宮沢氷魚、父役の渡辺謙と電話で台本を読み合わせも 「本当のお父さんのようだった」と感銘

俳優の宮沢氷魚が、このほど都内で行われたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)の取材会に出席した。老中・田沼意次(渡辺謙)の息子、意知役で出演し、共演者とのエピソードや大河初挑戦となった思いを口にした。作品は18世紀半ばに江戸のメディア王として時代の寵児(ちょうじ)となった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く。

渡部健と共演した宮沢氷魚(右)【写真:(C)NHK】
渡部健と共演した宮沢氷魚(右)【写真:(C)NHK】

悲劇のプリンス・意知役で出演

 俳優の宮沢氷魚が、このほど都内で行われたNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(日曜午後8時)の取材会に出席した。老中・田沼意次(渡辺謙)の息子、意知役で出演し、共演者とのエピソードや大河初挑戦となった思いを口にした。作品は18世紀半ばに江戸のメディア王として時代の寵児(ちょうじ)となった“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)の波乱万丈の生涯を描く。

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 宮沢は、渡辺演じる意次が奨励する“株仲間”(同業者組合)の対策など、父を支えながらも悲劇のプリンスとなる意知を演じた。渡辺とは電話で台本を読み合わせたこともあったという。

「『株仲間をなくす』ということを提案するシーンで(電話での読み合わせを)やらせていただきました。田沼家を左右する大事なシーンであり、意知の成長や覚悟を見せるシーンということもあって、求められるものも大きかったです。また、謙さんとご一緒するシーンが少ない中でも大事なシーンだったので『ガチっと決めて、快く終わろう』という気概で、やらせていただきました」

 そんな渡辺から、学んだことも多かった。

「優しい方なので、教えてくださるんです。『もうちょっと強調して言った方がいい』『ここはこれでいいよ』など見て思ったことを、シーンをよりよくするために言ってくださいました。謙さんは惜しみなく演技のノウハウを共有してくださいますし、立ち居振る舞いを見ているだけでも勉強になりました。僕が悩んでいるシーンについても、謙さんは言わずとも分かってくれていて『あそこでしょ』と言ってくださって、本当のお父さんのような感じでした」

 そう明かすと笑顔を見せた。さらに、“蔦重”役で主演する横浜の印象も語った。

「今回初めて共演したのですが、本当にすばらしい方だなと。コミカルなシーンも重たいシーンもあって、横浜さんに求められることがすごく多くて、大変だと思います。でも、一緒にいてすごくリラックスできる方だと思いました」

“心地よい距離感”は役の表現にも磨きがかかったようだ。その意知は、矢本悠馬演じる“世直し大明神”と称される旗本・佐野政言に襲われ、最期に「やりとうございました。私とて。己の手で」という言葉を残す。

「最初は誰袖(=福原遥)の心配をしているんだと思います。最後まで自分よりも他の誰か、町で暮らしている民を優先する人物だったという印象です。やり遂げたかったことがたくさんあって、その悔いが残っているのかなと。意知の短い人生を見事に描いているなと思いました。佐野のことを責めないのも印象に残っています。本当なら『くそ、そんなはずじゃ』と思ってもいいのに、佐野の気持ちを分かろうとする思いが見えました。思っていたよりも穏やかに最期を迎えたと思いました」

 意次が「家臣は大事にしろ、人間扱いしろ」と言っていた一方で、なぜ意知は刺されてしまったのか。

「台本を読んでいて、佐野の気持ちに同情できる部分もありました。佐野も、家のことを大切に思う人物で、父上に対する思いや『自分が佐野家を』と意知と同じことを考えているんです。意次は周りにいる人を大事にする人ではあるのですが、タイミングとやるべきことが多くて佐野に目を向けることが遅れてしまったのかなって。そう考えると、すごく悔やまれます。田沼家にとっても佐野家にとっても最悪な結果になってしまいました」

 では、襲撃されるシーンについて、矢本と話し合ったことはあったのか。

「矢本さんとは座って話し合うというより、セットの中でお互いの温度感を探り合いながらやっていました。斬られるシーンでは、お芝居に加えてアクションを間違えないように意識していました。きれいな殺陣ではなくて突然襲われるシーンなので、練習もやりすぎなくて良かったです。『何が起きているのか』を理解しようとする瞬間もおさめられたと思いますし、2人だけで作ったものではありませんが、同じ温度感でできたという印象はあります」

大河ドラマは初出演となる【写真:(C)NHK】
大河ドラマは初出演となる【写真:(C)NHK】

今年5月下旬に撮了

 最後の場面も見どころはたっぷりありそうだ。さて、宮沢にとって今回が大河ドラマ初出演となった。昨年から収録に入り、今年5月下旬ごろに撮了を迎えた。念願の大河への出演は自身を成長させ、大役への挑戦は自信にもつながった。

「これまで何度か出演させていただいた朝ドラ(連続テレビ小説)のスタジオの隣が大河ドラマの現場でした。空気感が全然違い少し異次元な印象を持っていましたが、『あの世界に入ってみたい』という憧れがあったので、出演できてうれしかったです。ただ、自分に求められたキャラクターはすごく重要で、意知を中心に物語が進む回もあって、毎日不安でした。『もっと頑張らないと』『今の自分じゃ足りない』と思うこともありましたが、高いハードルを一つ一つ乗り越えるということが1年間続いたという印象です。

 自分でも成長した実感がありますし、人・俳優としてだけでなく意知の成長も表現できたという達成感があります。この先もこの経験があるから『これなら越えられる』と自信を与えてくれた作品です」

 森下佳子氏の脚本についてはどんな印象だったのだろうか。

「毎回新しい台本が来ると早く読みたくて仕方ないくらい面白い展開を書いてくださっていました。読者としてもおもしろかったですし、演じていて森下さんの思いが鮮明に見えてくるようでした。最後のシーンもしっかり最期を描いてもらえてうれしかったです。多くは語らない意知の人生を詰め込んでくれていました」

 最後に、収録期間の約1年を通じて演じた意知への思いを語った。

「意知が自発的に何かをするようになってから、彼の成長を感じていました。最初は今までにない緊張もあって僕自身、呼吸が浅かったですし声のキーが高くなっていたのですが、現場に慣れてきたら、呼吸ができてきて、声のトーンを下げることも意識しました。役柄にマッチして、徐々にいいバランスになったのかなって。やっている時は『まだ先は長い』と思うこともありましたが、振り返るとあっという間でした」

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