【べらぼう】矢本悠馬、壊れていく佐野政言役に「難しくて全然楽しくなかった(笑)」
俳優・矢本悠馬が、佐野政言役で出演するNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)の取材会に出席し、演じる政言や第28回(27日放送)で描かれた政言と田沼意知(宮沢氷魚)の事件と2人の最期についての思いを語った。作品は18世紀半ばに江戸のメディア王として時代の寵児(ちょうじ)となった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)を軸に描く痛快エンターテインメント。第28回では城中で政言が意知を切って意知は志半ばで落命。政言が切腹する展開が描かれた。

第28回で田沼意知に斬りかかりその後、切腹
俳優・矢本悠馬が、佐野政言役で出演するNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)の取材会に出席し、演じる政言や第28回(27日放送)で描かれた政言と田沼意知(宮沢氷魚)の事件と2人の最期についての思いを語った。作品は18世紀半ばに江戸のメディア王として時代の寵児(ちょうじ)となった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)を軸に描く痛快エンターテインメント。第28回では城中で政言が意知を切って意知は志半ばで落命。政言が切腹する展開が描かれた。
「1000人の中の1人に選ばれた」 成金イメージが先行する有名社長の“本当の顔”
矢本が演じたのは死後、世直し大明神と呼ばれた佐野政言。第一印象から聞いた。
「衣装合わせの時にプロデューサーと監督から『不気味でヒール的になれば』と言われていました。意知を殺めることは知っていたので、どういう展開になるのかというワクワク感とメインキャストの1人を殺さないといけない重大な責務の緊張感がありました」
登場当初はおとなしい印象で、ヒール、不気味とは少し違った。
「家系図を田沼家に渡すところまでは監督から何かしでかしそうないやらしさを演出で出したいと言われていましたが、その後、父が認知症という背景、引っ込み思案で宴に入れないとか、そうしたディティールが急に出てきたので僕もひっくり返して演じ始めた感じです。嫉妬よりも自分の生活の厳しさと頑張ってもうまく表舞台に出られない性格のジレンマの割合を上げました。完全なるキャラ変をしてとても大変でした。ただの美談より悲しい背景があって殺すしかない状況に追い込まれていく方が、政言が嫌われるだけじゃなくて済むのかなとも思いました」
意知に切りかかるシーンを、矢本はどんな意識で演じたのだろうか。
「斬りかかる前は、これで自分の人生を終えられるというすがすがしい思いです。限界に近い精神状態で生きてきて終わった方が楽なんじゃないかと。死ぬなら最後に何か歴史的な大きなことをすれば、こんな人生だったけど最後にひと花みたいなすがすがしさ。その後の刀を振る時は、怒りの感情がわいていました。自分への怒り、やるせないというか。人を殺せるような人ではない感じで演じたので奮い立たせて鬼になっていった感覚。壊れちゃったに近い状態ですかね」
意知を殺めるシーンの動きには意外な舞台裏があった。
「体格差があるので僕から不意打ちをしたいと言いました。急に斬りかかった方が面白いかと。段取りになりたくない思いがあったんです。あの時代、侍が刀を抜くのは異常事態。斬る政言も斬られる意知も慣れていないというのを表現したかったし、きれいな殺陣にしたくなかったんです。練習も1、2回合わせ、あとは本番でと氷魚君に伝え、受け入れてくれました。生々しいものにしたいという2人の思いがありました」

宮沢氷魚とは撮影後に「やったーイエー」と喜び合い
政言が世直し大明神と言われることへの思いも聞いてみた。
「台本が完成していない最初の時点では、田沼家はそんなに嫌われているのか、という印象でしたが、出会った意知は好青年。どうやって殺すんだみたいな不安がありました。どう嫌いになっていけばと。この作品の政言だけを言うなら、あんなにつらい人生だったけど後世に名前が残るような人になれて報われたのかなと思います。最初は田沼家がむちゃくちゃだからヒールに見えるけど正義をもって斬るのかと思っていましたが、壊れてやってしまって結果がそうなるとは全く見えてなかったです」
壊れていく難役を演じた感想はどうだろうか。
「難しくて全然楽しくなかったです(笑)。撮影は10日足らずでしたが一日一日が濃くて精神的に追い込まれていました。脚本家・森下佳子さんも『政言がかわいそ過ぎます』と言っていたそうですが、これほどかわいそうな人を演じた経験がなかったので、とことんかわいそうに見えたらいいですね」
好印象の意知を殺めた後の視聴者の反応が心配ではないだろうか。
「(宮沢氷魚が)意知を素晴らしく演じてくれたおかげで、僕の回が盛り上がると思うと感謝です。反応が良くても悪くても僕の手柄じゃないですか(笑)。本気でぶつかっているので、意知と2人で作りあげたいい物になっていればと思います。『べらぼう』史上一番熱い回になってくれればという思いで演じてきたので、意知がいなくなる寂しさがあると思いますが、それにふさわしい最後の殺陣のシーンになっていると思います」
大河ドラマ出演は2017年『おんな城主 直虎』以来8年ぶり。矢本は前作との違いも口にした。
「当時は矢本悠馬を認知していない先輩も多かったと思います。8年たって渡辺謙さんに初めてお会いした時、『作品見ているよ』と、僕の他の作品のマネを撮影の合間にしてくださったり、『共演したかったよ』と言っていただけてうれしかったです。桐谷健太さんも初対面でしたが全くアウェーを感じませんでした。大切に政言を演じられたと思いますし、終えた時、珍しく達成感を感じました。最後、斬り終わった時、やったーみたいな感じがあり、政言のストレスが発散できたと思います」
撮影を終えた際、宮沢氷魚とはどんな話をしたのだろう。
「やったー、終わった、イエーみたいな感じでした。お互い血まみれの手で恋人つなぎして写真を撮りました。作品では犬猿の仲でしたが現場ではこんなにもラブラブです」
