中村鷹之資、誕生日に中村勘九郎からサプライズ電話 共演OKに「今年一番うれしかった」
歌舞伎俳優の中村鷹之資が29日、東京・中央区の歌舞伎座で行われた「中村鷹之資勉強会『第十回 翔之會』」の取材会に出席した。『翔之會』は2013年から始まった鷹之資の勉強会で、今年で10回目。踊りの名手だった亡き父で人間国宝の五代目中村富十郎(屋号・天王寺屋)が得意とした舞踊の大曲を中心に、趣向を凝らした内容で開催している。

1日2公演で14回の着替え「よくよく考えるとずっと着替えている」
歌舞伎俳優の中村鷹之資が29日、東京・中央区の歌舞伎座で行われた「中村鷹之資勉強会『第十回 翔之會』」の取材会に出席した。『翔之會』は2013年から始まった鷹之資の勉強会で、今年で10回目。踊りの名手だった亡き父で人間国宝の五代目中村富十郎(屋号・天王寺屋)が得意とした舞踊の大曲を中心に、趣向を凝らした内容で開催している。
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『第十回 翔之會』は10月3日に浅草公会堂で開催され、天王寺屋ゆかりの演目である道成寺ものの『奴道成寺』と、特別出演する中村勘九郎との共演による浅草を舞台にした『弥生の花浅草祭』を上演する。
鷹之資は『奴道成寺』について、「道成寺物という演目は、初代富十郎が『京鹿子娘道成寺』を初演したということで、富十郎の家にはゆかりの演目です。『奴道成寺』はその中でもコミカルに狂言師として踊りを見せていくもの。10回目の記念の会ということで、うちにゆかりのものを選びました」と説明した。
『弥生の花浅草祭』は4役早替りによる場面の踊り分けがあり、『四段返し』と呼ばれる。鷹之資の父・五代目富十郎と、特別出演する勘九郎の父・十八代目中村勘三郎によって何度も上演されてきた、こちらもゆかりの演目だ。
鷹之資は、「『奴道成寺』も最初から最後まで4回着替えるんですね。『四段返し』も当然のことながら、3回着替えなきゃいけない。計7回着替えるんです。それを1日2公演なので、14回着替えなきゃいけない。よくよく考えるとずっと着替えている。これは大変」と明かし、「これはもう踊り込んでやらないとなかなか大変。しかもお相手は勘九郎のお兄さんなので、気合入れてやんなきゃいけない! 空いている時間はとにかく体を動かして踊って、体力もつけるようにしています」と意気込みを語った。
勘九郎への共演は鷹之資からオファーしたものの、当初は日程の都合で難しかったという。しかし「今も忘れないんですけど、僕の誕生日が4月11日で。その日にですね、お兄さんから突然電話がかかってきて。出たらいきなり、『出られることになったから! 出るよ! 出るから!』ってかけてきてくださって」と、誕生日にサプライズがあったという。「もう飛び上がるぐらいうれしかったですね。今年一番うれしかったです。決まった時は二つ返事でお兄さんがパッと電話かけてきてくださって、快く引き受けてくださった。もう本当に、飛び上がるぐらいうれしかったです」としみじみ語った。

「『翔之會』があったからこそ、今の自分がある」
長時間踊る『弥生の花浅草祭』は、父や十八代目勘三郎さんの映像を見て学んでいるという。「この『四段返し』というのは、本当にコロコロ(登場人物や音楽が)変わる作品で。普通に考えて、体力的にものすごくきつい作品です。でも父も勘三郎のおじさんも、とにかく踊り続ける2人で。もうあふれんばかりのエネルギーがある。映像で見ていても笑っちゃうぐらい、2人はなんかもう、元気がいいんです」と父たちの偉大さを実感。「全部、全力投球でやるんですよ。普通はペース配分を考えて、マラソンじゃないですがエネルギーを考えて踊り分けます。でも2人とも笑っちゃうぐらい踊りが好きで、『楽しんでいるな』というのが伝わってきます」と語った。
「勘三郎のおじさまと父の映像を見ながら、いざ『自分がやる』となると、打ちひしがれる部分はだいぶあります。なぜ(踊りの)この時点でまだこんなに元気なんだろう……とか。2人とも小柄なのに、それを感じさせないぐらいいっぱいに体を動かしている。舞台中にその活気やオーラがバーっとあふれていて、『この2人ってすごいな』と。技術的なことを超越した、さらに輝く何かがある。発光しているというか。そのエネルギーは映像で見ていてもすごいので、生はもっとすごかったんだと思います」と思いをはせた。
最近は歌舞伎「刀剣乱舞『東鑑雪魔縁』」の2役演じ分けや、狂言方和泉流能楽師の野村裕基との共演など精力的に活動中。「父が亡くなってからしばらく、なかなか本興行で役がつかない時期がありました。その中でも舞台に立つ機会をということで、この『翔之會』があったからこそ、今の自分があると思います」と振り返り、「本当にこの『翔之會』で学んだこと、経験したことが、中村鷹之助という役者の血肉になって、骨になっていると思います」としみじみ語った。
