小西桜子、初主演舞台は「ほぼ“自分”」 昨年フリーから大手芸能事務所入り「性に合っている」
俳優の小西桜子が、東京・浅草九劇で7月31日に開幕する『きみは一生だれかのバーター』(8月11日まで)で舞台初主演を務める。6年ぶりの舞台となり、芸能界をテーマにした本作で、小西は芸能人役に挑む。2017年に映画に主演し、俳優デビュー。着実にキャリアを積んだ小西が「集大成」と位置付ける本作への意気込みとともに、昨年、フリーから大手芸能事務所に所属した変化について語った。

7月31日開幕の『きみは一生だれかのバーター』で舞台初主演
俳優の小西桜子が、東京・浅草九劇で7月31日に開幕する『きみは一生だれかのバーター』(8月11日まで)で舞台初主演を務める。6年ぶりの舞台となり、芸能界をテーマにした本作で、小西は芸能人役に挑む。2017年に映画に主演し、俳優デビュー。着実にキャリアを積んだ小西が「集大成」と位置付ける本作への意気込みとともに、昨年、フリーから大手芸能事務所に所属した変化について語った。(取材・文=猪俣創平)
「1000人の中の1人に選ばれた」 成金イメージが先行する有名社長の“本当の顔”
本作は、第68回岸田國士戯曲賞にノミネートされ、劇団「コンプソンズ」の主宰を務める金子鈴幸が初めて劇団外で作・演出を務め、出演もする新作舞台。芸能界を題材にしたサスペンスコメディーで、小西は芸能人・真島香菜を演じる。
インタビューは稽古前のスタジオで敢行。本番が刻々と迫る中、「もう本当に共演する皆さんのお芝居がすてきで、すごく面白いです」と刺激を受けている日々を明かし、「稽古は金子さんをはじめ、みんなでアイデアを出し合って作っていくスタイルで毎日が新鮮ですし、今日もどうなるんだろうと楽しみです」と充実ぶりをうかがわせた。
台本についても「オファーをいただいた時は、まだ台本がない状態だったので想像できませんでした。でも、新しい台本をもらうたびに、毎回すごく面白いところで終わるので、これがどうタイトルの『きみは一生だれかのバーター』につながって回収されるんだろうと、連載漫画の続きが気になるような気分でした」と声を弾ませた。
今回は、2019年の『365日、36.5℃』でヒロインを演じて以来、6年ぶりの舞台出演となり、初の主演舞台に。「前回は映像のお芝居もほぼ未経験で、舞台は一回きりのごまかしが効かない世界だと痛感しました。その時は技術ではなく、ただただ心で向き合っていました」と振り返る。そして、「6年ほど経験を積んだので、前回とはまた全然違います。稽古をしていても演劇として面白いですし、見てくださる方と一体になって、楽しんで帰ってもらいたいと思える余裕もできました。あれから6年続けてきた集大成として、また新しい挑戦という気持ちで臨んでいます」と言葉に力を込めた。
本作で小西演じる香菜は同じ芸能人という役どころ。自身と深くリンクする感覚を味わっているといい、「自分とほとんど大差がないです。“ほぼ自分”みたいな感じです」と爽やかに笑った。
「金子さんも演じる私をイメージして香菜というキャラクターを作ってくださったと思うんです。私の人に知られていないような自分の過去とも重なります。今回は、香菜の長い時間軸のお話ではあるのですが、これまでの自分の10年ぐらいの歴史にも通ずるところが多くあって、すごく不思議なご縁を感じています」
役を通じ、自らの歩みをかみしめているようだ。小西が俳優を志したのは大学時代。所属する映画サークルの自主映画『一晩中』(2017年)に参加し主演したことがきっかけだった。「今回のこういう演劇も、みんなで一緒に作り上げていくのが自主映画に近い感覚ですし、原点に戻ったような気持ちです」と心境を明かした。
そして、友人のある一言が、俳優への道を決定づけた。
「その自主映画は映画館でも期間限定で上映されて、友達にも観てほしいと呼びかけたんですけど、あまり観に来てくれませんでした。その時、友達の一人から『これがあなたの今の実力だよ』と言われて、それがすごく悔しかったんです。だったら本気で女優をやろうと思いました。今思えば、それで心の導火線に火がついたので、友達には感謝ですね(笑)」
昨年9月から小栗旬が社長のトライストーン・エンタテイメントに所属
大学3年生の頃には、俳優への環境を整えようと決意する。だが、なかなか所属事務所が決まらず、フリーの俳優という異例の形でキャリアをスタートさせた。
「事務所に入ろうと思って10社ぐらいに履歴書を出して、面接も受けていたんです。でもどこにも決まらなくて……。その時、フリーで受けた作品のオーディションに通ったら、事務所に入る間もなく、どんどん仕事が決まっていったんです。それからマネジャーさんも見つかりました。たまたまご縁があったんだと思います」
2017年に映画『一晩中』に主演しデビューすると、20年には窪田正孝主演、三池崇史監督の映画『初恋』のヒロインに応募総数約3000人の中から抜てきされ、一躍注目を集めた。「おかしくなりそうなほど緊張していました」と当時の心境を明かし、「生きるか死ぬか、この作品で後悔を残したら役者をやめようと思うほど人生を懸けていました」と覚悟して臨み、それが好結果につながった。
その後、映画やドラマなどに出演しキャリアを積む中、転機が訪れる。昨年9月、俳優の小栗旬が社長を務め、綾野剛、坂口健太郎、若村麻由美、木村文乃らベテランの実力派から新人まで幅広く名を連ねる大手芸能事務所、トライストーン・エンタテイメントに所属した。
新たな環境は「自分の人生のステップが変わったと体感しています。事務所所属は私の性に合っている気がします。戦友のような方々と出会えたことは大きく、みなさんに誇れるような自分でいたいと思っています。先輩方もそうですし、若い人たちにどう影響を与えられるかを考えられるようになりました」と価値観が大きく変わった。
「役者のみなさんそれぞれが、ライバルというよりは、みんなで頑張っていこうって空気感がすごくあるんです。私もそういう気持ちに支えられて、一つ一つの仕事を頑張ろうと思います」
今年は1月期のTBS系連続ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』に続き、現在放送中の読売テレビ・日本テレビ系『恋愛禁止』(木曜午後11時59分)に出演し、伊原六花演じるヒロインの親友・麻土香役を好演している。「これから先も事務所にご恩を返していけたらと思っています」と誓った。
自らを「あまり緊張しない、一発の演技で出し切るタイプ」と表現し、勝負強さも感じさせる27歳。“バーター”とは縁のなかった元フリーの俳優が、初主演舞台でその実力を発揮させる。
□小西桜子(こにし・さくらこ)1998年3月29日、埼玉県出身。2017年に映画『一晩中』に主演しデビュー。20年、応募総数約3000人の中から映画『初恋』のヒロインに抜てきされ、注目を集める。主な出演作は映画『佐々木、イン、マイマイン』(20)、テレビ東京系連続ドラマ『猫』(20)、TBSドラマストリーム『スイートモラトリアム』(23)、Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』(23)、TBS系連続ドラマ『まどか26歳、研修医やってます!』(25)など。身長164センチ。
