【スターダム】「プロレスが茶番だといわれる」…なつぽい痛烈、大ブレイク中の上谷沙弥に対して抱く“違和感”

5.31大田区総合体育館で開催された、なつぽいと安納サオリの10周年記念興行は大成功に終わった。二人はカード編成も含めプロデュースも担当、大仕事をやってのけた。インタビュー後編では「でもまだまだやることはありますから」と語るなつぽいに、4月に経験した大きな“違和感”と、今現在抱えている大きな“違和感”について聴いた。

上谷沙弥に対して厳しい言葉を口にしたなつぽい【写真:橋場了吾】
上谷沙弥に対して厳しい言葉を口にしたなつぽい【写真:橋場了吾】

上谷の“実はいい人アピール”が私には寒く思える

 5.31大田区総合体育館で開催された、なつぽいと安納サオリの10周年記念興行は大成功に終わった。二人はカード編成も含めプロデュースも担当、大仕事をやってのけた。インタビュー後編では「でもまだまだやることはありますから」と語るなつぽいに、4月に経験した大きな“違和感”と、今現在抱えている大きな“違和感”について聴いた。(取材・文=橋場了吾)

 5.31の10周年記念大会が終わるまでは……なつぽいはあえてスターダム本体の戦いからは、一歩身を引いていたという。

「(本体で)気になることがありすぎたんですよ、自分の中でもやもやすることも多かったですし。でも10周年記念興行に集中しないといけなかったので、ちょっと抑えていたところがあったんですよ。だから終わった瞬間には、こっち(本体)に行こうと自分の中で目的があったので休んでいる暇がなかったですね」

 その目的というのは、ワールド・オブ・スターダム王者・上谷沙弥への挑戦だった。しかしその前に聞いておきたいことがあった。4.27横浜アリーナで上谷に敗れ引退した中野たむのことだ。なつぽいはたむとmeltear(メルティア)というタッグを組んでいた。

「(少し考えて)ずっと違和感でした。『何をやっているんだろう』って。お客さんの立場でも気持ちがついていかない流れだったと思いますし、なんでそこまで、というちゃんと理解できない違和感がずっとありました。でも私は、たむちゃんの決めたことですし、たむちゃんと上谷にしかわからない関係性もありますから、変に口を挟むことはしないように見守ろうと思っていたんです。それであの4.27まで行っちゃっていなくなっちゃったから……お客さんと私の気持ちは今近いんじゃないかなと思います。たむちゃんの覚悟を感じていたから、あのストーリーには私が入り込んだらいけないと思う気持ちもあって。やっぱりたむちゃんの隣にずっといたので、たむちゃんが本当に突拍子もないことを言い出すことは知っています。でも、それが中野たむなんですよ。実は(たむと)シングルの話はあったんですけど、私は未来に最高峰のベルトを賭けて戦うのがmeltearのシングルマッチの意味だと思ったので、あえて断ったんです」

 7.21札幌大会で、なつぽいは上谷の持つ赤いベルトに挑戦する。昨年の札幌では、なつぽいが安納を破りワンダー・オブ・スターダム王座を戴冠、上谷が舞華を裏切り大江戸隊がH.A.T.E.に生まれ変わるという事件が起きた。

「私たちCOSMIC ANGELSの大切なリーダーである中野たむが引退させられた……それさえも(上谷に)都合よく使われているような気がして。私も裏切った経験はありますけど、裏切るときには何か覚悟を決めて自分の生きる道っていうものを進むものだと思うんですよ。上谷もH.A.T.E.に入ったときは覚悟があると思ってずっと見てきたんですけど、『千鳥の鬼レンチャン』で大ブレイクしたじゃないですか。

 あの番組で、H.A.T.E.として活動している中で、素の上谷が瞬間的にポロッと出ちゃったところがブレイクしたきっかけだと思うんですが、それを『おいしい』と思って自らH.A.T.E.にいながら『実はいい人なんです』アピールをしているところが、私的にはすごく寒いなと思っちゃって。ポロッとでちゃうならまだいいんですけどね。自ら言っちゃっているので。その上、プロレスのことを考えられてない行動が多いのも気になっていて……。

