清野菜名、“車イス一歩手前”の大ケガで学んだプロ意識 30歳で見せる新境地「もっとチャレンジしたい」
俳優の清野菜名が、8月1日公開のディズニー&ピクサー最新アニメーション映画『星つなぎのエリオ』で主人公・エリオの叔母、オルガ役の日本版声優を務めた。憧れだったディズニー&ピクサー作品の声優で、オーディションを経て掴んだ大役。“夢実現”の心境とともに、俳優人生の転機について語った。

ディズニー&ピクサー最新作『星つなぎのエリオ』で日本版声優に
俳優の清野菜名が、8月1日公開のディズニー&ピクサー最新アニメーション映画『星つなぎのエリオ』で主人公・エリオの叔母、オルガ役の日本版声優を務めた。憧れだったディズニー&ピクサー作品の声優で、オーディションを経て掴んだ大役。“夢実現”の心境とともに、俳優人生の転機について語った。(取材・文=猪俣創平)
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本作は、両親を失った独りぼっちの少年・エリオが、さまざまな星の代表が集う“コミュニバース”に招かれ、孤独なエイリアンの少年・グロードンと出会い冒険する中で、ありのままの自分を受け入れていく姿を描いたファンタジー・アドベンチャー。清野が演じるオルガは、宇宙飛行士を目指して軍の基地で衛星研究の仕事をしている女性で、ある日突然、甥・エリオの親代わりとしてエリオを育てることになるキャラクターだ。
「今回は初めての体験ばかりでした」と落ち着いた声で収録を振り返った清野。USオーディションを経て日本版声優の座を射止め、「芯の通った真っすぐな人柄がオルガのキャラクター像と合致する」と評価された。
清野自身、オルガとの共通点を感じていたようで、「エリオとの2人の生活が急に始まって、家庭と仕事との両立をしていく中でのオルガの悩みはすごく理解できました」と語り、「そのオルガの気持ちに寄り添いながら、オルガ自身もエリオと一緒にいることですごく心も変化していきます。その変化をすべて見逃さずキャッチできるよう繊細に捉えて、しっかり表現できるように挑みました」と演じる上での留意した点を明かした。
そして、劇中の印象的なセリフとして、オルガがエリオにかけた言葉「あなたがいない人生じゃ意味ないの」を挙げ、「エリオとの関係に悩んでいたオルガが、エリオを必要としているんだなと分かりました。オルガも一人じゃないと気付けたシーンでもあったので、オルガの成長が見えて、自分も涙ぐみながら収録していたのをすごく覚えています」と、一つの見どころシーンとアピールした。
劇中では、エリオの思いを理解しようとする一方で、生活の変化からオルガ自身のキャリアに悩み葛藤する様子が描かれる。演じた清野にも、これまでの俳優人生で葛藤があったのかを尋ねると、少し考えてからキャリアの“危機”を回想した。
「いろんなドラマや映画でアクションをやってきましたが、20代前半の頃に腰をけがしたんです。自分の中では、これからもっとアクションに力を入れたい時期だったんですね。でも、病院に行ったら『車椅子(生活)一歩手前だったよ』と言われました。そんな状態まで自分を追い込んでいたのかっていう思いと、『これからだったのにな……』というもどかしさを抱えた時期がありましたね」
清野といえば、確かな演技力に加え、映画『キングダム』シリーズなどで披露したキレのあるアクションを武器に着実にキャリアを積み上げてきた。だが、そのけがの経験は、役者としてのあり方を見直すきっかけにもなった。
「今まではがむしゃらに、とにかく全力投球で現場にいたんです。でも、やっぱり体のメンテナンスをしっかりしないといけないと再認識しました。現場に入ったら自分の代わりはいないので、そこはプロとして責任感を持ってやらないといけないと……そのけがでかなり勉強になりました。腰を守りつつ、ジムにも通って、けがをしないための体づくりと筋肉の使い方を学びました」

『今日から俺は!!』の反響に驚き「作品の力って大きい」
以後、ドラマや映画などで躍進する。そんな清野にとって、日本テレビ系連続ドラマ『今日から俺は!!』(2019年)への出演は転機になった。同作で清純派ヒロイン・赤坂理子を演じ、武道家の娘という“武道の達人”の設定で、華麗なアクションシーンは注目を集めた。
のちに映画化されるほどの話題作への出演で、「自分がアクションを得意としていることを、ファンの皆さんにも、視聴者の方々にも認知していただけることになりました。インスタグラムのフォロワーもすごい数になって、40万人、50万人とどんどん増えて、『作品の力って、大きいな』とものすごく感じました」と好反響に目を丸くした。
「それもあって、きっと映画『キングダム』にもつながったと思いますし、自分の中では大きな転機だったなと思います」としみじみ。5作目の公開が来年予定されている映画『キングダム』シリーズでは、暗殺一族の末裔(まつえい)で、主人公・信が率いる飛信隊副長・羌カイ(きょうかい)役を熱演。アクロバティックな殺陣で“アクション俳優”としての地位を確固たるものにした。
今年も快進撃が続く。1月期のフジテレビ系連続ドラマ『119エマージェンシーコール』で月9初主演を果たしたほか、今作で念願だったディズニー&ピクサー作品への声優初挑戦となった。
また一つ、新たな扉を開いた清野。今年31歳を迎えるが、「この年になっても、また新たな挑戦ができるってすごく貴重な経験だなと感じました。これを機に、もっともっといろんなことにチャレンジして、自分の憧れでもあった声優のお仕事もやっていけたらなって思います」と凛とした表情で前を向いた。
一言ひとこと丁寧に語る姿に人柄を感じさせる。スポーツ界、エンターテイメント界ともに粒ぞろいで黄金世代と言われる94年生まれ。偶然記者も同年生まれだが、幅広く活躍する清野の今後に、ますます目が離せない。
□清野菜名(せいの・なな)1994年10月14日、愛知県出身。2007年デビュー。14年公開の映画『TOKYO TRIBE』ではヒロインに抜てきされる。その後、映画、テレビドラマ、雑誌などで活躍。近年の主な出演作に、映画『キングダム 大将軍の帰還』(24年)、Prime Video『No Activity』シーズン2(24年)、フジテレビ系連続ドラマ『119エマージェンシーコール』(25年)など。
猪俣創平
