Uber配達員が“一番面倒くさい”と断言する定番メニュー「箱ぐちゃってなるぐらい平行にして」
食事や買い物に行きたいけど、この猛暑では外に出たくない。そんな時に大助かりなのが、宅配の利用だ。わざわざ着替えずとも、すしや唐揚げ……自宅玄関までなんでも届けてくれるのだからありがたい。一方、配達員側の視点に立つと、すべての注文が歓迎とは限らないという。現役ウーバーイーツ配達員が明かす“配達員泣かせ”の商品とは。

知られざる配達員の裏事情…涙ぐましい努力
食事や買い物に行きたいけど、この猛暑では外に出たくない。そんな時に大助かりなのが、宅配の利用だ。わざわざ着替えずとも、すしや唐揚げ……自宅玄関までなんでも届けてくれるのだからありがたい。一方、配達員側の視点に立つと、すべての注文が歓迎とは限らないという。現役ウーバーイーツ配達員が明かす“配達員泣かせ”の商品とは。
配達員は50代男性で、キャリア3年になる。この猛暑の中でも連日、125ccのバイクで配達を行っている。1日につき15~20軒ほど回り、「時給で換算したら1500円くらい」。本業は別にあるが、空いた日に生活費を補えるだけの金額を稼げるそうだ。
配達員はリクエストを受けると、店舗で商品を受け取り、専用の配達バッグに入れて、注文者まで届ける。
どんな注文が多いか聞くと、男性は「圧倒的にマクドナルド」と即答。「次にコンビニ、あとラーメン多いですよ」と続けた。マクドナルドはどんな時でも1日の仕事の半分以上を占めるといい、何度も店舗に取りに行くそうだ。
一方で、男性が警戒するのが、デリバリーしにくい商品だ。ネット上では、すしをデリバリーしたものの、開封時に中身がぐちゃぐちゃになっていたとの投稿が騒動になったこともあった。
「そういうの見てるから、ちゃんとやってる」
配達方法に細心の注意を払う男性が、特に注意するものとはいったい何なのか。
配達しにくそうなものとして真っ先に浮かぶのは、ケーキ類。少しの揺れで傾き、ケーキが崩れる可能性がある。道路の段差や自宅まで届ける際の階段など、任務完了までのハードルも高い印象がある。
しかし、男性はこれを否定。「ケーキは僕、ぎゅうぎゅうに詰めるんで。(配達バッグに)バスタオルが入ってるんですよ。ぎゅうぎゅうに詰めて、揺れないようにしてから行くんです」。バッグの中の隙間を埋めた状態で持ち運びが可能だとした。
では、ドリンクやラーメンなどの汁物はどうか。わずかでもこぼれたら、バッグの中も大惨事になってしまいそうだが……。
男性はこれについても「問題ないですね」ときっぱり。
「ドリンクは今はウーバー用に紙コップあるじゃないですか。その上に、サランラップ巻いてくれるんですよ。ほんで、パカってふた閉めて。ストローで刺すのも、ラップは突き抜けてるんで。やってくれないところもあるんですけど、でも、僕はバスタオルでぎゅうぎゅうにやるんで。だから、なんとかなるかなと。ラーメンは今すごいですよ。店で容器にラップを何重もかけて、逆さにしてもこぼれないくらいやってくれてる。ただ、家が分からなくて迷って冷めるっていうのが怖いですけどね」と話した。
そんな中、最も尻込みするのは、意外なモノだった。
「要はウーバーの気持ちを分かってない」
「一番面倒くさいのはピザ。ピザって箱が大きいじゃない。バッグに入らない。斜めにしないと。それは強引に、箱ぐちゃってなるぐらい平行にして、ゆっくり行ってる。結構、気を使うよ」
ただし、条件がつく。ここでいうピザとは、主に非チェーン店のものだ。
「なんかちょっとした、しゃれたピザ屋なんですよ。ピザーラとかピザハットとか、あのへんは分かってくれてて、ちっちゃいのに入れてくれるんですよ。今あるんですよ、そういうのが。運びやすいようになってるんですけど、イタリアンの店とかは、昔のでっかいやつなんすよ。僕はウーバーの配達バッグ、一番大きいの使ってるんですけど、それでも入らないので。要はウーバーの気持ちを分かってないなっていう。受けちゃったもんだから行って、受け取ったら、あちゃーと」
デリバリーの普及で、テイクアウトの容器も年々進化。「すしも昔、丸い容器あったじゃないですか。あんなのもう無理。今は四角ですから」。ところが、一部のピザ店は、ピザのテイクアウトに際し、昔ながらのスタイルを貫いているというわけだ。
「ほかにつまみとか、唐揚げとかあるじゃないですか。それはどうでもいいんですよ。メインの箱が入らない」
「もう本当、ぎゅーってやって」と箱がつぶれるかの勢いで押し込んでも、斜めになってしまうことがある。
配達中も気が抜けない。傾くたびに、ピザが寄ってしまう。そうなれば、クレームが来たり、SNSにさらされる可能性がある。
「あー斜めになってるなーって言いながら、20分ぐらい走るんですよ。運転中も、自分がちょっと傾いて直そうかなってやったり」
バイクのハンドルを握りながら箱の中のピザの角度を想像し、崩れないように体重移動を繰り返す。
「最後にちょっとだけ(箱を動かす)。どうなってるか、分かんないですよ。本当、中身が分からないんで」。目的地に到着後の“サジ加減”は、まさに職人芸だろう。「普通だと運びやすいって逆に思っちゃいますからね」。男性も実際に配達員を経験するまで、気づかなかった点だった。

猛暑の夏に避けたいデリバリー商品も…
また、敬遠したい商品は、季節によっても変わる。
この時期には、定番のアイスだ。保冷剤が入っているものの、夏の外気温は想像以上。「溶けちゃったらマズいので」と、到着時間を急ぐ必要があるという。
また、地味なところでは、水のペットボトルだ。
「それも2リットル10本とか。40本なんて依頼もあります」
40本はさずがに1人では運べず、複数の配達員が別々に同じ家に向かう。
「最初は家がこのマンションなのか分からないじゃないですか。でも、水を運んでる人を見ると、『あ、ここだ』と思います。だから、逆に分かりやすいんですよ。それは楽だなと思うんですけど、重いのが……」
男性は普通の人に比べれば力もあるほうだ。しかし、10本でも20リットルを届けなければならない。「(揺れなどで)バッグが壊れちゃうんすよ」。バッグは自腹で購入しており、駐車場から自宅まで距離がある場合は汗だくになると同時に、絶望的な気持ちになるという。
悩ましい裏事情。それでも、注文があって初めて仕事が成り立つのも事実だ。背に腹は代えられない。配達員たちの知られざる努力がデリバリー業界を支えている。