 こんなに痛い思いをして、こんなに命がけで戦っているので、ああいう中途半端なものを見せられちゃうと、それこそプロレスが茶番だって言われるわけじゃないですか。だからそのプロ意識というのが私には見えなくて、ただ見た目だけ悪くしてヒールごっこしていますよ、でも本当は乙女で可愛いでしょ、だと上谷の好感度は上がってもプロレスのためになっているのかって。『私が中野たむを終わらせた』っていえばヒールらしく見えるのかもしれないけど、正直それは中野たむの覚悟があってのことだったと私は思いますし、その相手に上谷を選んだことの意味を本当にちゃんと分かっているのかな。

 たむちゃんは上谷に『闇に染まるな』って言っていましたけど、私は違って『染まるなら染まれよ』と。中途半端なことをするな、というのが私のずっと言いたかったことで、だからこその挑戦表明なんです。そんな人が赤いベルト(ワールド王座)というスターダムの最高峰のベルトを持っていることが私は許せないし、都合よく使われているなと思うんですよね。私がそのベルトを取らないと、たむちゃんも報われないと思うので、絶対に獲りたいと思います」

安納サオリとの絆もなつぽいのモチベーションになっている【写真:(C)スターダム】
安納サオリとの絆もなつぽいのモチベーションになっている【写真:(C)スターダム】

上谷は何のためにリングで戦っているのかわからないが、私はわくわくさせ続けたい

 7.6後楽園では12人タッグマッチながら上谷から直接3カウントを奪った。そのなつぽいは、上谷に対して違和感を抱いている。

「本当は何がしたいんでしょうね……。人生迷うときも見失うときもありますけど、今くらいで(上谷は)天狗になっちゃダメですよね!(笑) 天狗になるほどは、何もしてないと思う(笑)。私も最近は地上波にもたくさん出させていただいていますけど、みんなでスターダムを盛り上げているのに……。それ以前に、『私はお客さんを入れたい』の一点張りで、上谷自身がリングで何のために戦ってるのかがわからない。悪いことをしたいけど嫌われたくはなくて、可愛いって思われたくて注目も集めたいけど、有名人になりたいわけじゃない……そんな中途半端なんだったら、レギュラー番組も私にくれ!って話ですよ(笑)。

 私は曲がったことや中途半端なことが嫌いで、表現者としてこの10年ずっと、誰かを笑顔にしたいって気持ちでやってきました。出会ってくれた人の人生に少しでも寄り添える存在になりたいですし、わくわくさせ続けたい……それが私の夢なんです。芸能とプロレスが二足の草鞋だって言われたときも、やめずに貫き通してきて、5.31ではそれを一つの形にしましたし、自分たちの作りたい世界を証明できたと思っています。でも、まだまだやりたいことはあるので、これからもわくわくさせ続けたいですけどね」

 最後に6.21代々木大会で朱里からIWGP女子王座を奪ったSareeeについて。なつぽいとSareeeは親友同士であることを公言しているだけあって、どのように感じているのか聴いてみた。

「複雑ですよね。親友としての気持ちと、スターダムを背負う気持ちと。2つの気持ちがありますけど『面白いな』と思います。親友としてはさすがだなと思いますよ。去年は1年大活躍して女子プロレス大賞を獲っていますし。Sareeeと出会って10年、本当にぶれない子で。私はエンタテインメントの世界が好きなので、舞台や歌といった世界に行ったこともありますけど、Sareeeはいろいろ誘惑がある中でぶれずに居続けられることが本当にすごいと思いますし、その成果が今出てきて世の中にもわかってきてもらえて、かっこいいなと思いますよ。IWGPですか? 今の気持ちは完全に赤いベルトですけど、Sareeeが巻いているIWGPは視野には入っていますよ」

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