明日海りお、宝塚時代に考えていた「退団したら、もう余生」「需要があるか分からない」…6年で迎えた新境地

俳優・明日海りおが、8月に東京、大阪で上演されるミュージカル『コレット』に主演する。フランスで高名な女性作家の一人・シドニー=ガブリエル・コレットを演じる。同作は、20世紀初頭のパリを舞台に自らの道を切り開いたコレットの姿を描いたオリジナル・ミュージカル。明日海に自由奔放な女性の生きざまをどのように演じるのか、その意気込みやプライベートの過ごし方などを聞いた。

主演ミュージカル『コレット』への意気込みやプライベートを語った明日海りお【写真:舛元清香】
主演ミュージカル『コレット』への意気込みやプライベートを語った明日海りお【写真:舛元清香】

8月、ミュージカル『コレット』に主演

 俳優・明日海りおが、8月に東京、大阪で上演されるミュージカル『コレット』に主演する。フランスで高名な女性作家の一人・シドニー=ガブリエル・コレットを演じる。同作は、20世紀初頭のパリを舞台に自らの道を切り開いたコレットの姿を描いたオリジナル・ミュージカル。明日海に自由奔放な女性の生きざまをどのように演じるのか、その意気込みやプライベートの過ごし方などを聞いた。(取材・文=Miki D’Angelo Yamashita)

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 明日海は同作で豪華キャストと共演する。コレットの夫ウィリーに今井朋彦ほか、元宝塚歌劇団星組の男役スターである七海ひろき(ミッシー)、元花組トップ娘役の花乃まりあ(メグ・ヴィラール)。脚本・作詞・演出は、『エリザベス・アーデンvs.ヘレナ・ルビンスタイン -WAR PAINT-』で明日海とタッグを組んだG2氏が手がける。

「G2さんから『前から温めている明日海さんにぴったりの作品がある』とオファーをいただきました。前回ご一緒した時、演者に寄り添って繊細なお芝居をつけてくださる稽古場が心地よく、『ぜひ、出演させていただきたい』と二つ返事でお受けしました」

 出演が決まると、キーラ・ナイトレイが演じた映画『コレット』を見たという。描かれたコレットの第一印象は、波瀾万丈な人生を送ったスキャンダラスな女性。日本のミュージカルではなかなかないテーマで「必ずや面白い作品になるだろう」と確信した。

「女性が思うように生きられない。それも作家として表現することなどありえない時代に、新しい世界に踏み出すことに前向きで、臆せず前へと自分の思う道を進んでいく勇気がある女性です。それを『ぜひ、みりおちゃん(明日海の愛称)に演じてもらいたい』とあてがきで台本を細かく書いてくださったんです。私としては、コレットと私のどこに共通点を見出してくださったのか不思議なところもあるのですが(笑)、私の舞台を見て細かく感想を伝えてくださっていたので、『私の芝居を信頼して任せていただけたのかな』と感謝の気持ちでいっぱいです」

 田舎で育ち、結婚して幸せな家庭を築く未来を描いていた本好きなコレット。ところが、現実は傲慢で女たらしの夫との関係は破綻寸前だった。そこでうちひしがれず、自分の価値がどこにあるのかを示そうともがき、小説を書くことに希望を見いだす。

「コレットが書くことに出会って、『心が震える』というか、景色がば~っと広がって。『これが書くということなんだ』と実感して虜になる瞬間があるのですが、それは私が初めて舞台に立った時の感覚に似ている。その瞬間のきらめきに一番共感できました」

 コレットは、パリのミュージックホールでパントマイムや踊り子として活躍するなど、作家以外にもさまざまなことに興味を持ち挑戦していく。夫とは離婚、同性も含めた奔放な恋愛遍歴を送る。

「今回、舞台上でお届けするのは、ほぼ実話なのですが、コレットは書くことを求めているのか、誰かの愛を求めているのか、どこかに落ち着くことを求めているのか、いろいろな方向性があって混乱しないだろうか、と当初は不安もありました。でも、今演じていると『それこそがコレットを表現する手段なのだろう』と捉えることができます。コレットの人生が盛りだくさんすぎて、展開がスピーディーです。一生懸命ついていかなければならないのですが、頭を切り替えながら演じていくと、『いい意味でコレットのアグレッシブさが出るのではないか』と試行錯誤しています」

