モバイルバッテリーが突然発火、夏場に危険拡大…メーカーが教える“危ないバッテリー”の見分け方とは
夏場を迎え、モバイルバッテリーやハンディファンなど充電式の小型電化製品による火災が相次いでいる。今や生活に欠かすことのできないこれらの製品だが、万が一の事故を起こさないため、どんなことに気を付けて使用すればいいのか。モバイルバッテリー国内製造メーカー最大手のエレコムに話を聞いた。

JR新宿駅~新大久保駅間でモバイルバッテリーが発火し、約10万人に影響
夏場を迎え、モバイルバッテリーやハンディファンなど充電式の小型電化製品による火災が相次いでいる。今や生活に欠かすことのできないこれらの製品だが、万が一の事故を起こさないため、どんなことに気を付けて使用すればいいのか。モバイルバッテリー国内製造メーカー最大手のエレコムに話を聞いた。(取材・文=佐藤佑輔)
今月20日、JR新宿駅~新大久保駅間で乗客の30代女性のモバイルバッテリーが発火、女性は指に軽いやけどを負い、避難した男女4人が足をひねるなどの軽傷を負った。これにより山手線では最大2時間の遅れが生じ、約10万人に影響が出た。モバイルバッテリーは大阪市の会社がリコールしている「cheero Flat 10000mAh」という製品で、消費者庁の調べによると2019年~21年に3万9300台が販売され、21年度以降で計16件の火災が発生しているという。
23日には東京・品川区のマンションでポンプ車など50台が出動する火事があり、火元の部屋に住む30代の男性が重傷、他5人が軽傷を負った。警視庁などは火元の部屋にあったハンディファンが発火した可能性があるとして、出火原因を詳しく調べている。この他、東京都国立市の自動車販売店では3日夜、床面など約500平方メートルを焼く火災が発生。閉店後の店内では整備士らが着用する「ファン付き作業着」を充電しており、電池から発火した可能性も浮上している。
夏場に相次ぐ身近な電化製品の火災を防ぐにはどうすればいいのか。エレコムの製品開発担当者は「モバイルバッテリーでは薄い形状の『ポリマー型』、ハンディファンであれば持ち手の部分に入っている『円筒管型』など、いくつか種類はありますが、どれも内蔵されているリチウムイオン電池に原因があると思われます」と解説する。
「リチウムイオン電池は、内部にリチウムイオンと電解液、プラスとマイナスの電極を遮断するセパレーターが入っています。このセパレーターには網戸のような微細な穴が空いており、ここをイオンのみが行き来することで充電や放電ができる仕組みになっています。このセパレーターの設計不備や、その他何らかの原因で破れてしまうと、ショートが発生し、発熱や発火にいたる場合があります」
ショートが起こる原因はさまざまだが、代表的なものが高温など劣悪な環境下での使用・放置と、落下の衝撃などによる物理的損傷だ。
「夏場のような高温や0度を下回るような低温では、内部のイオンや電解液が不安定になり、デンドライトという金属に変質してセパレーターを突き破ったり、分解して可燃性のガスが発生したりします。落下による衝撃でも内部構造が崩れてショートが発生する可能性がある。リチウムイオン電池には保護回路が入っており、通常の使用では問題ありませんが、過充電や過放電もショートを起こす原因になります」
家電量販店やネット通販サイトなどでは、数多くのモバイルバッテリーが出回っており、価格もさまざまだ。エレコムの担当者は、安い製品が必ずしも危険ではないとしつつ、安全性の面からは信頼の置ける販売元の製品を推奨する。
「モバイルバッテリーの場合、価格差は性能よりも製造管理体制にあると思います。管理がずさんだったり、適切な検品作業を行っていなかったりというところが価格に反映されている。品質に問題ないものもある反面、粗悪品が混在している可能性もあります。ただ、デンドライトは経年で蓄積するため、どんなにいいバッテリーでも2~3年ないし500回程度の使用で劣化していく。定期的な買い替えをおすすめします」
30日には、ロシア・カムチャッカ半島沖で発生した地震により、国内の広い範囲で津波警報が発令された。防災意識が高まるなか、いざというときの備えとしてはやはり乾電池がおすすめだという。
「乾電池は非常に放電しづらく、10年以上保管できる製品もありますが、充電式のバッテリーはまったく使用していなくとも半年に1回は充電する必要がある。充電したまま保管しておいて、いざというときに使えないということもあり得るので、この機会に乾電池式のバッテリーを備えておくことをおすすめします」
普段使いでも、防災用品であっても、正しい知識で用途に合った適切な製品を選びたいところだ。
