象です。ご協力ありがとうございました、と自分にお礼を言ってくださったことを記憶しています」。

 そして、「スタッフの方が犯人のスマホを持っており、自分が『撮ってましたか?』と質問すると、『撮ってますね』と画面を見せてくださいました。詳細は覚えていませんが、かなりの数がありました。それが動画だったか写真だったか分かりませんが、とにかくフォルダにたくさん入っていました。この辺は記憶が曖昧で確証はないのですが、動画の場合表示される再生ボタンがあったように思います。定かではありません」と話す。

 その後は支配人が応対。料金について返金の説明があり、「写真のみの場合は出禁になり、動画の場合は警察案件になることが多い」という趣旨の説明を受けたという。

 お礼を言って帰宅。「途中で返金のことで確認し忘れたことがあり、劇場に電話をしました。その際に『ついでなんですが、彼女たちはどうなりましたか?』と聞きました。『今回は写真のみなので、映画館への出入りを禁じる措置を取る』とのことでした。個人的には、動画を撮っていたと思ったので、動画ではなく写真のみなのかと確認しましたが、写真のみとのことでした。またその際に(撮影者側が)返金をすでにしたと言われ、かなり早い対応だったので少し驚きました。その日はそこで終わりました」と冷静に振り返る。

「これだけ注意喚起がなされているのですから、破った場合には正しい処分が必要」

『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』は記録的なヒットを続けている一方で、ネット上では盗撮映像が出回るなど、盗撮行為が問題化している。公式サイトは注意喚起を掲載。「劇場での映画の盗撮行為は『映画の盗撮の防止に関する法律』(映画盗撮防止法)により犯罪です。また、盗撮した映像をX(旧Twitter)やTikTok等のSNS、YouTubeやFacebook、動画配信サービスやサーバー等にアップロードすることも著作権侵害であり、犯罪です。映画盗撮防止法および著作権法に違反して著作権侵害が行われた場合には、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります」などと、日本語と外国語で警告。刑事告訴を含む厳正な対処に取り組む姿勢を示している。

 今回のためさんのX投稿は、9100件以上のリポストを集める反響を呼んでおり、「せっかく見たいと思って行った映画で、盗撮しているのは許せませんよね…」「やっぱ居るんですね。ルール守れない人たちのせいで、今後、スマホ持ち込み不可とかルールできたらしんどいですよね。。」「盗撮犯は二度とやらないように厳罰にしてもらいたいですね」「僕も31日に鬼滅観にいったら外人が携帯でパシャパシャしてるのを目の当たりにしました」など、盗撮行為に対する怒りと批判が殺到。

 また、「行動力かっこいいです 鬼滅の刃の映画を守ってくれたこと、日本の誇りです!」「徹底的にやって貰えてこのように共有してもらうことに価値はあると思います」「すごい、現代の鬼殺隊ですね」といった、踏み込んだ行動を称賛する声も寄せられている。

 気になったことを自分なりに確認したというためさんは後日談について教えてくれた。

「翌日に、写真なら出禁のみで動画なら警察という根拠が調べても著作権法のどこに書いているのか分からなかったため、再度劇場へ連絡しました。そこで昨日の対応のお礼と、今後の対応について少しお話ししました。話したのは支配人の方とは別の方でした。スタッフの方いわく、『全興連(全国興行生活衛生同業組合連合会)のポリシーとして、動画の場合は警察対応と決まっており、また今回初犯で中国人の親子だったということもあり、SNSへの掲載もないため今後の劇場への出入りを禁じる措置のみ』との説明を受けました。そこで中国人の親子であると分かりました。映画館は全興連に加盟しているので、それはもう仕方がないと思い、そこで電話は終わりました。また、今回の件をSNSに上げさせていただいたこともお伝えしました。

 その後全興連に連絡しましたが、つながりませんでした。今回の件で警察がどう動くかを確認したかったため、(所轄の)警察署に連絡しました。回答としては予想していた通り、著作権法は親告罪なので、権利元が訴えないと立件できず、また一度犯人を帰してしまっているので私人逮捕の要件は成立しないとのことでしたので、そこで電話を終えました」とのことだ。

 後を絶たない映画の盗撮。違法行為を撲滅するために、社会的な取り組みが求められている。

 ためさんは「思ったことは、やはり『権利元の不利益』になることは慎むべきだということとです。著作権法はかなり厳しく、厳密に言えばコスプレや同人誌、お店のパネルの撮影及び掲載、SNSでのアニメの画像使用など、ほとんどのアニメに関わる行為は違法となってしまいます。しかし、『当該付随著作物の種類、使い道、もしくはその複製や翻案、利用の態様が著作者の利益を害してはならない』ということを守った上で、著作物を楽しむのであればいいのではないかと、個人的には考えています。

 しかし、劇場でしか見られないものを盗撮して稼ごうとする行為は、違法か合法か以前に『権利元の不利益』になる行為です。そのような行為は慎むべきですし、これだけ注意喚起がなされているのですから、破った場合には正しい処分が必要だと考えています」と、自身の考えを語る。

 そのうえで、「また、今回の件でSNS上で中国人を非難するコメントが多数見受けられましたが、私個人としては親しい中国人の方もいますし、3回ほど中国に行ったことがあり、いい思い出も優しい方もたくさん知っているため、中国に悪いイメージはありません。中国のことは好きですが、権利元の不利益になる行為を許すわけではありませんので、今回動いた次第です。とにかく鬼滅の刃は(原作者の)吾峠呼世晴先生を始め、製作会社のufotableさんなどさまざまな関係者の方が作られた素晴らしい作品です。どうか多くの人に、盗撮動画ではなく劇場のスクリーンで、音響で、楽しんでいただけたらうれしいです」とメッセージを寄せた。

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