 前回の出演作品、落語界の愛と業を描くミュージカル『昭和元禄落語心中』もオリジナル作品。ゼロから作り上げなければならなかった。今回も新しく取り組む課題がたくさんあり、プレッシャーも大きい。

「オリジナル作品は、自由に作ることができるメリットもあります。前回は、共演の山崎育三郎さん、古川雄大さんがご一緒だったこともあり、安心感の中、のびのびとさまざまなことに挑戦ができました。でも、今回はせりふも歌も量が多く、『表現することに早く慣れていかなければ』と気合いが入っているところです」

時間の使い方は「甘め」な時もある明日海りお【写真:舛元清香】
時間の使い方は「甘め」な時もある明日海りお【写真:舛元清香】

宝塚の同期と過ごすと元気になれる「大切な時間」

 現在は、舞台、映像などさまざまな分野で第一線にいる明日海だが、在団中は「退団したら、もう余生」と考えていたという。

「『退団後は何をしたらいいのか』という明確なビジョンがありませんでした。お芝居は大好きだけど、需要があるのか分からなかった。幸運なことに、コロナ禍前に今の事務所に所属が決まり、舞台や新たに映像の仕事に挑戦することができました。大切な作品に出演することができてやりがいも感じる日々を送っていますが、本当の勝負はこれからではないかなと思っています」

 スケジュールに追われていた宝塚時代と違い、退団してからは、少し隙間時間を作るようにしている。

「時間がありすぎると逆にテンションダウンするので、体を鍛えたりボイストレーニングのレッスンに行ったり、体のメンテナンスに時間を使っています。『詰め込みすぎ』と思う時は『あと30分寝よう』とか、『今日は無理しないで明日の朝やろう』とか、甘めなところも残しつつ、スケジュールを決めるようにしています」

 忙しい合間をぬって集まるのは宝塚の同期。素の自分に戻り、楽に接することができる仲間と過ごす。「それがプライベートでは唯一無二の大切な時間だ」と言って笑う。

「奇跡的にタイミングが合えば、積極的に同期の仲間たちに会っています。そういう時は多少寝るのが遅くなったとしても、夜中までおいしいものを食べながらおしゃべりをすると元気になれるんです」

 明日海の退団から約1年半後に退団した同期の元雪組トップ・望海風斗とは、特に縁がある。次の出演作『エリザベート』でも、ダブル主演が決まっている。

「宝塚の音楽学校に入った時には寮で同室でしたし、クラス替えがあるのに2年間ずっと一緒でした。何かと共通点の多い2人です。望海さんは、とても実力があり、卒業してからも多くの大作に出演されていますから、『エリザベート』をどうのように作り上げていくのか、近くで見させていただくのがとても楽しみです」

 そして、『コレット』では荻野清子氏が美しい音楽でドラマティックに描き、ベル・エポックのパリを舞台におしゃれな世界観がつづられている。

「スピーディーで予想外な展開。休憩するところのないコレットの人生を駆け抜けたいです」

 今まで演じたことのない女性像に挑戦。明日海の新境地が注目される。

□明日海りお(あすみ・りお) 1985年6月26日、静岡県生まれ。2003年、宝塚歌劇団入団。14年、花組トップスター就任。19年に退団した後は、ミュージカル『王様と私』『昭和元禄落語心中』、NHK連続テレビ小説『おちょやん』、テレビ朝日系『グレイトギフト』など多数出演。10月からはミュージカル『エリザベート』が控える。20年、第41回『松尾芸能賞』優秀賞、今年5月、第50回『菊田一夫演劇賞』を受賞。169センチ。

ピンクドレス(MSGM/アオイ)
パンプス(セルジオロッシ/セルジオ ロッシ ジャパン カスタマーサービス)
イヤカフ、リング(1DKジュエリーワークス/ドレスアンレーヴ)

ヘアメイク 山下景子
スタイリスト 大沼こずえ(eleven.)

<ミュージカル『コレット』公演日程>

8.6~17 東京・日本青年館ホール
8.21~24 大阪・梅田芸術劇場メインホール

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