鞘師里保、転機はモー娘。卒業後のNY留学 担当したAKB48の振り付けに「私の子どもみたいな愛しさを感じた」
歌手で俳優の鞘師里保が、7月23日にNEW EP『Too much!』をリリースした。絶対的エースとして活躍したモーニング娘。を2015年に卒業して10年。今年6月には念願のメジャーデビューを果たし、これまで磨き上げてきたダンスを軸にさらなる飛躍を目指す。鞘師に新作やダンスについて話を聞いた。

NEW EP『Too much!』で形にできた私の思い
歌手で俳優の鞘師里保が、7月23日にNEW EP『Too much!』をリリースした。絶対的エースとして活躍したモーニング娘。を2015年に卒業して10年。今年6月には念願のメジャーデビューを果たし、これまで磨き上げてきたダンスを軸にさらなる飛躍を目指す。鞘師に新作やダンスについて話を聞いた。(取材・文=福嶋剛)
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――6月に先行シングル『Super Red』(avex trax)でメジャーデビュー後、『Too much!』は初のEP(6曲入りミニアルバム)となります。アルバムタイトルに込めた思いを聞かせてください。
「Too muchって『過度な』とか『やりすぎ』みたいな適度な状態を超えた時に使う言葉で、それって私自身にぴったりな言葉だと思いました。集中し過ぎたり、だらけ過ぎたり、人のことを気にし過ぎたり――。ちょうど良いところ”で生きていくことができないタイプなんです。きっと私と同じように周りからToo muchだと思われることを気にして、生きづらさを感じながら無理している人たちはたくさんいるんだろうなと思いました。でも私は、Too muchは悪い言葉だけじゃないと思っていて、私と同じような思いを抱えている人たちに寄り添ったり、お守りになるような作品になって欲しいという願いを込めました」
――新作はこれまで以上にダンスを意識した作品という印象です。
「おっしゃる通り、今回、メジャーレーベルに移り新しいチーム編成になったことで『ダンスミュージックを、もっと極めたい』という私の思いをみんなで形にすることができました。チームスタッフのみなさんには、私がまだ気が付いていない一面を楽曲、ビジュアルなど全ての面から引き出していただきました。ミドルテンポの曲から聴いているだけでダンスを踊りたくなるようなアップテンポな曲までそれぞれビートの効いた6曲が完成。ビジュアル面でも、これまで多かった中間色系のカラーから、今回はビビットなカラーをイメージカラーにして今までとは雰囲気をガラッと変えました。まさに鞘師里保の『Too much!』な一面を表現できた作品になったかなと思っています」
――6歳の時にアクターズスクールでダンスのキャリアをスタートしてモーニング娘。で活躍し、その後も卒業後のソロ活動など、21年間、ダンスと向き合ってきた鞘師さんにとって大きなターニングポイントは、どこでしょう。
「やっぱり米ニューヨークでの体験ですね。卒業する前の年(2014年)にモーニング娘。でニューヨーク公演を行ったのが私にとって初めてのニューヨークでした。今まで画面越しでしか見ていなかった、街の活気やストリートでのダンスパフォーマンスなどを見て『こんな世界があるんだ』って感動して、それがきっかけで卒業後、語学とダンス目的で2年間留学しました」

AKB48の振付師を経験「最初は心配でした」
――本場のダンサーたちを見て圧倒されるところはありましたか。
「ありました。そもそも日本人と海外の人の体格が違うので、まねできる領域じゃないと感じました。『じゃあどうやったらこの人たちみたいに踊れるのかな』と、日本に帰ってからもいろんな試行錯誤を繰り返してやってきました。ただ、ニューヨークでは、テクニックだけじゃなくて『踊ることの楽しさ』みたいな文化としての一面を学べたことが一番大きかったと思います」
――例えばどんなことでしょう。
「いろんな国籍のいろんな人種の人たちが集まって同じ音楽を聴きながら、体を動かしてダンスを楽しむ――。そういう型にはまらない自由な空間に刺激をもらいました。今まで考え過ぎてしまうことも多かったのですが、ダンスをしている瞬間は何も考えずに、自分を解き放つことができたので、とてもいい経験でした。知らない街で暮らしていくことは、かなりのエネルギーが必要なんですけど、自分の生き方さえブレなければ、世界のどこでも生活できると思いました。それはきっとダンスも同じなんだろうなって。改めて『世界って広いんだな』と知ることができて良かったです」
――ダンスと言えば昨年12月にAKB48の劇場公演のアンコール曲『緞帳を上げてくれ!』で振り付けを担当しました。モーニング娘。を卒業して10年後に振付師としてAKB48と関わった感想を聞かせてください。
「今まで自分の曲以外で振り付けをやったことがなかったので、お話をいただいた時、最初は心配でした。ただ『誰かのために振り付けをして、それをやり遂げてみた自分はどんな気持ちになるんだろう』という興味があったのでやらせていただきました。実際に劇場でみなさんが踊っている姿を拝見して、その後SNSでも踊っていただいた動画を見ながら、振り付け自体に愛しさを感じました。私の子どもみたいで(笑)。よく作家さんが『自分の子どもみたい』とおっしゃいますが、その気持ちがよく分かりました」
――そして、新作を引っ提げ、現在はメジャーデビュー後、初となる全国ツアーを9都市で開催中です。
「ライブハウスツアーになるので声を出して騒ぎたいです。日頃のストレスを思い切り発散できるような非日常の空間にしたいと思っているのでぜひみなさん遊びにいらしてください」
□鞘師里保(さやし・りほ)1998年5月28日、広島県東広島市出身。幼少期よりアクターズスクール広島にてダンスを始める。2011年に当時12歳でモーニング娘。9期メンバーとしてデビュー。15年12月末に同グループを卒業し、その後ダンス留学のため渡米。20年に芸能活動を再開し、21年8月に自主レーベル「Savo-r(セイバー)」を設立、ソロアーティストとしての音楽活動を開始した。これまでに3枚のEPと1枚のALをリリース、全国ツアーを4度開催。ビルボード公演も3年連続で行っている。25年6月に『Super Red』(avex trax)でメジャーデビューした。俳優としても活動し、24年にはテレビ東京系1月期の『推しを召し上がれ~広報ガールのまろやかな日々』で地上波連続ドラマ初主演を飾った。同年に『十一人の賊軍』で映画初出演を果たした。11月からはミュージカル「デスノート THE MUSICAL」への出演も決まっている。
