中村勘九郎、“父譲りのダメ出し”を野田秀樹に明かされ赤面「やらないつもりでいたんですけどね…」
歌舞伎俳優の松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、劇作家で演出家の野田秀樹氏、幸四郎の息子の市川染五郎、勘九郎の息子の中村勘太郎、中村長三郎が17日、都内で行われた歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』の第三部『野田版 研辰(とぎたつ)の討たれ』の稽古前に囲み取材に応じた。

松本幸四郎は長男の生まれ年を忘れタジタジ「生まれてた?」
歌舞伎俳優の松本幸四郎、中村勘九郎、中村七之助、劇作家で演出家の野田秀樹氏、幸四郎の息子の市川染五郎、勘九郎の息子の中村勘太郎、中村長三郎が17日、都内で行われた歌舞伎座『八月納涼歌舞伎』の第三部『野田版 研辰(とぎたつ)の討たれ』の稽古前に囲み取材に応じた。
『野田版 研辰の討たれ』は、2001年に野田氏と故・十八世中村勘三郎(当時:五代目勘九郎)とのタッグにより誕生した『野田版歌舞伎』の第1弾。江戸の町を舞台に、元研ぎ屋の侍・守山辰次が家老の平井市郎右衛門を殺害したと誤解され、仇討ちに追われる物語。もともと古典歌舞伎として存在した『研辰の討たれ』に新たな息吹を吹き込んだ“野田版”は、革新的な作品として初演時から大きな話題を呼び、05年には十八世勘三郎襲名披露狂言として再演された。
今回は20年の時を超え、勘九郎が主人公でお調子者の刀研ぎ師・辰次を務める。かつて幸四郎(当時・七代目市川染五郎)が演じた平井九市郎役を息子の染五郎が演じ、かつて勘九郎(当時・二代目中村勘太郎)自身が演じた平井才次郎役を、長男の勘太郎がそれぞれ受け継ぐ。
野田氏は20年ぶりの上演に「当時は十八代目勘三郎さんとやっていたので、今回の稽古でも彼のおもかげを追ってしまいます。でも進んでいくうちに、新しいものになっている気がしていて、新鮮な舞台になっていると思います」と語った。
今回は、当時勘三郎さんが演じた役を勘九郎が、勘九郎が演じた役を勘太郎、そして幸四郎が演じた役を染五郎が受け継ぐ。野田氏は「やっぱり遺伝子があるから。(勘九郎の)声だけ聞いていると、勘三郎じゃないかと思うぐらいの時もあります。ここ(幸四郎と染五郎)もそうなんですけどね。(勘九郎が)勘太郎時代のものを今の勘太郎がやって、(幸四郎が)染五郎時代のものを今の染五郎がやっているので、世代交代しているのに自分だけ生き残っちゃって……。『歌舞伎は(役者が)代わりながら作品が残っていくもの』というのを、20数年もかけて見ることができました。歴史的なものを見ることができて得した気分です」としみじみ振り返った。
幸四郎が「染五郎は再演の時すら生まれてないんで……」と語ると、すかさず染五郎が「2005年生まれなので生まれていた」と訂正。幸四郎が「生まれてたの?」ととぼけて報道陣を笑わせると、「まだ染五郎が生まれて何か月という感じだったので、再演がそんなに昔のことか……と衝撃的で。当時は稽古に勘三郎の兄さんや野田さんがいて、舞台や芝居をどうするか話していた。稽古場も活気があって、すべてにキラキラしていて、『見たことのないものを俺たちが生むんだ』というパワーがありました」と懐かしんだ。
勘九郎は、父親が演じた辰次役を自分が演じることはないと思っていたという。「再演の父の勘三郎襲名の時に、もう辰次というキャラクターが辰次なのか勘三郎なのか……。辰次がすべてしゃべっているようで憑依していたというか、体に全部が入っていた。『これはすげえな……、これは、手はつけられないな』と思っていたんです」と父の役作りの威力を明かした。「でも今回やれるっていうことは、うれしいことです。革命的な舞台だったので、その辰次ができるのはうれしいですね」と意気込んだ。
七之助は01年の初演を振り返り、「初演時の稽古場はすごくて、今でも鮮明に覚えております。父に死ぬほど怒られて、野田さんが『僕が演出家だから』って父にダメ出していました(笑)」と明かした。野田氏は、勘九郎の長男・勘太郎の演技の成長ぶりに「役者が化けるというか、パッと変わったので、たぶん(勘九郎が)家で相当(怒っているのでは……?)」と父親譲りの“厳しい指導”を心配すると、勘九郎は慌てて「やってないです! やってない、やってない! (自分が父から怒られて)いやだったから」と否定。しかし野田氏は「時々、稽古の舞台上で自分の役を忘れて(息子に)ダメ出しをしている(笑)」と明かした。
野田氏は勘九郎の稽古時の様子に、「その姿を見て、24年前の初演の初日の稽古を思い出しました。いきなり勘三郎が七之助君にダメ出しして、しかも怒ったんですよね。もうびっくりして、稽古を止めて、『ちょっと申し訳ないけど、演出家は俺だから』って言って、そこから(初演が)始まったのを思い出しました」と懐かしんだ。勘九郎は「(ダメ出しは)やらないつもりでいたんですけどね……なんかちょっと、出ちゃったみたいですね」と照れ笑いした。
